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「共感できないから演じられる」舞台『暗くなるまで待って』加藤和樹インタビュー

INTERVIEW

怪しい悪党3人組 VS 盲目の美しい若妻
仕掛けられた罠、人形を巡る攻防、暗闇の対決は驚愕の結末へ…!

1966年にフレデリック・ノットが書き下ろし、ブロードウェイで初演され、1967年に映画化、大ヒットを飛ばしたサスペンス劇の傑作ともいえる本作。ロンドンのアパートの1室で繰り広げられる、スリリングな密室のミステリー。
残忍で凶悪なロート、冷静なマイク、その相棒のクローカー、変幻自在な悪党3人に対し、明るく気丈なスージーが立ち向かい、包容力のある夫サム、可愛いグロ―リアが支える。ついには、真っ暗闇が支配する中、衝撃のクライマックスが———

本作でロート役を演じる加藤和樹が、作品の魅力や役への向き合い方などを語ってくれた。

◆フレデリック・ノットの原作は海外では有名ですが、ご存知でしたか?

加藤和樹:2007年に上演された浦井健治さんがロート役を演じられた「暗くなるまで待って」という作品を観て、初めて知りました。

◆その時の感想は?

加藤和樹:その時は僕もまだ20代前半で、舞台作品自体をそんなに観たことがなかったんです。舞台上も真っ暗でどんな作品だろうと観る前にワクワクしていたのを思い出します。その後に映画を観ました。内容ほとんど同じなんですが、映画は映像ならではの手法で撮られていて、その緊張感とかスリリングな音楽も合わさって、映画には映画の怖さがありました。でもやはり舞台上で行われる暗闇の中の音だけの空間の、あの怖さというのは、ずっと残るものだなと思いました。
この作品は、サスペンスですが最初からネタがバレているので、いかに目の見えない人に対して、悪党3人が話術を駆使して真相に誘導していくかが見どころのひとつでもあります。そこの面白さはありましたね。

◆ロートの役は、かなり凶暴なキャラクターですけど、どういう気持ちで演じられていますか?

加藤和樹:その場で起こっている状況をロートとして楽しんでいるというのが一番です。彼の中には、恐怖心というものがないんです。主導権を全部ロートが握っていて、ハンドリングして物語を進めていくという、ある意味ではストーリーテラー的な部分を担っていると思って演じています。彼が全部手の内は解っているぜ!と思っているところに、スージーの読めない行動が来て、行動が全て狂ってく——。そういうストーリーでもあるので、目に見えた狂気みたいなものは、前半はあえて見せたいですね。

◆この役を理解する上で、加藤さんの方から寄り添っていったようなことはありますか?

加藤和樹:彼自身がすごく孤独で、ずっと一人なんです。マイクとクローカーと結託してスージーを騙そうと言っている割には、心のどこかで本当に人を信用したこともないと思うんです。僕はそういうところが本当に理解できないんです。だから僕自身がロートを理解できる部分が1つも無いということが、逆に彼を演じることができているんだと思います。共感する部分は全く無いけど、心のどこかで僕自身が彼の一番の理解者でないといけないなと思うんです。なので役に寄り添うというより、僕が考える得るバックボーンを作って、「ロートの人生を俺が生きてやるよ」という心持ちだけは常に持っています。

◆演出の深作健太さんとは3度目だそうですが、深作さんの演出はいかがですか?

加藤和樹:深作さんの中でのやりたいことが、とても明確に頭の中にあるんです。なので現場でディスカッションしながら目指すところに向かっていくという感じです。役者ととことんぶつかってくれる演出家さんなので、僕は信頼していますし、できるだけ深作さんがやりたいことを、自分が体現したいなと思っています。今回もロートってこういう人物だよね、とか、かなりディスカッションをさせていただきました。

◆今回の作品で深作さんとのやりとりで印象に残っていることはありますか?

加藤和樹:ロートの行動理念というか、ロート自身の生い立ちは劇中では描かれていないんです。どういう幼少期でなぜこういう人になってしまったのかは、想像上でのことでしかないんですけど、僕の中では、親からの虐待されたり愛を受けていなかったけど、ちゃんと教育は受けていたんだろうと。だからロートの中には乖離した人格が存在していると思って演じているんです。でもそれをお客さんに説明するのではなく、観ている人が、何がこの人の本心で、本質なんだろう?と考えてしまうような雰囲気を出したいと思っています。そんなことを深作さんと一緒に話をしながらロート像を作りあげていけたのは、印象的でした。

◆東京公演を終えられましたが、手応えはいかがでしたか?

加藤和樹:お客様も緊張して観てくださっているという感覚がありました。スージーとのシーンに関して言うと、みんなが固唾を呑んで見守るわけです。そうすると、お客さん側も今咳払いしちゃいけないとか、動いちゃいけないとか、思ってるような感じがあって。こちらの緊張が客席にも伝わるんでしょうね(笑)。こんなに静かにお客さんが観てくれる舞台は、そんなに無いかもしれないですね(笑)。逆に、その緊張感をお客さんが作ってくれているからこそ、僕らも舞台上でリアルに緊張感を共有できるんだと思います。

◆今回のカンパニーの雰囲気はどんな感じですか?

加藤和樹:とてもいいです。凰稀かなめさんもすごく真面目で、妥協がない方なので、スージーと絡んでくる人物たちとのシーンでは、稽古場に残って遅くまで稽古されていますね。かなめさんとは「1789」というミュージカルで二度共演していますが、実際に芝居で絡むことはほとんどなかったので、今回はガッツリ彼女の芝居を目の前で体感して、刺激を受けています。お互いに遠慮なくやろうというのは、最初に稽古に入るときから話していたので、すべてを預けられる人ですね。

◆この作品は話術を使った心理戦ではありますが、加藤さんご自身は心理戦は得意ですか?

加藤和樹:苦手というか、超絶弱いです。すぐ騙されるし……(笑)。芝居とかの探り合いみたいなのはすごく大好きなんですけど、サプライズとかゲームの神経衰弱やババ抜きみたいなのは本当に大っ嫌いです(笑)。もっとストレートにいこうよ!って思います。でも舞台上でお互いどう出るかという芝居の心理戦みたいなのはすごく好きなんです。でもそれをプライベートではやりなくない!(笑)

◆ツアーの千秋楽は福岡ですね。観に来てくださるファンの方にメッセージをお願いします。

加藤和樹:福岡での公演が千秋楽になります。東京が終わって、兵庫公演、愛知公演を重ねてきますので、仕上がっている状態で僕らも福岡に来ます。お客さんの緊張感が僕たちの刺激にもなりますので、ぜひ日常に刺激が足りない方は、ぜひ観に来ていただければと思います(笑)。これを逃したら二度と観られないので、ぜひ!

 

 

 

舞台「暗くなるまで待って」
 「Wait Until Dark」 by Frederick Knott

【福岡市民会館】
■2019年2月23日(土)13:00
■作/フレデリック・ノット
■演出:深作健太
■出演/加藤和樹、  凰稀かなめ、猪塚健太、高橋光臣、松田悟志 ほか
■料金/全席指定:8,800円
■問合せ/M. I. O.  096-288-6696 (10:00〜18:00)

 

 

 

 

 

 

 

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