コラム・池谷のぶえ めずらしく体調のいい日に vol.31

舞台をはじめTVドラマ等でも活躍中の女優・池谷のぶえさんのコラム。本誌と併せてお楽しみください!

vol.31

2022年、あけましておめでとうございます。おめでとうございますとは言ったものの、相変わらずのびのびと年末年始を楽しむこともできず、悶々とする年明けですね。年明けですねとは言ったものの、このコラムを書いているのはまだ12月のはじめ。クリスマスがどうなっているのかも、年末がどうなっているのかも、年始がどうなっているのかも、神のみぞ知る状態です。

とはいえ、ナイロン100℃「イモンドの勝負」は、無事に幕を開けることができ、順調に東京公演を進んでおります。ナイロン100℃は、私にとっては初めて自分の劇団以外に出演させていただいた場所で、あの時頑張った自分を超えて頑張れる瞬間など、この先訪れるのだろうか…と思うほど、魂を込めて参加した記憶があります。私はよく、過去の自分を尊敬してしまうのですが、みなさんはどうなのでしょうか。過去の自分を尊敬するということは、この先の未来の自分も、ずっと過去の自分を尊敬しているということで、結果、いくら歳をとり続けていっても、いまこの瞬間の自分を尊敬できる時なんて一生こないわけですよね… 。え、じゃあ、いまから未来の自分を尊敬しておけばいいということでしょうか? いや、いまの自分を尊敬できれば、ずっと尊敬していけるということですか? やだ…怖い…尊敬に四方を固められて身動きがとれません。もはや、そんな尊敬という概念は尊敬できません。

なかなか哲学的なコラムを書くことに成功中の年末ですが、年内に睡眠導入剤から卒業できたらな…と思っていた目標は、どうやら達成できそうにありません。少しずつ飲む量を少なくはしていっているものの、ちょっと調子がいいから多めに減らしてみると、とたんにまた調子が悪くなり、一日一歩、三日で三歩、三歩進んで二歩下がる…人生はワンツーパンチな日々です。さらに、重い掛け布団に押さえつけられるように寝たい派としては、引っ越しの際に重い綿の和布団を新調したわけですが、ベッドに和布団という組み合わせは、その重さで和布団がずるずるとベッドから落ちていく…という、水と油のような関係性なのだ…ということが、ベッド生活一年生としては衝撃でした。ベッドに柵をつけようにも、収納付きの畳ベッドという特殊な形のため、特注柵はべらぼうに高いのです。仕方なく、どうにかはまりそうな柵をひとつだけつけ、そこに紐で布団を括り付けるという、パッと見には暴れる人間を取り押さえる装置のようです。もし寝ている間に強盗が押し入ってきたとしても、「動くな!」と言おうとしても、既に拘束されているような形態で寝ているわけですから、躊躇させてしまうでしょう。なんなら、強盗が第一声で何と言うのか知りたいです。寝ている時にぜひ、お待ちしております。

 

いけたにのぶえ/1971年生まれ、茨城県出身。俳優。幻の劇団「猫ニャー」出身。舞台のみならず映像作品へも活躍の場を広げている。

◎シアタービューフクオカvol.92掲載(2022.2月発行)

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