コラム・池谷のぶえ めずらしく体調のいい日に vol.25

舞台をはじめTVドラマ等でも活躍中の女優・池谷のぶえさんのコラム!

vol.25

私にとっては9ヶ月ぶりの舞台、そして2020年唯一の舞台である、ねずみの三銃士「獣道一直線!!!」の初日が無事開きました。
わぁ、ついに開いたのですね、初日。正直、無理かもしれないなと思っていました。お稽古が始まってもそう思ってました。初日が開けてもなぜだかそう思っています。ネガティヴな意味ではなく、いつどうなるかわからないということが普通のことなのだと思っていた方がよいのかなと。いや、コロナの前だって、いつどうなるかわからないというが普通なのでした。でもそう感じていなかっただけなんですよね。

どこにも出かけず、誰とも会わず、何も買わず、何も触らず…そんな生活はなかなかできません。私たちは、絶対にいろんな菌と共存しているわけです。手洗いとうがい、洗濯、身体を洗う…という、太古の昔からある闘い方で地道に防御するのみ…って、絶対勝てる自信なんて持てるはずもありません。

なので、本番一回一回が奇跡のようです。本番一回一回が千穐楽のような気持ちでもあります。明日はもうできないかもしれないのですもの。でも演劇って、本来そういうものでもありますよね。刹那のためにあらゆるベクトルを集中させる場所でした。そうやって改めて、演劇の素敵な部分もとてもよく見えるようにはなったのですが。

そして、久しぶりのお稽古は、さぞかし「やったるでー!」とか、「ああ!お稽古できて毎日嬉しいわ!」と感じるのかと思いきや、そんな風に感じるのは数日で、あとはいままで通りセリフが覚えられなかったり、悩んだり、躓いたり、時に面倒なコミュニケーションが必要になったり…以前となんら変わらないお稽古の日々でした。

とはいえ、舞台ならではの飲みの場でのコミュニケーションが断たれてしまったのは、いまだにバランスがとれずにいます。二日酔い、寝不足、散財、喉への負担、悪口…等、リスクしかない飲みの場ではありましたが、あの時間と場所でいろんなことのバランスをとっていたんだなぁ…と改めて思います。まだしばらくは、もとの環境にはもどれないでしょう。となると、新しい稽古バランスのかたちを模索していかないとなぁ…と思います。

とはいえ、客席数の規制も緩和され、ほぼ満席に近い客席の光景は嬉しく、開演前も静かに待っていただき、終演後も劇場スタッフさんの誘導によりブロックごとに整然とご退場いただいてる姿を見ると、みんなで協力して今日もひと公演できた…と感慨深い日々です。

ねずみの三銃士「獣道一直線!!!」は、11/27(金)~29(日)に久留米シティプラザ ザ・グランドホールへも参ります。九州のみなさんとお会いできますように!

 

いけたにのぶえ/1971年生まれ、茨城県出身。俳優。幻の劇団「猫ニャー」出身。舞台を中心に活動中。
【出演情報】 《舞台》PARCO Produce PARCO劇場オープニング・シリーズ “ねずみの三銃士” 第4回企画公演「獣道一直線!!!」(作:宮藤官九郎、演出:河原雅彦)2020年11月27日(金) ~ 2020年11月29日(日)久留米シティプラザ ザ・グランドホール
《映画》「浅田家!」(監督・脚本:中野量太)公開中、 「星の子」(監督・脚本:大森立嗣)公開中
《TV》Eテレ アニメ「ふしぎ駄菓子屋 銭天堂」毎週火曜 18:45~18:55 声:銭天堂の店主・紅子役、NHK「LIFE!〜人生に捧げるコント〜」準レギュラー

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