コラム・池谷のぶえ めずらしく体調のいい日に vol.42

舞台をはじめTVドラマ等でも活躍中の女優・池谷のぶえさんのコラム。本誌と併せてお楽しみください!

vol.42

8月中旬に、EPOCH MAN「我ら宇宙の塵」という舞台が幕を閉じてから、次の舞台までの一ヶ月半、久しぶりに「体調不良になったら公演が止まってしまう!」という恐怖に囚われることなく、人とごはんを食べたり、旅行に行ったりできる期間がやってまいりました。早速、知人がWSをやるというので、その発表会を見る口実で石川県能登半島まで。車に乗っけてもらい半島の先っちょまでドライブ。珠洲岬からの眺めは本当に最高で、写真を何枚も撮りましたが、なんで写真って本物の景色の半分も素晴らしさが伝わらないのだろう…と思ってしまいます。

まあ、そりゃ、プロのカメラマンじゃないからなわけですが、この先の人生で、能登半島の先っちょに行けることなんてほぼほぼないでしょうし、素晴らしい光景はできるだけ現実に近い形で残したいですよね。以前、上高地に行った際、満天の星空がそれはそれは素晴らしくて、やはり何度もシャッターを切りましたが、現実の景色とは程遠く。帰りの高速バスの窓についた雨の水滴を写真に撮ったら、それが一番満天の星空に近かった…というよくわからないゴールもありました。だとすると、いつか別の写真を撮った時に、「これはあの時の珠洲岬からの風景だわ!」と出会える時が来るのかもしれませんが、それこそそんなのこの先の人生でいったいいつになんのよ…と思いながら、海岸から見た星空や、金沢の景色や、美味しい食べ物や…結局写真はバンバン撮るわけです。

お仕事ではありますが、初めましての上諏訪の花火大会や、久しぶりに北九州にも行くことができました。西武園遊園地、群馬県高崎市、青梅にも。プライベートでは、人生初の野球観戦を神宮球場で。そしてこれまた人生初のふもとっぱらキャンプ場。富士山の麓にあり、目の前の景色は富士山のみという、富士山とマンツーマン感覚を味わえるキャンプ場です。宿泊施設は予約したものの、キャンプ場という名称に引っ張られてBBQをやる流れになったのですが、なかなかの強風で紙皿や材料が飛ばされないように調理するのに耐えきれず、早々に宿に退散。宿のキッチンでぐったりしながら「誰がBBQやろうって言い出した?」という裁判が始まりましたが、特に誰がということなく、キャンプ場というイメージだけでBBQに向かっていってしまった人間の深層心理こえぇぇ!という結果になりました。みなさんも気を付けて下さい、イメージと深層心理。人間をギスギスヘトヘトにさせやがります。

 

いけたにのぶえ/1971年生まれ、茨城県出身。俳優。幻の劇団「猫ニャー」出身。舞台のみならず映像作品へも活躍の場を広げている。

◎シアタービューフクオカvol.103掲載(2023.10月発行)

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