コラム・池谷のぶえ めずらしく体調のいい日に vol.35

舞台をはじめTVドラマ等でも活躍中の女優・池谷のぶえさんのコラム。本誌と併せてお楽しみください!

vol.35

暑い暑い暑い暑い暑い暑い暑い…なんなら「暑い」という文字だけで今回のコラムを埋めてみようかと思いましたが、流石にそれは大人の人間としてどうかと思うので、クーラーを効かせた部屋で寒い寒い寒い…くらいの勢いでコラムを駆け抜けたいと思います。

先日発表になりましたが、2021年7月に北九州芸術劇場でも上演された、イキウメ「外の道」が、フェスティバル・ドートンヌ・ア・パリの正式プログラム「À LA MARGE(外の道)」として、今秋にパリで上演されることになりました。私は10年以上前に舞台公演で韓国に行ったきり、海外経験がありません。初海外だった韓国では、思いのほか伸び伸びと過ごすことができましたが、パリはどんな場所なのでしょうか。早速ガイドブックを購入し時間があれば眺めていますが、まずフランス語がまったくわからない。いや、韓国語だってわからなかったはずですが、いったいどうやって乗り切ったのだろうか…。そしてガイドブックにはやたらと「スリが多い」と書いてあります。リュックを真後ろに背負ってたってそうそうスられることもない日本に50年以上もどっぷり暮らしている身としては、そんなにスリが多いと言われたら、いつだってギラギラした目つきで周りを見渡しながら歩かなければなりません。むしろ、スってくれ!とアピールしていることにもなりかねません。これはもう、いかに現地感を醸し出せるかにかかっている気がします。日本では、初めて訪れた街でも「駅はどこですか?」などと尋ねられる確率が非常に高い自分としては自信がなくもないですが、パリでも「駅はどこですか?」と聞かれ、何と言われているかわからずパニくっているうちにスられる…という自信もあります。いや、むしろそっちのほうがあります。公演は11月下旬。それまでに、日本にいながらにしてパリ在住感を醸し出す訓練もしなければ…暑い暑いと言っている場合ではありません。

そして、今年はなんと、漫画「ベルサイユのばら」が50周年なんだそうです。日本でもいろいろ企画展があるようですが、ベルばら大好きだった私としては、そんな年にフランスに行けることも胸熱です。なんとしてもベルサイユ宮殿に行きたいのですが、上記の通りフランス語がわからないので地下鉄に乗れるか心配でもあり、スリに狙われないか心配でもあります。いまから数ヶ月かけてパリ在住感を会得した末に「エキハ ドコデスカ?」と尋ねている自分も想像できます…困りました…いったい何を会得したらいいのでしょう。唯一はっきりわかっていることとしては、もう一度すべてのセリフを会得しないと…という、パリ在住間を会得するよりも難しい現実だけです。

 

いけたにのぶえ/1971年生まれ、茨城県出身。俳優。幻の劇団「猫ニャー」出身。舞台のみならず映像作品へも活躍の場を広げている。

◎シアタービューフクオカvol.96掲載(2022.10発行)

 

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