コラム・池谷のぶえ めずらしく体調のいい日に vol.15

舞台をはじめTVドラマ等でも活躍中の女優・池谷のぶえさんのコラム。本誌と併せてお楽しみください!

vol.15

新年、あけましておめでとうございます。平成最後のあけましてですね。昭和最後のあけましては、確か17歳の時。いやだ…私にも17歳の時があったんですね。
17歳の時なんて、全てのものが永遠だって思ってるじゃないですか。まさか、歯が抜けたらもう生え変わらないとか、半月板を損傷したらもう治らないとか、自分の身体がひとつずつ使い物にならなくなっていくなんて思ってもみなかったですよね。
そして30年経った現在、使い物にならなくなった部分は、他の部分で補うこともできるんだ!という、17歳の頃には思ってもみなかった人間のしぶとさに出会えるのです。
インプラントの土台を作った時にも体験しましたが、自分の組織を抽出し培養して自分に戻し、自らの治癒力に期待する…再生医療というやつですね。これが膝にも使えるらしいのです。
どの部分から補うかというと、皮下脂肪。下腹部から数ccの脂肪を採取し、培養し、損傷した半月板部分に注入すると、ヒアルロン酸などを注入するより長い期間、損傷部分を補ってくれるというものです。まずは、脂肪を抽出するプティ手術。脂肪なんて売るほどある身体ですから、いくらでも採ってくれたまえ!くらいの気持ちでしたが、よく痩身のための脂肪吸引とかあるじゃないですか。あれのミクロ版みたいなことなのですが、ミクロ版でも私は…ギブでした。
あたりまえですが、たくさんの年月をかけて強力に付着した脂肪です。採取するのもそれなりに大変なのですね。術後の患部も、アンドロメダ大星雲かよ! みたいなおどろおどろしい色になりますし。ああ…私は今後、美のためにあれこれ自分を改造することは不可能なのだな…という、意外な気づきまであったプティ手術。
コラージュというものは、アートの世界だけかと思っていましたが、生きていくには自分の身体を自分で切り貼りしてコラージュしていくことなのですね。言うなれば、生きていくこと=アートなのですね。
よし!新年一発目からすごくイイこと言えたぞ!幸先いいわよ、2019年!
今年は「亥年」。私は年女であります。で、何?年女って。なんかいいことあるの?歳がばれるだけじゃないの?というか…次の年女の時って、還暦なんだ…。
どうしよう…もうコラージュだらけで、目がお尻についてたり、足が耳についてたりしないかしら…。それもいいわね、目で排泄したり、耳で歩いたりするわ。空を歩いたり、大地を飛んだりするわ。よし!新年一発目からすごいポエティーなこと言えたぞ!
大丈夫か今年!

いけたにのぶえ/1971年生まれ、茨城県出身。俳優。幻の劇団「猫ニャー」出身。舞台を中心に活動中。

◎シアタービューフクオカvol.76掲載(2018.12発行)

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