『ロストケア』構想から10年を経て公開!松山ケンイチ×長澤まさみ×前田哲監督
今、一番感じて欲しい“介護”の実態
初共演の松山ケンイチ×長澤まさみの作品への想いとは
日本では、65歳以上の高齢者が人口の3割近くを占め、介護を巡る事件は後を絶たない。この問題に鋭く切り込んだ葉真中顕の第16回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作を、「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」、「そして、バトンは渡された」の前田哲監督が映画化。介護士でありながら、42人を殺めた殺人犯・斯波宗典に松山ケンイチ。その彼を裁こうとする検事・大友秀美に長澤まさみ。社会に絶望し、自らの信念に従って犯行を重ねる斯波と、法の名のもとに斯波を追い詰める大友の、互いの正義をかけた緊迫のバトルが繰り広げられる。現代社会に、家族のあり方と人の尊厳の意味を問いかける、衝撃の感動作!
本作が初共演となった長澤まさみ、松山ケンイチ、そしてメガホンをとった前田哲監督が来福し、舞台挨拶に登壇。
本作「ロストケア」は、松山ケンイチさんと前田監督が長い時間をかけて作られたそうですね。
松山ケンイチ(以下:松山):10年くらいかかりましたね。僕がこの原作を読んだ時に、本当に深刻な問題だと思ったんです。ただ、その当時、この問題を知っている人はほとんどいなかったと思います。報道も少なかった気がしますし、今はさまざまなメディアでも「介護」というテーマを扱っていますけど、当時、10年前は本当に少なかったんです。少ないから作品として成立しづらいというのもあったんじゃないかと思うんです。
前田哲監督(以下:前田監督):2013年の葉真中顕さんの原作が出版されたので、その時、読んだのと同時に松山さんにこんな面白い本を読んだよ、と話をしたことからスタートしました。その後、すぐに松山さんが読んでくれたんです。
長澤さんはこの10年越しの想いのこもった作品に共演という形で参加されましたが、完成した今、どんなお気持ちですか?
長澤まさみ(以下:長澤):ひとつの映画が出来上がるまでに、すごく時間がかかるというのは、わかっていました。ただ作品に関わってきた時間が、私と監督やケンちゃん(松山ケンイチ)では全然違うので、二人のこの作品に対する溢れる想いというものを、側で見て感じているので、ここまで大事にされて作られた作品に携われて私はラッキーだったなと思います。
長澤さんと松山さんは、今作が初共演だったんですよね?共演する前と後では印象が変わった部分はありますか?
長澤:ケンちゃんは、すごく懐が深くてみんなに対して前向きな言葉で語りかけてくれるんです。今回だと私とケンちゃんと鈴鹿央士くんの3人のシーンが多かったんです。央士くんはまだ若いですし、弟みたいな感じなんですが、お芝居に対して戸惑いがあるなと感じている時に、央士くんの話をまずきちんと聞いてあげて否定せずにいい方向へ促してあげている姿をみていると、みんなを盛り上げてくれる方なんだなと思っていました。作品作りも一緒にやっていて面白いし、前向きに取り組めるので楽しかったです。
松山:今の言葉うれしいです。ありがとうございます。
長澤さんが出演されている色んな作品を拝見させていただいたのですが、どうしてもまあちゃん(長澤まさみ)の方に目が行ってしまう。これってやっぱりスターなんですよね。演技が上手い俳優さんもたくさんいますが、まあちゃんは演技も上手いんですけど、人が持っていないものを確実に持っているなと思います。今回もそうでしたし、おそらくこの映画をご覧になるみなさんも、まあちゃんの方ばっかり見てると思います。同じシーンもたくさんあるんですけど、大体みなさんまあちゃんに目がいってたんじゃないかと思います。僕も一所懸命頑張ったんですけどね(笑)
実は、この映画が公開してネット上で感想を書いている方たちのコメントをずっと探っているんです。僕たちが気づけない感性で感想が書いてあることがあるので、それを知りたくて。だからみなさん思いの丈をネット上に書き込んでください。そうすれば僕が探しますから。それで、今回いくつかピックアップしてきたんです。これはスゴイなという感想をいくつか紹介します。
(……といいながら自分のスマホをポケットから出す)
◎「『ロストケア』公開おめでとうございます。他人事ではないような映画だと感じました。見たくない物にフタをしてしまっていることも、フタを開けて向き合わなければならないと改めて思いました。」
これは本当に僕らが求めている感想でした。ありがとうございます。
◎「『ロストケア』はとても良い作品で自分を支えてくれた人に、日頃から感謝の気持ちを持つということが大事だと気づかせてくれる作品です。大切な人を守りたくなる作品でした」
これも僕がこういう風に伝わればいいなと思っていた事を書いてくれました。これは僕のために書いてくれているんじゃないかと思いました。
◎「『ロストケア』、役所で生活保護を受ける際に、働けるからですまされるのはリアル過ぎる。介護とは穴に入ると誰も見たくない現実だからこそ政府は介護問題を解決して欲しいと思う。」
これも介護はみんなで取り組んで行かないといけない課題ですので、こういう感じに伝わってくれてうれしいです。
◎「『ロストケア』観に行った。とにかく柄本明さんの演技が圧巻だった。色々と考えさせる内容でした」
柄本さんはマジですごかったんです。
前田監督:柄本さんのシーンではスタッフも号泣しながら撮影してましたから。
松山:伝わるか伝わらないのかギリギリで芝居をされていて、でも伝わるんです。僕も見ていて苦しかったです。続いての感想です。
◎「『ロストケア』長澤まさみ、コメディーの方がいいなんて言ってごめんなさい。シリアスもコメディーと同じくらい最強でした。何度も涙が溢れた。」
続きます。
◎「『ロストケア』の大友検事、『シン仮面ライダー』のサソリオーグ、どっちの長澤まさみも毒があっていい。」
◎「『シン仮面ライダー』『ロストケア』ふたつとも鑑賞したけど、振り幅が大きすぎ。好きな役者さん」
◎「『ロストケア』、重いシリアスと『シン仮面ライダー』のノリノリなコメディーキャラを両方演じられる長澤まさみ、実質トミーリージョーンズだよ。」
あの……どんな演技したの?(笑)
長澤:どんな演技……(笑)ちょっと弾けたような感じかな……
松山:『ロストケア』の感想を探していたんだけど。めちゃくちゃ『シン仮面ライダー』を見たくなったんだけど(笑)最後に、僕のベストな感想です。
◎「みなさま、こんばんは。映画『ロストケア』を鑑賞してイオンの鮮魚「あおき」に行ったら、普段変えないマグロの中トロがなんと半額で売っていました。すごくうれしいです。」
この感想が、一番響いたんですよ。
長澤:(笑)どこらへんが?
松山:そう思うでしょ? 映画を見終わった後に、みなさんそれぞれスーパーに買い物にいったり日常に戻るでしょ。この作品をみると日々の生活に対して感謝が生まれるような気がしたんですよ。人も大事にしたいなと思うし、ひとつひとつの出来事が「半額だったラッキー」って思った人がいつもより三倍くらいにラッキーが増えてるんじゃないかと思うんです。僕は映画の役割ってそういうことだなと思っていて、人の背中を押してあげたり、さすってあげたり、そういう役割があると思うんです。ただこの題材はすごく重いし、もちろん響かない人もいると思うし。だから沢山の映画があると思うんですけど。それぞれのエンターテインメントの中で、日々の生活に幸せを感じられるヒダを作ってくれる役割があると思います。この感想はTwitterで見つけたんですけど、すごくうれしかったです。そういう意味でベストですね。伝わります?
長澤:うん、伝わった!
最後に、会場の方で感想を言いたい!という方はいらっしゃいますか?
観客:今日は4時間かけてみなさんに会いに来たんですけど、そうじゃなかったらもしかしたら見なかった映画じゃないかなと思いました。見ることができてよかったと思います。自分も職業柄、穴の底でもがいている人をたくさん見てきたので、こういった現実があるということを日本中の人に観てもらいたい。そんな映画だと思いました。あと、松山さんがテレビで見るよりすごくカッコいいです。
長澤:そうなんですよ。イケメンなんですよ。
松山:ありがとうございます!でもそう思ってくれるのは彼だけかも。みんなこっち(長澤まさみ)を見てるんです。僕はずっと監督と話しているんですけど、生成り色のオーラが出ているんですよ。神々しい。ぜひその感想を日本全国回って伝えてください!(笑)
『ロストケア』公開中
【監督】前田哲
【原作】葉真中 顕「ロスト・ケア」(光文社文庫刊)
【キャスト】松山ケンイチ、長澤まさみ、鈴鹿央士、坂井真紀、戸田菜穂、峯村リエ、加藤菜津、やす(ずん)、岩谷健司、井上肇、綾戸智恵、梶原善、藤田弓子/柄本 明
【公開劇場】T・ジョイ博多、UCキャナルシティ13、kino cinéma天神 ほか
© 2023「ロストケア」製作委員会