ヨーロッパ企画 永野宗典の対談野郎 vol.18 ゲスト:大歳倫弘
シアタービューフクオカのコラムで誌上最長連載を誇るヨーロッパ企画・永野宗典氏。
ゲストを迎えての対談形式コラム。
webでもダブル掲載!本誌と併せてお楽しみください!
限られた字数制限の中、所狭しとお送りするショートショート対談。今回のお相手は、ヨーロッパ企画・イエティの作・演出・代表の大歳倫弘くんと!
今回のゲスト:大歳倫弘
1985年7月30日生。兵庫県出身。’05年、ヨーロッパ企画に参加。ラジオの構成・ドラマ・映画の脚本を数多く手がける。’09年から「ヨーロッパ企画 イエティ」名義で、プロデュース公演を定期的に上演している。
永野(以下 永) 人生狂わされたなって思ってる?
大歳(以下 大) ソリッドな質問が冒頭から(笑)。まあ表現悪いですけど、交通事故に合うみたいにして演劇始めさせてもらってます。そもそも演劇見たことなかったですしね。
永 当時大学新入生の大歳くんを、僕と諏訪さん(ヨーロッパ企画所属俳優)が勧誘したことから関係が続いてるからね。
大 当時、おいくつなんでしたっけ?
永 27歳。
大 四回生って言われたような気がします(笑)。諏訪さんは五回生って。
永 詐欺だよね。その後ろめたさがずっとあって。
大 でも遅かれ早かれ結局、コンタクトとってたかもしれないなーと思いますよ。実家の雑誌とか整理してると、高校の時に買ってた雑誌にたくさん「ヨーロッパ企画」の特集が載ってたんです。
永 サブカルチャーに関心が高かったってこと?
大 「クイックジャパン」とか購読してたんで、関心はあったんだと思います。
永 でも「劇団に入る」っていう人生設計はまったくなかったでしょ?
大 ええ(笑)。読んでたのも音楽の記事でしたし。今月どんなライブあんのかな、みたいな。
永 当時勧誘した子は大体離れていったけど、一人残ってて、しかも本格的に劇作家として今続けてるけど、どんな経緯?
大 作家になるとは全く思ってなかったです。まあ、今も怪しいんですが、国語、めちゃくちゃダメだったんで。ラジオのネタ投稿ハガキから、構成作家になるパターンにすごい憧れてて。何回もハガキ書いてました。
永 ヨーロッパ企画にいたら、作家系の仕事はすごい身近にあったもんね。
大 大学一回生のときに大阪のABCラジオでヨーロッパ企画の番組が始まって、気づいたら、構成っていうことを手伝わさせてもらってて。あれ? あんなにネタが採用されなかったのに、憧れの肩書きを手に入れてて(笑)。「これでええやないか!」っていう興奮はありました。
永 そっかそっか。ずっと大学で勧誘してしまった後ろめたさを引きずってたけど、むしろ、すごいマッチしてたんだね。で、舞台を作・演出するようになると。イエティに参加するの楽しみなんやけどさ、いつも客として見てて役者がすごいイキイキしてる気がして。でも、次の新作はそうでもないのかな? 「幽霊劇」っぽいし。なんでそんなホラーとか幽霊が好きなん?
大 好きですね。でも、今ホラーとか幽霊をやってるのは、ほかの理由もあって。以前は、スマホとかネットとか、そういうことを演劇にのっけたい欲が強かったんです。で、それって結構現代的な感覚を扱ってるわけで。それの揺り戻しで、もっと原始的な感覚に興味が移って…。
永 第六感的な?
大 そう。やっぱりネットとかしてると、あんまり育たない部分じゃないですか。「食」とか「恐怖」は原始的だから、最近は興味をもたせてもらってます。
永 「恐怖」人気ないよ(笑)。
大 そうなんです。実は、「猫ちゃんコメディ」にするか悩んだんですけどね。もうおもいっきし、人気が欲しくて(笑)。
永 「猫ちゃん」かわいいなあ。「猫」で十分可愛いのに、さらに「ちゃん」つけてる時点で、可愛がってもらいたがり過ぎだもんなあ。人気に飢えてるね(笑)。つぎの公演タイトルなんだっけ?
大 『ヤだなコワいななんかヘンだなぁ』です。周りの皆には、ズッこけたっていうネガティブな意見が届いてます。
永 演劇とは思えないね(笑)。ギリシア悲劇の時代の人が見たら、そうとうねじれの位置にいるよ。
大 ふざけるな!って怒られそう。でも、そこが演劇の伸びしろじゃないかと思ってやってます。
永 なるほど。演劇の先人たちに怒られに行くか。
大 岸田戯曲賞獲りたいですけど。
永 (笑)。そんなこと言ったら、井上ひさし大先生に墓から起きてきて殴られるよ。
大 井上ひさしさん、大好きなのに…(笑)。
●永野宗典(ながの むねのり)/’78年生まれ、宮崎県出身。’98年、上田誠らと共にヨーロッパ企画の旗揚げに参加。以降、全作品に出演。
information 永野宗典 出演情報/イエティ第12回公演「ヤだなコワいななんかヘンだな」に出演。2016 6/16より京都・東京・大阪3都市ツアー。