コラム・池谷のぶえ めずらしく体調のいい日に vol.10

舞台をはじめTVドラマ等でも活躍中の女優・池谷のぶえさんのコラム。本誌と併せてお楽しみください!

vol.10

だからいわんこっちゃない、もう春ですよ。卒業式で泣かないと、冷たい人と言われる季節ですよ。制服の胸のボタンを、下級生たちからねだられる季節ですよ。いまはもう…そんな風習ないのかしらね…。じゃあいったい何をねだられるのかしら、下級生たちから。課金用のカードかしら…仮想通貨かしら…それじゃ卒業じゃなくて、ただのたかりね…。
さて2月は、バッカーズ・ファンデーション演劇奨励賞女優賞の授賞式へ。昨年秋に上演された、こまつ座「円生と志ん生」でいただきました。演劇というのは生まれてもすぐ消えていってしまう形の残らないものです。そんな中、作品に携わった時間が賞という形になって戻ってくるのは、とても励みになります。この賞は、起業家の方々が積極的に文化に触れて行こう!という思いで、毎年会員の中から舞台鑑賞グループを選出して観劇し、賞を選出しているのだそうです。さすが起業家、お忙しいでしょうに開拓とチャレンジ精神がパワフル。ついでに、豆まきもパワフル。ちょうど受賞式が節分前夜だったので、豆まきが行われたのですが、あんなに豪快な豆まきは生まれて初めてでした。豆って、思い切り撒くと、会場が本当に鬼退治をした後みたいなひどいことになってすっごく楽しい…。更年期には大変お世話になる大豆の、食べる以外のポテンシャルの高さに、まだまだ知らないことはたくさんあるな…と反省したのでした。
そして1月中は、4月から始まる通称・朝ドラ、NHK連続テレビ小説「半分、青い。」撮影の日々でした。私は、ヒロイン・楡野鈴愛役(永野芽郁ちゃん)の同級生・木田原菜生役(奈緒ちゃん。字は違うけど偶然名前が一緒!)の母親役なのですが、奈緒ちゃんは福岡出身の女優さん。ほら、ようやく…ようやく福岡との接点ができました!とはいえ、映像の撮影というものは、同じシーンに出番がない限りあまり会えないという寂しさがある。結局まだ、「同じ福岡県でも、北九州には『博多通りもん』って売ってないんだね!」という話しくらいしかできていません。そしてまたしばらくは会えなそう…ほら、また…また福岡との接点が遠のいていきます…。でも、4月からは福岡のみなさんと映像でお会いできますものね。秋には、舞台で北九州にも行けそうですし。何とかしてこれからも接点を探っていきたいと思います。特に見つからない場合は、山に登った時などヤッホー!の代わりに、めんたいこー!と叫びます。
ただ、舞台で福岡に行くよりも山に登る確率の方が低いという事実だけは、大きな心で受け止めてください。

いけたにのぶえ/1971年生まれ、茨城県出身。俳優。幻の劇団「猫ニャー」出身。舞台を中心に活動中。

◎シアタービューフクオカvol.71掲載(2018.2発行)

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