コラム・池谷のぶえ めずらしく体調のいい日に vol.2

野間口徹さんからバトンを受け取り、シアタービューフクオカ本誌で絶賛連載中!舞台をはじめTVドラマ等でも活躍中の女優・池谷のぶえさんのコラム。本誌と併せてお楽しみください!

vol.2

ようやくすっかり秋ですね。大嫌いな夏がようやく過ぎ去り涼しくなったので、コラムのタイトル通り、めずらしく体調のいい日が多いです。

しかし、そんな大嫌いな夏真っ盛りな時期ではありましたが、1年ぶりに福岡県に行くことができました。人生2度目の、北九州芸術劇場での公演です。葛河思潮社「浮標(ぶい)」という公演で伺ったのですが、ちょうど同じ劇場、同じ日に、超ナンセンス作品であるcube presents「ヒトラー、最後の20000年~ほとんど、何もない〜」が上演されていました。

私のことなど、「ああ…あの、めったに体調のよくない中年女性でしょ?」と思っているであろう読者のみなさまにご説明すると、私の出身は濃厚なナンセンス・コメディ劇団で、なんなら「ほとんど、何もない」グループなわけです。なのに、どうした流れか正反対な作風のお芝居に出ている不思議…人生なんてね、あれこれ先を考えるだけ無駄だったりもしますよね。だってどうせ、自分の予測した通りなんかにならないんですもん。

ほら、小さい頃の将来の夢で「お嫁さん」とか書く女子いたじゃないですか。そして、そんなのわざわざ書かなくたって皆なれるじゃん…と思ってたじゃないですか。なれねーもんな、そう簡単に!

ちなみに、私の幼稚園の卒業アルバムの将来の夢欄には、「やおやさん」と書かれてありました。お嫁さんにも、やおやさんにもなれないまま、更年期にだけは着々となってゆきます。

もうこうなったら、すぐに叶う夢だけ見ていきましょう。北九州ですぐ叶う夢といえば、平塚明太子(中辛)!
昨年出会ってからというもの夢中です。男っぽい明太子とでもいいましょうか…抱かれたい明太子とでもいいましょうか。
でも明太子も、あの一粒一粒が本来なら一匹一匹の命なわけじゃないですか。ふと、そう思い始めると、一粒も粗末にしてはならないという使命感にかられて、緊張してしまうのです。

先日、差し入れでいただいたとっても美味しい粒マスタードも、美味しさに興奮していた時期を過ぎて冷静になると、その一粒に緊張。さきほど、筋子をほぐしたのですが、もはやほぐしている時点で緊張。

ちょっと待って…粒が…段々大きくなってきてない?いやだ…次は何?大豆?黒豆?栗?何?おせちなの?もう正月か…
おっそろしいほど一年が早いですね。

来年も、平塚明太子に抱いてもらえるよう、いろんなお芝居をしていかねばですね。

 

いけたにのぶえ/1971年生まれ、茨城県出身。俳優。幻の劇団「猫ニャー」出身。舞台を中心に活動中。舞台「遠野物語・奇ッ怪 其ノ参」(脚本・演出:前川知大)10/31(月)〜11/20(日)世田谷パブリックシアターほか。NODA・MAP「足跡姫~時代錯誤冬幽霊~」(作・演出:野田秀樹)2017年1/18(水)〜3/12(日)東京芸術劇場プレイハウス出演。

◎シアタービューフクオカvol.63掲載(2016.11発行)

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