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注目の劇団が福岡で公演!!「ハイバイ」岩井秀人氏インタビュー

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今や、演劇界でも注目株の劇団「ハイバイ」がいよいよ福岡へ初上陸!東京であり東京でない小金井の持つ「大衆の流行やムーブメントを憧れつつ引いて眺める目線」を武器に、家族、引きこもり、集団と個人、個人の自意識の渦、等々についての描写を続けている注目の劇団ハイバイの主宰・岩井秀人氏。福岡で上演するのは、2008年6月に上演し、好評を博した「て」。岩井氏本人の家族をモチーフに描かれた作品。その作品について、また「俳優が作る演劇」の面白さを語っていただきました!しかし百聞は一見にしかず。いま勢いのある劇団の代表作のひとつと言える作品をその目で確かめてください!!

■「ハイバイ」という劇団について聞かせてください。

「ハイバイ」は、2003年に旗揚げしたんです。きっかけは、僕が岩松了さんの「月光のつゝしみ」という作品に僕が代役で入った時に初めて口語劇(喋り言葉の演劇)を知って、その時に、目から鱗のような感覚をおぼえたんですよ。その後に青年団の「東京ノート」という作品を観て、口語劇をやろうと思って旗揚げしたんです。まあ、それらに影響されて、東京で地元の小さな劇場で演劇をやっていて、そこから段々アゴラ劇場とかでやるようになってきたんですね。それから今に至るという感じです。

■岩井さんが書かれる脚本はどんな物語がメインなんですか?

自分の身の回りの話ばっかりですね。だから旗揚げの作品も、僕自身が16歳〜20歳まで引きこもりだったんですけど、その頃の話だったんです。今度北九州で公演する作品も自分の家族の話ですね。

■今回の「て」は、再演ですよね。家族の話ですが、「家族」と一言でいってもいろんな捉え方があると思うんですが、この作品の「家族」は、どんな家族像ですか?

僕の父親が結構な暴君で、『げんこつ』で家族を支配していた時期があったんです。そんな父親がいる家族の中で育った子どもたちが、成人して家を離れるんですけど、祖母がボケ始めたことをきっかけに、再び家族が集まってくる。昔色々あったけど、また家族みんなで仲良くやりましょうということで、再度家族が集まるんだけど、、っていう話です。。

■岩井さんの作品って、これは私見ですが、痛いというか辛いことを笑いにしている、という印象があるんです。

はい、そうですね。

■どうしてそういう作品を書かれるんですか?

僕は純粋に笑いたくてやっている部分もあるんです。これは僕に限ってではないと思うんですが、面白おかしいから笑うだけじゃなくて、怖い時とか、すごく悲しい時とかにも笑うことってあるじゃないですか。そういう感覚を芝居でやりたいと思ってるんです。ただ僕の場合は、大体笑いながら書いているんですけど。

■え?脚本を笑いながら書いてるんですか?

そう。まあ、ちょっと泣きそうになりながら笑って書いてるときもあるんですけど(笑)基本的に強い感情というのは、僕の場合は「笑い」になっちゃうみたいなんですよ。でも「ハイバイ」を始めた当時は、自分は笑いながら書いているのに、作品を観た人に「すごく傷ついた」とか言われてたんです。それって良くないギャップだと思っていたんですけど、僕もお客さんも「怖い」と感じたとしても、それが僕の感情表現は「笑う」で、お客さんの場合は「怖がる」という、「怖がっている」こと自体は同じなんです。いずれにしても、人間が理想とかを強く求める余り、強く傷ついたり怖がったりっていうことを書きたいとは思ってますね。

■岩井さんの作品って、自分ではわかっているけれど、あんまり言葉にしたくないとか、表に出したくないと密かに思っている事を、をあえて表現しているように思うんでうすが、そういう脚本を書くようになった原点っていうものがありますか?

岩松了さんの影響はすごく大きいですね。最初に関わった「喋り言葉」の演劇が岩松さんの作品だったこともあって。岩松さんの作品も結構観る人を選ぶとは思うんです。でも、岩松さんが持っている作品作りのロジックは、多少は自分も持ち合わせていると勝手に思っています。例えば、今回の作品だと、父親の思考のロジックが、面白い状況を生むんですね。わざと自分自身が一番傷ついているように見せてしまう自意識とか。岩松さんって、役人物にその状況に大分そぐわない言葉を使わせていて、今ある状況を表現するんです。家族の話をしているのに、「戦争」っていう単語を使ったり(笑)そういう感覚が僕はすごく面白いと思っていてるんです。
この作品にも出てきますが、うちの父親って元も子もないようなことを言うんですよ(笑)だったらこっちも、もっと元も子もないような事を言ってやろうと思ったりするんですよね(笑)たぶん僕の家族がそういう感覚を持ち合わせているんでしょうけど(笑)
まあ特に父が爆弾を投げてきたとしたら、僕と姉はそれを父に向かって投げ返すタイプなんです。一般の人は、相手に投げ返さないんですが。(笑)ただウチの中で兄だけはちょっと違っていて、その爆弾を自分で抱えて、わざと内側に向かって爆発させてみせるような、不思議な殻に閉じこもった人なんですけどね。

僕は、自分に降り掛かってきたひどい話を誰かに話して、笑って欲しいっていう欲求があるんだと思います。うちの父は、僕とは違い自分のみに起きたことがどれだけひどいことだったか、自分がどれだけつらい人生を歩いてきたかということをひけらかして、聞いている相手に泣いて欲しいんだと思います。あなたは可哀想だとか、可哀想だけどそれを乗り越えてすごい人だって言われたいタイプだと思うんですよ。だから、僕が作品を書く時に多大なる影響を受けているのは、そういう意味では父ですね。

でもね、人って自分が傷ついているということを、他の人に知って欲しいって思ってる部分もあるんですよ。だからそういう状況を芝居にしたいんですよね。

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■今回、ハイバイの公演は、福岡では初めてということですが、福岡の劇団に何作か書き下ろしをされていますよね。

「爆走蝸牛」さんですね。書き下ろしたのは一作で、あとはもともとあった作品を出したんです。

■「爆走蝸牛」の主宰の中嶋さんが直接お電話してお願いしたそうですが。

そうなんですよ。いい経験だった思いますけど、実はどれも観れてないんですよ。でも僕の作品は、他の人が演出すると思って書いてないので、よく出来たなと思ってたんです。でも評判が良かったみたいで、うれしかったですよ。僕が劇団でやった時よりも評判が良かったみたいなので、他の人が演出した方いいのかなとか思ったりましたけど(笑)

■「爆走蝸牛」がやった岩井さんの作品を観て、福岡ではああいう脚本を書く劇団がないような感じもしたので、新鮮に見せていただきました。でもやっぱりハイバイの芝居の印象とは全然違っていましたね。
あれは、なぜ脚本提供にOKを出したんですか?

僕は、基本的に寂しいので誘われると、まずうれしいんです(笑)だから、どこかで自分の台本を上演してくれるということには、ポジティブに考えますね。だって、ただ、「面白い」って言ってくれるのと、「面白いから、やりたい」と言ってくれるのとでは、すごくエネルギーが違うと思うんですよ。それは断る理由がないんですよね。よっぽどじゃないとなかなか断らないと思いますよ。

■岩井さんの作品を爆走蝸牛の中嶋さんは1回しか観ていないらしいんですよ。1回観て面白いと思って旗揚げ2作目で、岩井さんに直接連絡したって言うんです。その行動力は、素晴らしいと思いましたね。なかなか出来ることじゃないですよね。福岡では聞いた事がないです。

ああいうプロデュース力のある俳優がもっと増えたらいいと思うんですけどね。東京にもたまにそういう俳優さんはいるんですけど、なかなかいろんなものが伴ってないんですよ。でもそれって、しょうがないことのかなと思って。僕の場合は、もともと俳優をやりたくて芝居を始めたんだけど、極端に台本が読めないんです(笑)出演者が二人だったらまだ読めるんですけど、三人以上出てくると、誰だ?こいつっていうのがありますよね(笑)。それでどうしようもなくて自分で書いたんです。それが続いてるんですね。

■客演する時はどうしてるんですか?

出演する時は、他の役を他の役者さんが読んでくれるから、理解できるんですよ。でも家で一人で読む時は、頭の中でやらなくちゃいけないってことでしょ。それができないというか、面倒くさくて(笑)だから自分のやりたい台本っていうのを探せないんです(笑)それでどうしようかと思った時に岩松了さんの舞台に関わって、やりたい作品がないのなら自分で書けばいいんだって思ったんです(笑)でもそれとは別にしても、岩松さんの作品はホントにすごいと思ったし。物語のメインとして起こっていること自体を言っているんじゃなくて、それが起こっているところとは全然別の視点から、お前達この部分はちゃんと見ているのか、って言われている気がしたんですよ。それは僕も感じていた事だったし、でもその表現方法が自分だけではわからなかったんです。それを気づかせてくれた作品が岩松了さんの作品だったんですね。

だから役者さんは、やりたい芝居がなかったら、最悪自分で書けばいいじゃんって思うんですよ。みんな何かを見て、自分もそれをやりたいと思ってこの世界に入ってきているんだから。素直に考えたら、あの台本やりたいっていう風に役者始動で公演って始まってもいいと思うんだけど、みんなやらないんですよ。それでみんなやりたい作品をずっと待ってて、待っている間はバイトして繋いで、結局40歳になってしまったって人もざらにいるわけですよ。でも方や、どんどん色んな演出家や作家に声をかけて、自分主体で公演を打とうとするんだけど、そういう役者に限って稽古場に入ってからのモチベーションが低かったりするんですよね。コマを集める事で欲求が終わっているというか、それじゃプロデューサーじゃんってね。だからそれを両方持っている役者っていないのかなと思ってるんですよ。でもきっとすごいところにはいっぱいいるんでしょうけど(笑)竹中直人さんとかは両方できる方だし、佐々木蔵之介さんとかもね。ちゃんとやってる感じがしますね。だから全部メラメラしている人は、ちゃんと最後まで全部できちゃうんだと思うんですよ。そういう人がもっと増えたらいいのにと思いますね。

■そうですね、そしたらお芝居を観る方ももっと楽しく観られるんじゃないかと思いますね。そんな役者始動型(?)の「ハイバイ」は、福岡初上陸ですが、福岡でやろうと思われたきっかけって何ですか?

劇場から「一緒にやりませんか?」と声が掛かったというのもありますけど、でも純粋にこんな立派な劇場でやれるなんてって思いますね。ちょっと小倉の街に来てみてびっくりしました。

■これまで旅公演ではどちらにいらっしゃったんですか?

今年初めて、名古屋と大阪に行ったんです。一昨年くらいから、東京だけじゃなくて他の地域でもやりたいと思い始めて、去年くらいに制作と一緒に各地の劇場をまわったんですよ。「お願いします!」みたいな感じで(笑)北九州芸術劇場にもそのとき伺ったんですよ。そしたら、今年は他の地域でもやれる機会をたくさんいただいたんです。それで今年初めて旅公演をしましたね。

■なぜ地方でやりたいと思われたんですか?

これは僕が勝手に思っている事ですが、キャパが300人以上の劇場で公演をすることに、あまりモチベーションがないんです。お客さんに役者の表情が見えなくては、伝えたいものが伝わらないと思って。大きいところでやることが楽しい人もいて、そういう人はやっぱり「演出家」っていうんですよね。僕はどちらかというと、演技フェチみたいなもので、だから、それを見せたいとなると絶対に大きなキャパシティーではできないんです。東京で活動できている今の環境は満足しているんです。アゴラ劇場で公演できればいいという気持ちがすごくあるので。でも、もっと僕らの芝居を観てもらってない人に、とにかく見てもらいたい。そして、とにかく好きか嫌いかだけ決めてもらわない事には、人生的に損だと思っているので(笑)みんなに面白いと思ってもらうっていうのは、無理だと思っているから、とにかく見てもらって白黒つけてもらう機会だけ与えてもらえればありがたいと思っているので、それで東京以外でもやってみたいと思ったんですね。

■お客さんの反応も東京と地方では違いますしね。

そうそう。でも福岡の人って、東京に結構いるんですよ。みんなやっぱりちょっと変なんです(笑)濃いんですよ。で、今回の作品がまた血の濃い人たちの話なので、そもそもは東京の片隅の話なんですけど、いわゆる東京の家族像というのとはちょっと違うって思ってるんです。前に誰かと話した時に、九州でやると、より共感を得られやすいんじゃないかっていわれた事があるんです(笑)特に父権っていうのが、地方によって違うじゃないですか。父親の変な血まじりの強さっていうのかな。

■あと、見栄っ張り感(笑)

ああ!そうそう。だからこの作品は福岡に合ってるんじゃないかと。(笑)あとは僕自身が初めて地方で公演をしたのは、「東京デスロック」で神戸公演をした時なんですが、その時に、お客さんが芝居を純粋に楽しみにして観に来てくれているのにちょっとびっくりしたんですね。東京はちょっと違うんですよ。何回もやっているからかもしれないんですけど、どらどら観てやるぞ、的な感じがあるんです(笑)これは僕の被害妄想も入ってるんですけど(笑)だから東京がマズいんじゃなくて、東京だけでやっていくのは、あんまりよくないなと思いましたね。

■この作品を再演に選ばれた理由はありますか?

初演の時は、僕も出演していたので、どうして評判がいいのかわからなかったんですよ。ホントに自分のためだけにやってしまった作品だとすごく思っていたので。だから一度、外側から観てみたいと思ったのと、あと僕は、そんなにたくさん新作が書けるタイプじゃないんですよ。俳優なので無理に書いているので(笑)大体自分の劇団に面白いの作品が4つくらいあればいいと思ってるんです。それを末永くやっていきたいと思っているんです。でもこの作品は、北九州芸術劇場さんからの要望でもあったので。

■北九州の公演では、岩井さんが出演されるんですよね?

そうなんですよ。東京では僕は出なくて、猫のホテルの菅原永二さんにお願いしているんです。

■北九州ではオリジナルが観られるということですよね。

そうですね。

■では最後に、福岡での初めての公演への意気込みをぜひ。

これ難しいんですよね、ホント(笑)九州に来れると決まった時にこの作品を持って来れるとは思っていなかったんです。だからこの作品を福岡のみなさんに観ていただけることは本当にうれしいですね。
東京だとこの作品の父親像というのは、異端として観られるんですけど、福岡には結構いるかもしれないですね(笑)意外にも福岡の父を描いた力作です(笑)。なので九州でおすすめの芝居なので、ぜひ観に来てください!

 

 

【北九州芸術劇場・小劇場】 new.gif
ツドエmeets北九州vol.2
ハイバイ 「て」

■公演日/10月24日(土)14:00・19:00*、25日(日)14:00
24日(土)19:00*公演終了後アフタートーク有り
■作・演出/岩井秀人
■出演/岩井秀人(ハイバイ) 金子岳憲(ハイバイ) 永井若葉(ハイバイ) 坂口辰平(ハイバイ)、吉田亮 青山麻紀子(boku-makuhari) 上田遥 町田水城(はえぎわ) 平原テツ、用松亮 大塚秀記 猪股俊明
■料金/2,800円 ※当日200円増(日時指定・全席自由)
 ※未就学のお子様はご入場できません
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