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「A MIDSUMMER NIGHT’S DREAM」G2氏×権藤昌弘氏インタビュー!

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権藤昌弘さん、G2さん、山内圭哉さん

エンターテイメントの奇才・G2が、シェイクスピア喜劇に挑む!

「A MIDSUMMER NIGHT’S DREAM〜THEじゃなくてAなのが素敵〜」
自身の手で翻訳を手掛け、本当に笑えるシェイクスピア喜劇を作り出すという。G2さんの手によって、あのシェイクスピアがどのように生まれ変わるのか必見!

今回の作品にあたり、G2さんは「正直言うとシェイクスピアって苦手だったんです。でも最近は海外の作品をやることによって自分の演出の幅も広がると思えるようになってきて。翻訳から手掛けようと思ったのは、演出するために作家の気持ちを直接知りたかったから。作家と演出家の間に“翻訳家”が入ると、それが少しまどろっこしくなるんです。今の時代にシェイクスピアが書いたらこうなるんじゃないかってイメージして、400年前の英語の台本を“今”の感覚で訳すよう心がけました。」と語る。また本作品のあらゆる翻訳本も目を通しながら、オリジナルの翻訳で仕上げたという熱の入れよう。シェイクスピア作品には初挑戦でありながら物語の核となる若い恋人たちのひとり・ディミートリアスを演じる山内圭哉さんは「やってみると、古典はやっぱり面白いんだって思ったんですよ。感情がストレートだからとてもやりやすいですし。シェイクスピア作品って難しいイメージがあるじゃないですか。でも、観に来てくれているお客さんが“シェイクスピアくらいわかっていないと恥ずかしい”とか感じたり、それに“シェイクスピア作品をわからんやつはアホやで”と言うような人は僕は嫌いなんですよ。今回のシェイクスピアはめちゃめちゃ笑えるで!と観に来てくれた方に言わせたいから、舞台上で思いっきり遊びたいと思います」と熱い思いを語ってくれました。

歌あり、笑いあり、関西弁あり、のG2版・本当に笑えるシェイクスピアに期待は高まるばかり!

そして、今回G2カンパニー2度目の出演となる飛ぶ劇場の権藤昌弘さんとG2さん、今回のプロデューサーである北九州芸術劇場の津村さんに別室で濃いめにインタビューです!

今回翻訳をされてみて、原作者であるシェイクスピアとG2さんとの共感できる部分や共通点を感じられた部分はありましたか?

G2/
一番感じたのは、同じ、芝居やって客集めて金稼いでっていうヤクザな商売をしている仲間同士だなって(笑)

どういうところでそう感じたんですか?

G2/
いわゆる、お金にならなくても良いものだから作っていこうとか、王侯貴族からお金を貰って保護されている芸術のような香りがないんです。また祝祭劇という形式ですが、宗教が母体となって作られているようなものでもない。ちゃんと劇場に市井の人たちが観ようと集まってきて、入場料収入で口に糊してたんだということが戯曲からひしひしと感じられましたね。

それは本の中から感じ取れるものだったんですか?

G2/
そう。で、それは、僕たちがいつも考えていることと変わんないなと。ここで、こういう場面を入れておかないとお客さんは飽きちゃうし、面白い仕掛けはこういう風に展開しておくと、お客さんの食いつきもいいとか。台本とか構成だけじゃなくて、いかに役者をうまく使うか、というようなことも工夫してる。例えば、台詞の中に、お前みたいな体形のやつは(太ってるやつは、とか痩せてるやつはとかそういう感じの言葉で)みたいな、役者の体形をからかう台詞があるんですよ。それって、いちっばん簡単な、安易なコメディーなんですよ。だけど、最強なんです。だから「な〜んだ」って感じ(笑)僕たちがやってることと一緒だと。あと当時の世間を騒がすようなニュースを台詞の中に持ち出していたりね。それって「時事ネタ」という名のサイテーのコメディー手法ですけど、最強なんですよ。絶対に笑う。だから去年「ツグノフの森」っていう芝居を作った時にもニュースの場面を入れたんです。東京・大阪・福岡の三都市で上演したんですけど、やる都市によって、それにちなんだ地名やランドマーク名を入れていく。福岡だと「イムズ」と「ビブレ」って言っただけでみんなドカーンと笑っちゃう。それって本当に、邪道中の邪道(笑)だけど、確実に強い笑い。作り手としてまず最初にそういうので掴んでおいて、その後に、本質的な本当に自分のやりたいことを用意しておくっていうやり口はお互いに一緒なんだなと思いましたね。エンターティンメントの王道のパターンは、今も400年前も変わらないんだとつくづく共感しました。
だって、芝居の最後を締めくくる妖精パックの台詞なんて大胆に訳してしまうと「もし今回お気に召さなかったとしても、次回頑張るから、また観に来てや」ですよ(笑)「おいおい、それでええんか?」って感じでしょ(笑)パックを作家であるシェイクスピアが演じているから効果があるんです。書いた本人が、絶対次はがんばります、と言えば説得力がありますもんね。でも、こっちはシェイクスピアを出演させるわけには流石にいかないので(笑)つまり、どうしてもやっぱり400年前にロンドンで上演された作品の上演台本であるかぎり、日本でそのままやれない箇所もあるんです。そういう台詞は、大胆な意訳に逃げないように、なるだけ翻訳といえる範囲内で今の日本の観客にも伝わるように工夫するのが大変な作業ではありました。
全文を訳してみて、シェイクスピアには同業者としての共感が生まれましたね。遠〜い、偉〜い人っていう感覚じゃなくて。同じ職業やってるからには、年の差は関係ないと僕は思っているんです。若い作家をバカに出来ないし、上の人だからといって年齢だけで尊敬することもない。そういう考え方の自分としては、シェイクスピアさんもフツーに同業者だなって感じましたね、ホント僭越ですが(笑)

関西弁になったり、コメディーの要素が強かったりと、これまでのシェイクスピアのイメージが払拭されそうな感じではありますが、そのいわゆる“シェイクスピア”の匂いみたいなものって残っているんですか?

G2/
いやいや。一字一句台詞は変えてないですから、確実にシェイクスピアですよ。訳し方が違うだけで、シェイクスピアが書いてない台詞は書いていないし、細かい話をすると、一行ずつ見てもらえば、どの台詞が僕の翻訳にどう対応するかがわかりますから。構成を変えたりもしていないし、確実にシェイクスピアなんです。でも、一字一句、今までのシェイクスピアのイメージは全くないよね(笑)

権藤/
ないです(笑)

G2/
今、強引に言わした感じだった?(笑)

権藤/
いやいやいや(笑)

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全部訳してみて、G2さんが一番面白いと感じた部分ってどの部分ですか?

G2/
やっぱり、男と女の関係かな?僕が一番気に入っているのは、嫌いな女性にまとわりつかれた時の男のひどい仕打ち(笑)の場面。悲惨な台詞のはずなのに、笑えちゃうんですよね。「自虐の詩」って漫画があるでしょ。すごい人気で映画化もされてるけど。あれと同じ面白さですね。400年前に「自虐の詩」と本質的には同じことを既にやってる(笑)女性が見事なまでに虐げられるのはひとつの喜劇だっていう提示ですね。あと、今まで冷たく当たっていた側が急に逆転して相手に惚れちゃったりすると、手のひらを返したように下手に出てしまう、という喜劇。シェイクスピアは「惚れ薬」という手法を使っているけれど、それは“惚れ薬”という不思議なものがあるよというファンタジーがやりたかったんではなくて、人間がもともと持っている面白さをなるべく手短に見せるための小道具に過ぎないと思うんです。突然の心変わりって、今でも充分ドラマとして成立するネタだし、それを最高にうまい台詞でその面白さをえぐっているから、そこはやっぱり凄いな〜と思いますね。ただ、様々な修辞というかキレイな言葉でうまく飾っている台詞なのでそこが見えにくかったんですけど、今回はその飾りをはぎ取って、日本語としてわかりやすく成立するような台詞にしてみたんです。

G2さんがシェイクスピアをやられるのはとても意外だったので、何か面白そうな部分があったのかと。

G2/
まあ、この作品も含めてシェイクスピア作品って原文で読むと案外、簡単だなって。いや、正確に言うと、英文で読むとなんて短いんだって。例えば「怒濤のごとき岩石が狂おしくも」とかって日本語の台詞になっているのが、「rock is saving」とかそれだけなんだよ(笑)だからね、簡単だなって思ったんですよ。たった4音で済ませてるっていう心地よさがある(笑)

そういう台詞って関西弁になると入りやすかったりするんですか?

入りやすいっていうか、その短さでいうと、関西弁にしたところで英語の短さには勝てないんだけど・・・。あのね、翻訳物でしか存在しない日本語ってあると思うんですよね。

津村/
うん。あるでしょうね。

G2/
実はそんな日本語無いよって思うんですけど、英語を日本語に置き換えてみるとそう書いたほうが楽だから存在してしまっている言葉。翻訳ものでしか登場しない言葉。たとえばね、女性の台詞で「ええ、そうですわ」って、日本語で今あんまり言わないよね?

確かに言わないですね(笑)

G2/
昔の山手の奥さんは言ってたかもしれないけど(笑)でも、関西弁にはその翻訳モノ言葉って存在しないんですよ。だから関西弁にした段階でちゃんと今の言葉になってる。そこは関西弁は便利でした。
そうやって翻訳用語を使わないようにということと、日本語としても今現在、普通の感覚で使っている言葉だけを使って翻訳するように心がけました。例えば固有名詞で、鳥の名前ひとつにしても日本で見たことのないような種類だったなら、ただ「鳥」って訳しました(笑)だってそれでいいんだもん(笑)でも、どこで線を引くかは難しいんですよね。僕は「ひばり」はOKだと判断したんですが、ある人から「私ヒバリって見たことないからわかんない」って言われて(笑)え〜!!でもヒバリはわかるだろ〜と思ったから台本にヒバリは残したんだけど、でも今はそれさえも「鳥」に変えようかな〜って悩んでる(笑)美空ひばりがいるからなんとか連想はできるだろうとかも思ったりしたんですが、その美空ひばりでさえ知らない世代がどんどんね〜(笑)増えてきてるし。

津村/
たぶん、お客さんも出演者も共有する単語じゃないから違和感があるんですよ。よく言われるのは昔の翻訳物に「ボーリングに誘う」って出てきた時、日本ではまだボーリングを誰もが知らない時代だったので、ボーリングって書かれても何か分からないでしょ。ところがアメリカではみんなが共有しているので、「ボーリングに誘う間柄っていうのは、こんな近しい間柄だ」っていうのがちゃんと分かるわけですよ。でも当時の日本だと「ボーリングに誘う間柄」っていうのが分からないわけです。そこが翻訳劇のおかしな現象が起こってくる最大の要因ですよね。共有されたコンテクストがないからっていうのは有りますよね。

G2/
だから「こないだボーリング行ったろ?」っていう台詞は、翻訳家の手にかかると、仲良が良いという意味を加えて「ほら、俺たちこないだボーリング行ったくらい仲良しじゃないか」になる。“俺たち仲良しじゃないか”っていう言葉を添えておかないと、台詞の意味が分からなくなるからね。そういう訳文は本当に山のようにあるんですよ。原文ではそれに触れていないけど、日本語としては触れておかないと意味が分からない。だから文字数がどんどん増えていくんですよ。

津村
向こうだとひとつの単語でどれだけの関係性かっていうことが推し量ることができるのに、日本語になった瞬間にその関係性が分からなくなるんですよ。そういうのが結構多いですからね。

G2/
だから、今の例で言うと僕はその役者の台詞を「俺らボーリング行ったじゃん」って原文のままにしておいて、役者のアクションや動きで仲が良いという関係性を見せるようにしているんですよ。そうすれば、言わなくても仲良しなのは見て分かるから。そういう意味で演出家でもある僕は、不要な言葉を削って翻訳することができるんです。

権藤さんは今回、G2さんのカンパニーは二度目ですよね。前回の「ツグノフの森」はとても評判がよかったと聞いているので・・・

G2/
よかったじゃな〜い(笑)

権藤/
よかった。ホッとしましたよ(笑)

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今回2度目のオファーがあっての感想は?

権藤/
前回、参加させてもらって時はとても楽しくって。細かいというか、感情的なこととか細かい部分を演出していただけるのがとても勉強になりましたね。前回は誰も知らないような異次元な役で、それを自分なりに考えて演じるのがすごく楽しかったんです。でも今回は、みんが知っているシェイクスピアなので、そこが課題なんですけど、取り組むのは楽しみです。ましてや今回、初共演の方ばっかりなので、足をひっぱらないように頑張らないといけないな、と思いつつ。でも、楽しみのほうが勝ってるかな。

今回の本は読まれていらしゃるとの事ですが、今のG2さんのお話を聞いてリアルに役柄のイメージが沸いてきましたか?

権藤/
はい。でもホントにわかりやすいシェイクスピアに訳されてると僕は思っているので、観やすい、分かりやすい作品にしていただけるんじゃないかと(笑)楽しみですね。

G2/
本自体はもともと面白い作品なんであとは役者がね(笑)

権藤/
そうですね、僕が、面白くします(笑)

キャスティングについて聞かせていただけますか?

G2/
コメディーといっても色んなジャンルがあると思うから、僕が面白いと思っている役者が、例えば東京に50人いたとしても、シェイクスピア喜劇を面白くしてくれる人という観点で絞っていくと20人くらいになるんですよ。で、まず、その人たちに「出演してよ」って声を掛けたんですけど、シェイクスピアっていうだけで、何人かに逃げられましたね(笑)

え〜!そうなんですか?G2さんがやるって言ってもですか?

G2/
そう。だからそいつらを見返してやりたい(笑)その人たちに「面白かったです」って言わせてやる(笑)権ちゃんもそうだし小松(利昌)君とか出口結美子ちゃんとか、普段なかなか舞台で観るチャンスが少ないけど確実に面白い役者さんたちにも出てもらうので、今回そういう人たちに活躍をしてもらいたいなと思ってますね。あとは歌がいくつかあるんですが、(山内)圭哉とコンちゃん(コング桑田)は歌えるけどそれ以外の喜劇役者は、たぶん歌えそうにないので(笑)そこを支えて貰うために樹里(咲穂)さんと(神田)沙也加ちゃんに入ってもらいました。結局、沙也加ちゃんにはコーラスだけでちょっともったいない使いかただったんですが、そのぶん役者としてはかなりがんばってもらってます。(菜月)チョビちゃんの場合はコメディーと言うよりは不思議なシリアスをやらせた方がいいと思っているんですけど、歌ってもらいたいなと思って入ってもらったんです。この人の歌、好きなんですよ。

チョビさんは福岡出身ですよね?

G2/
そうそう。チョビちゃんは最初僕のこと九州生まれだと思ってたんだって。だから優しくしてくださるんだと思ってたって言うんだけど(笑)逆にこっちは君が大阪出身やと思ったから優しくしてたのにって(笑)

最後に権藤さん、今回の公演への意気込みをぜひ。

権藤/
えーっと、一番目立つように頑張りたいと思います!(笑)いつも気がついたらそこにいたって感じなので(笑)今回は前に前に出るようにしたいなと思います!!

【北九州芸術劇場/中劇場】
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北九州芸術劇場Presents
A MIDSUMMER NIGHT’S DREAM
〜THEじゃなくてAなのが素敵〜

■公演日/6月7日(土)、8日(日)14:00
■原作/ウイリアム・シェイクスピア
■翻訳・演出/G2
■出演/山内圭哉、竹下宏太郎、神田沙也加、樹里咲穂/菜月チョビ、藤田記子、小松利昌、出口結美子、権藤昌弘、新谷真弓/植本潤、コング桑田、陰山泰
■料金/5,000円 ※当日500円増(全席指定)
〈電子チケットぴあ Pコード〉384-286 ★Pコードクリックでチケット購入できます
〈ローソンチケット Lコード〉89978
 北九州芸術劇場 プレイガイド(店頭のみ)
 ※未就学児童のご入場はお断り致します。

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