ヨーロッパ企画 永野宗典の対談野郎 vol.50 ゲスト:永野英子

シアタービューフクオカのコラムで誌上最長連載を誇るヨーロッパ企画・永野宗典氏。
ゲストを迎えての対談形式コラム!


限られた字数制限の中、所狭しとお送りするショートショート対談。今回のお相手は、我が母、永野英子と!


今回のゲスト: 永野英子(ながの ひでこ)
1946年宮崎県出身。永野家6人兄妹の末娘として生まれる。好きな映画は「禁じられた遊び」。

永野(以下 ) 僕が演劇をやりたいって言い出した時、どう思った?
母 よっぽど好きなんだなあって思って。選んだ道だから諦めずに、食らいついて頑張ってもらいたいって思ったよ。
 でもさ、反対する親もいるでしょ。食べていけるか?とか心配になったりするやろ?
母 好きなことをして生きていくってことはみんなが難しいって思うことやけど、あんたが考えてやりたいって宣言した訳やし、苦しい目に遭っても乗り越えてくれるかなあ〜って思っちょったかな。心配なこと、不安なことはどんな仕事でもあるやろ? 親から見たら、どんな仕事をやってても心配は変わらんがね。
永 なんで僕がこういう役者の世界に興味持ったんやろう?って不思議に思わんかった?
母 お母さんも映画とかが好きやろ? そういうところが似たっちゃろうかねえ、って思ってた。
 お母さんもほんとは女優がやりたかったとよね?
母 そうそう、東京に行ったわね。でも私の母親が亡くなって、その足で宮崎に帰って、家の手伝いをせんといかんくなったからね。
 僕はその魂を受け継いだんやろうかね。初めて僕の芝居を見た時のこと覚えちょる? その時のお母さんの感想を覚えてて、「あんた目がキツいがね」って言われて。
母 ははは(笑)。意気込み過ぎて目が目立っちょったちゃろうかねえ。「大きな声出しよるけど、ハッキリ聞き取れん、言葉はハキハキした方が良いって」って言ったわ、あんたに。
 ああ、基本的なことを(笑)。息子が演じてる姿を見るっていうのはどんな気持ち?
母 役にちゃんとなりきってやりよっとかなあ…?って思ったり。あんたも一時はマンネリ化しちょったわね演技が。
 わはは(笑)。
母 劇の内容もやったけど。まあ、最近はちょっとは見れるようになってきたけどね。もうちょっと落ち着けば、違う役柄の仕事も来るようになるっちゃないかなあって思うけど。
 あ、もうちょっと落ち着いた方がいい?
母 そうやね。今が勝負時やがね、あんたも。どんな役が来ても大丈夫っていう雰囲気を持っちょった方がいいわねえ。
 今まで見てきて、これは良かったっていう役とかない?
母 NHKのドラマ? ちょっとだけやったけど。銀行の、誰か、あん人は?
 ああ、渋沢栄一? 「青天を衝け」ね。
母 あれは良かったわあ。出番はちょっとだけやったけど印象は残ったよ。
 そういえば、時代劇に出てほしいって言われてたもんねえ。
母 時代劇が好きやからよ。出てもらいたいよね。脇役でもね。あんたのトレードマークは、背が低いって思うちょるやろ? 「小柄な人やけど映えるねえ演技が」とか言われるようになるといいがね。いろんな作品に出て磨かないかんわね。あれダメこれダメって思わんこっちゃね、何でもぶつかって行って。「永野さんなら、この役やれるんじゃないか?」って言われるようになれば上等よ。生きてる限り勉強やからね。勉強してそれで魅せれるようにならないとね。黙っちょってもどうにもならんが、「こういう役をやってみたい!」とかそういう話を劇団の仲間でもプロデューサーとか監督としたら良いっちゃない?
 どんな役をやってほしいとかってある?
母 主人公が悩んでたら、心を許して話し相手になってくれるような頼もしい役とかね。
 ああ、具体的やね(笑)。
母 映画とか見ながら、宗典がやったらどう演じるちゃろうかね、って思いながら観ることはあるよ。小柄でも惹きつけるっていう役をやってもらいたいね。
 小柄っていうのは切り離せないね(笑)。この身体で生まれさせてもらって感謝しかないもん。思春期は辛い時もあったけど。ダスティン・ホフマンは小柄やね。
母 うんうん、あの人も堂々としちょるわ。いろんな切り口で色々試してみたら? 自分の映像見たりしてしっくりこなかったところを、違うやり方を試してみたり。好きな役者のいい演技を盗んだり。
 なんか結構まともなこと言われて、女優・永野英子からアドバイスされてる気分やわ(笑)。
母 私は、藤真利子が好きやったがね(笑)。

●永野宗典(ながの むねのり)/’78年生まれ、宮崎県出身。’98年、上田誠らと共にヨーロッパ企画の旗揚げに参加。以降、全作品に出演。

◎シアタービューフクオカ vol.94掲載(2022.5発行)

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