ヨーロッパ企画 永野宗典の対談野郎 vol.35 ゲスト:山岸門人

シアタービューフクオカのコラムで誌上最長連載を誇るヨーロッパ企画・永野宗典氏。
ゲストを迎えての対談形式コラム。
webでもダブル掲載!本誌と併せてお楽しみください!


限られた字数制限の中、所狭しとお送りするショートショート対談。今回のお相手は、最近、飲み友になった山岸門人さんと!


今回のゲスト: 山岸門人(やまぎしもんど)
1982年生、東京都出身。「劇団鹿殺し」退団後、近年は映画『愛しのアイリーン』『鈴木家の嘘』、テレビ『あなたのことはそれほど』『きみが心に棲みついた』(共にTBS)、CMサッポロ「麦のくつろぎ」(ナレーション)などに出演。

永野(以下 ) つい最近飲んだでしょ?不安な俳優同士、傷舐め合ったでしょ?出会って4日目で、異例のスピードで対談申し込みました(笑)。
山岸(以下、) 最短ですか?(笑)光栄ですね。
どういう子供だったの?
落ち着きのない子供って言うんですかね。授業中座ってられないんですよ。小学校5年まで、鉛筆とか消しゴムと喋ってましたねえ。
う~わ。親御さん心配したでしょ?
はい。心配してて、で、演劇クラブに入ったんです。特にやりたかったわけじゃないんですけど。それから中学は板橋区で一番悪い学校で。短ラン長ランみたいな。校庭でバイクを走り回してるみたいな。
古風な不良だね!
小悪党になっちゃったんです。でまた親が、このままいくと本当の不良になっちゃうと思って、演劇科のある高校に入れられたんです。
更生させるために(笑)。
男7人女30人くらいの、劇団四季に行きたいタイプの子が行くような。それで、演劇しかできない人生がはじまっちゃったんですよ。卒業して、演劇研究所の研究生になって、さらにまた別の劇団に入ったり、そっからずっ~と挫折すね。一年間フリーで活動してオーディションばっか受けてビールばっか飲んでただけの時期があって、そんな時に劇団鹿殺しのオーディションがあって。ダメだったら、役者諦めてビームスの店員になろうと思ってたんです(笑)。必死にやって受かって、8年間在籍しました。300日間、路上パフォーマンスやったり劇団のことばっかやってましたねえ。人と喋れない性格はまだ残ってたんすけど、宣伝担当になって、片っ端から出版社にアポ取ったりして。今思うといい経験でしたね。おかげで大人と喋れるようになりました(笑)。
劇団ってなんだかんだ社会的スキルもあがったりするんだろうね。
でも、役者としては映像もやりたいけど、どうしたらいいかわからない、このままじゃだめだって悩んでた時に、東日本大震災が来たんです。新宿で稽古の予定がなくなって、その頃、ダメ出しばかり耳に入ってくる時期でもあり、なんか悔しかったんでしょうね。「チャンスが来たらやってやる!」って泣きながら帰って。そしたら4月に電話があって、6月の舞台のオファーだったんです。田口トモロヲさん、鈴木浩介さん、粟根まことさん、伊藤ヨタロウさん、で僕の5人芝居(鈴木勝秀演出「CLOUD」)。その舞台ですごく役者個人としての喜びを感じたんです。で、なんで呼んでくれたんですか?って聞いたら、当時僕、ヘッドホンした宣材写真だったんですけど、「なんかムカつく顔してんな」って思ったらしく(笑)。
へえ~、で、どうやって今の事務所に入ったの?
鹿殺しの本番中、彼女にフラれたんです(笑)。で翌日泣きながら田口トモロヲさんの事務所の社長にメールして「入れてください」って。で、事情話したら、ギャハハ!って笑って。それで入れてもらいました(笑)。彼女には、フってくれてありがとうって思ってます。
現在に至るまで、思ってた以上に濃いドラマあったね~。
ほんとに仕事がない時って、不安と恐怖とか、卑下したり、無茶苦茶不安定になるじゃないですか?どうしてるんですか?
劇団に助けられたかな~。…あ、ごめんなさいよ、山岸くんの前で言うことじゃなかったね(笑)。え、でもさ、「鈴木家の嘘」とか素晴らしい邦画作品にも出てるし、こんな仕事もやってんの?!って思ったのは、ミュージカル「アメリ」とか。
最近歌う仕事があるんですよ。高校が、ほら、ミュージカル学科だったから。18年越しで。
効いてるね!
無駄なことなんてない、いろいろやるといいよ!って偉そうに後輩に言ってます(笑)。
いや~、焦るのよ今になって。自分には何もない!って。
永野さんには、芝居があるじゃないですか。
気持ちいいいこと言ってくれるじゃんか!(笑) 今日はでも、すごい刺激を受けたわ。今年の目標、踊れるようになる!
永野さんがぐるぐる回りだしたらむっちゃ面白いです(笑)。
山岸くんの目標は?
気持ちを安定させるっていうのは、目標かもしれないです(笑)。

●永野宗典(ながの むねのり)/’78年生まれ、宮崎県出身。’98年、上田誠らと共にヨーロッパ企画の旗揚げに参加。以降、全作品に出演。

◎シアタービューフクオカ vol.77掲載(2019.2発行)

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