ヨーロッパ企画 永野宗典の対談野郎 vol.42 ゲスト:今西善也

シアタービューフクオカのコラムで誌上最長連載を誇るヨーロッパ企画・永野宗典氏。
ゲストを迎えての対談形式コラム!


限られた字数制限の中、所狭しとお送りするショートショート対談。今回のお相手は、京都の老舗和菓子屋・鍵善良房店主、今西善也さんと!


今回のゲスト: 今西善也
1972年生。京都祇園にある菓子屋鍵善良房の長男として生まれ育ち、大学卒業後、東京銀座にある菓子屋にて修業。2008年14代目当主となる。連綿と続く京都の菓子の伝統を守りながらも、常に時代にあった菓子作りを心がける。

 

永野(以下 ) 出会いは2014年に僕が、祇園の街を舞台にした紙人形映画「祗園太郎 THE MOVIE」を作る時に、シナハンでプロデューサーに連れられて案内されたのが、鍵善良房さんだったんですよ。葛切りを食べてエラい感動して、葛切りを題材にして映画作っちゃったんですけど(笑)。え、創業何年でしたっけ?
今西(以下 ) 大体300年?
 300年ってすごいな(笑)。
 江戸の中期、享保年間って言われてる頃ですかね。
 そんな老舗のお菓子屋さんが、綺麗な店内でもロケさせてくれるし。
 むちゃくちゃやったね(笑)。
 スイマセン! で、劇中に出てくるオリジナルのお菓子も作っていただけたし、全面的に映画作りに協力してくださって。先代、先々代の方々も文化人を支援するようなことをされていたんですよね?
 作家さんとかに出資したり、材料を買ってあげたりしてたみたいですよ。
 その脈々と受け継がれる精神を僕は肌で感じました。
  自分は映画も好きなんで、映画製作現場に何かしら携われたらいいなというのもあったんで。
 で、僕、今西さんのツイッターとか見るのが好きなんですけど、「今西善也」と検索して、今何やってんのかなってアクセスしたりして(笑)。最近、禁酒してるんや、とか(笑)。
 夜の集まりがなくなったから、自然と禁酒になっちゃってね。
 祇園商店街の人たちと夜逃げして祇園村作ろうか、とか呟いてませんでした?(笑)
 (笑)。芸妓さんとかも含め、祇園町の人たちは大変でね、みんな「無職だ、無職だ」って言ったりしてるんで。
 信じられないですよね、2020年初めくらいまでは、海外の方々で溢れかえってたのに。僕ら俳優の仕事も無くなったりして、この急激な変化に戸惑ってますけど、でも今西さんはそんな中、オンライン販売とかで色んな対応をされてるのが、すごいなって思ってて。『園の賑わい』っていう干菓子の詰め合わせ見て綺麗だな~!って、改めて和菓子の魅力にときめいたり、『祇園守り』とか美味しそうやな~!と思ったり。
 『祇園守り』は、祇園祭の時に出すお菓子なんやけど、祇園祭が疫病退散の祭だから、今の時期にちょうどいいかなあと思って。元々、発送サービスはやってたんやけど、今回特別に生菓子とか発送してなかったものも送れるようにしたり。1日で届くところ限定にはなってしまうんやけど。福岡やったらいけるんちゃうかな。地方の方も京都に来たくても来れないんで、ちょっとでも喜んでもらえたらなと思って。発送業務だけでは売上げはカバーできないんだけど、ただ喜んでもらいたいからやってるだけで。
 「山水會(さんすいかい)」っていうのはなんですか?
 本来は、お菓子屋さんの同年代の後継者さんたちが集まって勉強する会なんやけど、京都のお菓子屋さんってHPも無いようなお店もあって、デパートとかも閉まっちゃったんで売り先が無いっていうお店が多くて。開店してるかどうかすら発信できないっていうんで、とりあえず俺がFacebookでページ作ってみんなで情報発信していこうと思って始めたっていう。
 このコロナの状況下で、良かったなって思えたことってありますか?
 SNSにしてもそうなんだけど、発送したりしてると、お客さんがメールとかに感想書いてきてくださるんで、逆に励まされてる感じがあって、やってて良かったなって凄く思いますね。あと、普段できないことにチャレンジができてる感じがしますよね。
 海外のお客さんとかってすごく増えてたでしょ? 新鮮な和菓子を海外発送とかできるようになったらすごいことになりそうですよね。
 全世界ね(笑)。
 コロナを期に、それが実現できるようになったら面白いですね。アフターコロナに鍵善良房300年の歴史にルネッサンスが訪れるんじゃないでしょうか。
 まあ、世界は変わるやろうね。考え方も変わるだろうし。新しいことをね、ポジティブに考えていかないとね。
 僕はポジティブにチャレンジする姿を見たくてね、「今西善也」って検索して動向をチェックしてるんやと思います。
 なんやろね、ツイッターのフォロワー増えていくん、そのせいかな(笑)。

 

 

永野宗典さんおすすめ!京都・老舗和菓子屋 『鍵善良房(かぎぜんよしふさ)』

*「鍵善良房」では、ホームページより季節の和菓子や干菓子など、お取り寄せができます。
www.kagizen.co.jp

 

●永野宗典(ながの むねのり)/’78年生まれ、宮崎県出身。’98年、上田誠らと共にヨーロッパ企画の旗揚げに参加。以降、全作品に出演。

◎シアタービューフクオカ vol.84(WEB版のみ)掲載(2020.5発行)

 

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