ヨーロッパ企画 永野宗典「隔月刊 永野宗典」vol.3
シアタービューフクオカのコラムで誌上最長連載を誇るヨーロッパ企画・永野宗典氏によるイラストコラム!
前号から今号までの2ヶ月のタームで永野宗典の身になにが起こったのか。イラストと共にお送りいたします。
「あんなに優しかったゴーレム」という作品でツアーをしている。
とある野球選手を追うスポーツドキュメンタリーの撮影クルーが、その選手の故郷の空き地を訪れると、ゴーレムと呼ばれる土の像があり、なんとそのゴーレムと一緒にキャッチボールをしていたという。さらにゴーレムに育てられた少女も現れ、そこから撮影クルーたちはゴーレムの存在にひっぱられていくサイコファンタジーコメディ。コメディなので、僕らの芝居がうまくいっていない時は、シビアに笑いが起きない。
なので、毎ステージ緊張感があり、客席の雰囲気を察しながら、日々のステージの反省を踏まえ、今日のコンディションを確認し合い、あれこれ作戦を立てながら挑んでいる。「お互い目を見よう」「足を止めずにやろう」「テンポとスピードでお客さんをぐいぐい巻き込んで行こう」「動物としてやろう」などなど。すごい部活っぽい。「動物としてやろう」はかなり特殊だが…(笑)。しかし、試行錯誤の末、行き着いたプランだ。こんなことを大学の頃出会った仲間とずっとやっている。相変わらずピュアネスを抱えた自分たちが、もう、可愛く思えてきて泣けてくる。尊いとすら思えてくる。
で、来年劇団も結成25周年だ。いつまでも部活動ができるように、健康でいたいものだ。もう健康ばかり意識している。そして平和であってほしいと願っている。心は演劇青年でありながら、肉体はリアルに老境に差し掛かっている。
●永野宗典(ながの むねのり)/’78年生まれ、宮崎県出身。’98年、上田誠らと共にヨーロッパ企画の旗揚げに参加。以降、全作品に出演。
ヨーロッパ企画ホームページ http://www.europe-kikaku.com/
◎シアタービューフクオカ vol.97掲載(2022.11発行)