コラム・岩井の好きな映画 vol.26「テレクラキャノンボール」
シアタービューフクオカで絶賛連載中のハイバイ・岩井秀人氏のコラム「岩井の好きな映画」。本誌と併せてお楽しみください!
ハイバイ・岩井秀人コラム【岩井の好きな映画】vol.26 「テレクラキャノンボール」
「テレクラキャノンボール」を観た!知ってるか!知らないでしょ!?でも絶対観た方が良いですよ!ポレポレ東中野でやってましたよ!福岡の皆様!!
ざっくり言うと、東京から北海道までを、車やバイクでレースしつつ、新潟、北海道では、参加者のAV監督6人で、「誰が一番早く素人女性と交渉を成立させてセックスをし、それをビデオに収められるか」を競うという作品なのです。こんなかっこいい映画のことを、この由緒正しきシアタービューフクオカに載せて良いのだろうかと若干不安にはなりますが、「映画=アート」的なことを言いたがる文系映画野郎達には是非是非観てもらいたい、人間の小汚いところ、せこいところなどが満載で、それでいて最後にはいつのまにか涙が溢れ…さえすることのない映画なのです!観客が一体となり、目を覆って悲鳴を上げたりしながら観れる一品なのです!レース後半、参加者AV監督達のポイントのせめぎ合いが続き、ボーナスポイントの取り合いとなります。「今までであなたが一番セックスが上手い」的なことを言ってもらったら1ポイントもらえたりするので、監督は必死にセックス中に女性に尋ねるのですが、ことごとく「ビリから一番」とか「3番」とか言われて、そんなことを言われてまで必死に腰を振り続ける男の姿が悲しすぎます。
ボーナスの中でも高ポイントとなる「飲尿」(!)や「食糞」(!!!)の場面が圧巻です。この映画のポイントは、ここに集約されていると言っても過言ではないと、僕個人では思うのですが、「飲尿や食糞」といったジャンルは、確実に専門の方々がいるのですが、このレースに出るAV監督さん達はみな、飲も食も未経験の方々ばかりなのです。念のため言っておきますが、僕もそっちは全くもって無理です!したがって、今日初めて会った女性とセックスをし、その後フルチンで自分のポイントを計算しつつ、「これでは優勝に足りない…」となったら、静かに目を閉じて、何かを心に決めます。そして女性に恐る恐る「すみませんが、、、うんちを、、してもらえないでしょうか、、、」とお願いします。その5分後。お風呂場の真ん中に、モザイクのかかった黒い固まりがあります。この辺りから、劇場中がざわざわとし始めます。銀幕に映るAV監督は顔面蒼白で、その物体をスプーンですくいあげ、これでもかとためらい、嘔吐き(えずくってこう書くんだね笑)ながら、「ダー!!」と叫び、黒玉をお口に放り込みます。我々観客一同、ここではもう阿鼻叫喚です!
レースが終わり、優勝したのが誰とか、ほんとどうでもいい空気になり、東京への帰りのドライブ映像に、ふわり、またふわりと、総監督であるカンパニー松尾さんの言葉が浮かんでは消えるのです。「なぜ…走るのか」「なぜ…ヤルのか」さっきまでうんこで騒いでいた我々観客は、食い入るように、カン松(略してみました)の言葉の先を見つめます。なぜ飲むのか!?なぜ食うのか!?「なぜ…それは、つまらない大人になりたくないから!」なにーーー!!それだけ!?うんこ食わないとつまらない大人なのか!ハードル超高え!
●いわい ひでと/1974年生まれ。劇作家・演出家・俳優、ハイバイのリーダー。 「ある女」で第57回岸田國士戯曲賞を受賞。5/24公開の映画「青天の霹靂」出演中。ハイバイ最新作「おとこたち」7月16日(水)19:00、7月17日(木)14:00、18:30@西鉄ホール
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