泊篤志の「芝居音楽、兄弟対談」vol.1
1つめのお題『IRON(アイアン)』
篤=泊篤志(右/飛ぶ劇場代表、劇作家、演出家)
達=泊達夫(左/飛ぶ劇場、音楽担当。泊篤志の弟)
篤 えー、お芝居で使っている音楽、オリジナル音楽ってどうやって作っているんだろう?というのを明らかにしていこう!という対談です。実は兄弟対談。第一回目のお題は、昨年公演した『IRON』です!
篤 あれはさ、どういう手順だったんだっけ?去年のIRONは。
達 公演が確か10月の頭で、今回の音楽はこういうふうにしようと思う、と言われたのがもう8月中旬だったんですね。
篤 ギリギリだね。9月からはもう稽古だもんね。
達 その段階でようやく大まかな指示が出て。
篤 初演は1999年で、歌モノは割と順調に出来たよね。お座敷小唄みたいなヤツと。
達 歌うことが禁止されてるって設定の歌ね。それと最後に皆で歌う“数え歌”。
篤 あの2つは割と順調に出来たよね。
達 そこまではいいんですけど、劇中の、いわゆるサウンドトラック的なのはそれまであまり作ったことなかったんで。
篤 華玉木(ハナダマキ)のシーンね、踊ったりもしたし。
達 そうそう大事なシーン。ただのBGMじゃない。
篤 初演は、既製の音をどっかから持ってきて勝手に組み合わせたみたいな。
達 そんな人聞きの悪い。組み合わせたのをベースにしながらメロディは自分で考えた。一応自分のイメージで、糧流(カテル)という島の・・・ちょっと北朝鮮的な。
篤 韓国的だったり、朝鮮半島的な。
達 でも、元々日本だったっていう設定だったんで、奄美かどっかその辺と韓国の音楽との融合を目指して。なおかつ日本の音楽のニュアンスを入れるっていう課題をもってジャンカジャンカいうのが出来たんスけど。曲数的には7〜8曲あってね。それを踏まえて、去年の再演。
篤 歌モノはそのままだったよね。
達 アレンジは若干変えるかも、って話までは良かったんだけど、これまた踊りの、華玉木のシーンはイメージを一新したいと。8月中旬の時点では、それだけ言われて、その後・・・ちょっと中国っぽい感じ。
篤 大陸っぽい、アジア大陸みたいな。そういう大陸の香りがするようなのがいい、と。
達 漠然とした感じの指示があって。それじゃどうしていいか分からん。
篤 アハハハハハ
達 だけど公演まであと2ヶ月切ってるわけだし、何かせんないかんなーと。気付けば9月でしょ。で、しびれを切らして、こりゃ難しいよ、もうちょっと具体的なヒントが欲しいという話をしたら『少林サッカー』みたいな雰囲気がいい。
篤 そう。あのオープニングとか、俺たち頑張るぜ的なシーンの音が。
達 そんな感じがいいかなーと言い出したんで。とは言え、どうしたもんかなーとか思って。とりあえずオープニングのその曲をアレンジも含めて耳コピーしてね。まずは少林サッカーの曲をコピーして、それをシンセでいじって出来たのが・・・IRONの曲、と。
篤 だから、コピーじゃないと。
達 知ってる人は同じやんとか言う人もいたけど、実際聞き比べてみると、結構違うやん、と。
篤 うん、聞き比べると結構違うんだよね。
ーーーと、『少林サッカー』と『IRON』の曲を聴き比べ始める。
篤 あー違う違う。似てるけど結構違う。
達 これを読んでいる人に聞き比べさせてあげられないのが残念ですが。
篤 でも、パッと聴き、結構似てるよね。
達 少林サッカーが記憶に新しい人は、あれ?っと思うだろうけど。
篤 実際公演のアンケートでは、公演の各会場で1人くらいはアンケートに、これ少林サッカーじゃないの?ってのがあって。6箇所公演したから、6人くらい? 約2300人のお客さんのうち6人。
達 1%にも満たない。
篤 全然大丈夫じゃないすか。
達 パクったみたいな話に(笑)
篤 インスパイアー。
達 インスパイアーされてね。
篤 でも、曲そのものは初演のを使ってたんじゃないの?
達 前の曲を部分的に使ったり、組み合わせてアレンジを変えたり。だからもしかして初演を良く覚えてる人は、あーなんか聞いた事あるとか。
篤 居ませんたぶん。劇団員でも誰も気付いてないし。たぶん僕くらいだよ気付いてるの。間に合わないなら前の曲使っていいからって言ったし。
達 まあ元々僕が作った曲な訳でね、誰にとがめられるものでもないし。さっきからどうも論点がパクったかパクってないかみたいな話になりがちやけど。
篤 パクっては無い。
達 参考にした。
篤 あとIRONは音響が良かったね。
達 音響の杉山さんの。
篤 パソコンで聴いてる時はちょっと弱っちいなーとか思ってたんだけど、ね、それをドーンと、アレは音響さん凄いなって思ったね。
達 僕もいいなって思った。
篤 あの凄い音響システムでね、あれはカッチョ良かったよね、あれはちょっと感動した。
達 自分の知らない音が鳴ってた。
篤 え?
達 いやそんなことないけど、入ってるかのごとく。
篤 そんなIRONでしたね。パクったかパクってないかという話になりがちではあったが、パクっては無い。
達 んーでもまあ僕の場合、飛ぶ劇場で作る曲は全部そんな話になるんじゃないかという気がするんですけど。何らかのは参考にしてるんで。
篤 で、今は新作『正しい街』の曲も作ってもらってて、今日は実はその打合せもやってたりしたんですが、これもね。
達 これもまた!
篤 (笑)パクっては無いよね。
達 (笑)パクってない。
篤 何々ふうに作ってくれと。まあそういうのはね、『正しい街』が終わった後でね。
達 誰も分からんけどね。全国で5人くらいしか。
篤 分からんと思うけどね。僕が何か曲を聴いて、ああいうのがいいんじゃないのっていう、それを達夫くんがどうやって芝居にあった曲にしていったかという・・・。
達 秘密はね。
篤 これから少しずつ明らかにしていくという不思議なコーナーになっていくのではないかと思います。では今日はこの辺で。