コラム・池谷のぶえ めずらしく体調のいい日に vol.37
舞台をはじめTVドラマ等でも活躍中の女優・池谷のぶえさんのコラム。本誌と併せてお楽しみください!
vol.37
フェスティバル・ドートンヌ・ア・パリ 正式プログラム「À LA MARGE(外の道)」(作・演出:前川知大)の公演で、10日間ほどパリに行っておりました。2020年コロナにより公演中止になってしまったイキウメ「外の道」ですが、その後ワーク・イン・プログレスを経て、2021年には無事上演、そして2022年にはパリ公演…こんな流れを誰が想像できたでしょうか。まずは、2020年に開催できなかった公演を誰一人欠けることなく2021年に丸々移行できた奇跡。そして、その公演を観に来てくださった方が、パリで公演をしませんか?と持ち掛けて下さり、まさかまさか…と言っていたことが、本当に叶った奇跡。いろんな奇跡が続いたため、お稽古の時も本当にパリでやるのかなぁ…と実感がわかず、いざパリに行っても本当にここで公演するのかなぁ…と実感がわかず、ゲネプロになってから急に緊張しだすという、よくわからない気持ちの抑揚がありました。公演は無事全公演完走し、みんな元気に日本に帰ってくることができました。これもまた奇跡です。
そして、フランスの何がすごいって、ほぼほぼ以前の生活に戻っていることです。町ではほとんどマスクをしている人を見かけません。もちろん私たちも郷に従いノーマスク。買い物も、地下鉄も、観光も、食事も、ノーマスク。初日打ち上げもできます。面会もできます。終演後に飲みに行くことだってできます。千穐楽の打ち上げもできます。まるで、数年前にタイムスリップしたかのような生活なのです。なんだかとても身体がよろこんでいる気がしました。毎日ノーマスクでガンガン街を歩き、お芝居をして、一杯飲んで、ぐっすり寝て、美味しいものを食べて、ガンガン歩き…そんな生活を10日間して帰ってくると、パンパンパンポテトフライバターバターポテトフライチーズバターパンチーズバターバターポテトフライみたいな生活だったのに、体重は出国前よりむしろ少し減っていて、お肌の調子もすこぶる良い。完全にノーマスクのおかげなんじゃないかと思います。
日本ではいつマスクが外せるようになるのでしょう…このままの息苦しい生活では、違う病気になってしまいそうな気さえします。最近の日本の景気の悪さから、値段は同じですが内容量がだんだん少なくなっている商品などもたくさんあります。この流れに乗って、マスクもだんだん小さくなっていって、気づけばゴムだけになっている…という方法でノーマスクに近づけられないものでしょうか。いやそんな、企業さんたちばかりが苦しむべきじゃありませんね。国よ、そろそろなんとか国民に未来を見せてくれないものでしょうか。今回の渡航にあたり、お役所仕事の効率の悪さにも辟易としましたが、国そのものが重い病気にかかっているのでしょうね。私たち細胞がせめて元気でいなければなりません。
●いけたにのぶえ/1971年生まれ、茨城県出身。俳優。幻の劇団「猫ニャー」出身。舞台のみならず映像作品へも活躍の場を広げている。
◎シアタービューフクオカvol.98掲載(2023.12月発行)