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「ツグノフの森」G2×権藤昌弘インタビュー

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記者会見写真左より:権藤昌弘、片桐仁(ラーメンズ)、G2(作・演出)

どう転んでいくかわからないということが、演劇というメディアのいちばん面白い部分。だからこそ、今回は狙わない(G2)

第1回福岡演劇フェスティバルに参加するG2プロデュース最新作「ツグノフの森」。作・演出のG2が、これからの自身の演劇人生をリアルに考え「今、本当に作りたいものは何なのか?」と自問自答しながら創り出す世界。この先、2010年以降の演劇人生を考え、商業的でも、頼まれごとでもなく、未来の演劇を自分自身に問いかける作品となる。この自己啓発的、記念作品の主演に大抜擢されたのは、昨今舞台での活躍がめざましい片桐仁。G2の、どうしてもこの人にやって欲しかったという熱いラブコールに応え、「ラストチャンスのつもりで頑張ります!」と会見でも意気込みを語ってくれた。

巨大化した「ツグノフの森」に住む画家(片桐仁)を中心に、埋めたはずの父の死体を探す姉弟、見えない動物と戯れる男、涙もろすぎるヤクザ、撃てない理由のある兵士など個性の強すぎるキャラが「ツグノフの森」でどんなドラマを繰り広げるのか…。
その物語について作・演出のG2さん、地元福岡県出身の権藤昌弘さんにインタビュー。

■今回のお芝居のいちばんいいたいところ、見せたいところって何ですか?

G2 見せたい、というよりも自分が“やりたい”芝居なんですよ。去年結構大きな商業演劇をやらせてもらって、その反動みたいなもので本当は自分は何をやりたいんだろう?と思ったんです。そういう舞台を一回どこかでちゃんとやっとかないとやばいだろうという思いがあって、それを自分に聞いてから作ろうという感じなんですね。

■その“やばいな”って感じられたのはどういったでことですか?

G2 それは、どこでしょうね…例えばフォードが、T型フォードばっかり作っててゼネラルモーターズに追い抜かれたりとか、した時の感じ(笑)例えばですよ、お客さんが来てくれそうな、観に来てくれるだろうな、っていうような作り方で作品を作っていくと、演劇の場合やばいんだな、って事ですかね。 

■それは一回リセットというか、ふと立ち止まって見直す感じなのかなって思ったんですけど…。

G2 ま、そういうことでもありますね。走っているばっかりだと周りの景色が動いて見えにくいから、ちょっと立ち止まって今、どんな景色でどんな空気感なのかな、というのを見て感じておかないとやばいなっていう感じかな。

■それが2010年に向けてということですか?

G2 そうですよ。今自分の芝居の作り方に関して、これで作ったら絶対お客さんに受けるし、また観に行きたいなと思ってもらえるものができるっていう、テクニック的なものはすごく自分の中にも引き出しが増えてきて、自分でもそれで全然困らない。年間何本演出を受けたって、やれる自信はあるんだけど、それだと2010年以降は僕は居ないかもしれないって感じたんです。2010年以降に、その時、お客さんが求めるものを僕が作れるかどうかっていう不安がね。僕は一生芝居を作っていきたいので、一生芝居を作っていきたいのなら、その辺を自分でちゃんと考えとかないと口だけで終わっちゃうなと思って。

■その自分を見つめ直した答えというのは?

G2 それは、今回の芝居が出来上がらないとわからないと思っているんですよ。初日を迎えるまでわからないし、ひょっとしたら、作品によっては楽日になってみんなでお酒を飲みながら「こういう事だったのかなー」って言うかもしれないみたいな感じですね。今のところは。

■では本を書きながら、お稽古をしながら、G2さん自身も考えながら作っていくっていう感じですか?

G2 そうそう。もともと僕は予め計算しておいて、これならイケるっていうところまで入念に準備をしてから発車するタイプなんですけど、今回は、それをもっと観せるテクニックとかそういうことではなくて、今自分は何を感じ何を面白いと思っているのか、というものを芝居にしてみて、なるべくそのままの形で芝居を作るとお客さんはどう思うの?っていうのを、今やっておかないといけないと思っているんです。もちろん自分も今、それをやりたいし。義務とかじゃなくてね(笑)

■今回はテクニックよりも、G2さんの気持ちが先行したお芝居ってことですね。

G2 でも、わかんないよ。それは。ホントに作り手側だけの問題なんですけどね。そういう風なものを1つ吐き出しておかないとな、と思うし、ひょっとしたら、そういうものが今後、必要になってくるかもしれないし。

■やってみて反応がよかったら、そのまま突き進んでいっちゃったりするんですか?

G2 う〜ん…。あんまりそういう風に都合良くはいかないんですけどね(笑)そこまではコントロールできないと思うんだけど。もし今回何かやると、自分のモノ作りの上でも、新たなアプローチの方法をひとつゲットできるから。それをやってみた上で、もう一度、同じアプローチでやるのか、もっと違うアプローチでやってみるのか、それはこの芝居が終わってから考えるんじゃないかな。

■新しいG2さんのスタートの地点という感じですか?

G2 そうですねー。大変ですよ。ホントに(笑)

■今回、脚本も少し難航していると聞きましたが、いつもだと発想に息詰まったら気持ちを切り替えちゃうことが多い、だけど今回はそれを切り替えずに自分の中から出てくるものを辛抱強く待って、発想の切替をしなかった、ということですけど、そこにはどんな思いがあったんですか?

G2 今回、逃げちゃいかんと思ったんですよね。実は、いちばん息詰まっている時に福岡でワークショップやってたんですよ(笑)本当ならワークショップをやっている時期にはほとんど書き上がっているつもりだったんです。ストーリーだけじゃなくて、台本として書き上がっているつもりだったんですけど、書き上がるどころかゼロだった(笑)ホントにあのワークショップ終わってから、籠もって正月の2日くらいにやっとストーリーが書き上がったんです。それも大晦日の夕方くらいまで何にもしてなくてね。ホントにギリギリ(笑)公演としても待てるギリギリの時期だったんですよ。他の稽古が始まるから。そういう意味では、稽古をやりながらこのストーリーを考えるのなんて絶対無理だからやっべ〜と思ってた(笑)

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■権藤さんは、そういうG2さんの思いの詰まった作品に出演することに関して、軽いプレッシャーとかはないですか?

権藤 いやーそれはありますね〜。
G2 ソンな企画の時に出ちゃったとか思ってるでしょ(笑)

権藤 いやいやいや。そんなこと思ってないですよ(笑)

■そんなわかんないですよー。いちばんラッキーなタイミングかもしれないじゃないですか(笑)

権藤 そんな話を聞くと、ますます頑張らなきゃなって思いますね。

■今回の物語で、人が集まる場所を“森”にされたのは何かあるんですか?

G2 今回は自分の心が「おっ!」と、思うものにしようとしいて、シチュエーションもどこがいいかなってずっと考えていたんです。今まではこういうシチュエーションだとこんな面白いものが書けるはず、とか、そこにどういうエンターテイメント性が転がっているのかを検証してからその場所にすることが多かったんですけど、今回はその検証を全くしていないんです。いろんな場所を思い描いた時に「森」というワードが出て、しかもそれはアマゾンの奥地のようなものではなく、森のすぐ傍からビルが見えてる、みたいなところはどうかな?と考えた時、自分の気持ちが「あ〜いいな〜」って感じたんですよ。多分ここが良いって。別の取材で戦争とか地震とかそういう“今”のモチーフを使っているのには、何か狙いがあるんですか?って聞かれたんですけど、狙いはないんです。あるとしたら、そういう状況の方がきっとセリフとか役者が、今の空気感で振動するような感じがしたから。だから僕は戦争に対して何かが言いたいとか、震災に対してなにかが言いたいとか、阪神大震災十何年で、これを機に何かに決着を付けたいとか、そういうことは全然ない。社会のこととは切り離して、気にしないで、自分にだけ聞いてみてやってみようと思っていますね。

■たまたま自分に向き合った時のモチーフが今の世の中とリンクしていた、ということですか?

G2 ただ「森」なんて言うのは、別に今っぽくないじゃないですか。今っぽくないといったら変だけど、でも分析してみると、実は今っぽいんですよ「森」が。俺の思っている「森」がね。だから、森の熊さんが出てくるような爽やかな森じゃなくて、そんなに大して広いくないはずで、ちょっと散歩がてらに入れるような森なのに、入ったら出て来られなくなってしまうみたいな、ね。そういう森の中に今の人たちはいるんじゃないの?って気がするんですよ。みんな都会に住んでいて森なんか無いと思っているかもしれないけど、実は森にいるような、ある種の与えられるべきものを与えられていないということに気付いていないんじゃないですか?というのを分析しちゃったんですよ(笑)

■今、話を聞いて、G2さんもその森にいるんじゃないかって思っちゃいましたよ(笑)

G2 そうなのそうなの。たぶん、自分がそういう森の中にいるからこそ、そんな森に興味があるんじゃないかって思うんですよ。森の中にね。僕もいるのかもしれないですね。

■そういうストイックな場所を舞台においても、コメディーにしたいと思っている部分って何ですか?

G2 そうですね。僕は人が一回も笑わないような舞台は、一生作らないと思いますね。今んとこないし…でもそこがね、クリエーターとしてはウィークポイントなのかもしれない。やれないんです。それをやる勇気がない。だからそれをやる勇気がある人に比べると、俺はまだまだだなーとも思うんですけど、自分では笑いのない舞台をやる勇気はないですね。しかもほっといたらそうなっちゃうんですよ(笑)だからそこの「笑い」に関しては作らず、ついついそうしちゃうという性癖に関しては放っておこうと。ただ笑いを作る時に、テクニックに走らないようにしようと思ってますね。笑いはほとんどテクニックで出来るものなんですよ。話題のズレや、言い方ひとつで笑うんですよ。そのテクニックは絶対使いたくない。自然発生的に出た笑いで作り上げたいんです。

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■G2さんが分析せずテクニックも使わずに笑えるものってどんなものですか?

G2 何か失敗すると笑いって起こるじゃないですか。でも僕はその失敗の笑いって好きじゃないんですよ。笑えば笑うほど、その人のことを好きになっていく「笑い」と、笑いながら実はその人のこともだんだんやだなって思っていく「笑い」とがあるとすると、笑いながらその人のことを好きになっていく笑いが僕は好きですね。そういう笑いというのは、テクニックは使っちゃダメなんですよ。使っちゃダメなんだけど、あるんだな〜テクニックが(笑)もちろんそのテクニックを使ってもうまくいかない場合もあるし、役者がそれを理解してくれないとやれない場合もあるし、色んな条件があるから、神のごとく自由自在にやれる訳じゃないですけど(笑)それを支えているものがテクニックばかりになっていくと、あれ?ってなっちゃうんで。基本的に人間は安心しないと笑わないという事もあるし、それはわかりやすいものほど、笑いが起きるって事でもあるんです。そういう意味では、あんまり難しいものをしたいわけではない。ただ、難しく言う訳じゃないですけど、人の根元に触れるものがやりたくて、今それを作っているんです。じゃあ根元に触れるんだったら笑えないのか、というといや、それはないはずだ、という思いもあり、そこを今回は達成したいな、と。今のところですよ(笑)やってみたら今までと同じじゃないかって言われるかもしれないですけど(笑)やってみたら初の誰も笑わない芝居だったな、ってことにもなるかもしれないし。どう転んでいくかわからないということが、演劇というメディアのいちばん面白い部分ではなかっただろうか、ということなんですよ。

■キャスティングの事を少し聞かせて欲しいんですけど、もともと片桐さんが決まっていて、他の方も何かの縁でという形で決めていかれたということですが。権藤さんとの縁は?

G2 西鉄ホールさんからの推薦もあり(笑)
ホントは、段々とそうなっていたんです。結局何を自分がやりたいかっていうと「小さなスペースで芝居をやりたがってるぞ、俺は」というのがあって、じゃあそれをやろう!と。例えば人気がある役者さんだからこの人がいれば絶対人が入るよっていうような、そんなキャスティングは絶対したくなかった。かといって反対に居心地のいい人ばかりを集めると、今度は居心地が良すぎちゃうからダメなんです。初めての人が全然いないカンパニーというのは、それはそれで自分が甘え過ぎちゃってやばいんですよ(笑)

■チームワークが良くなるんじゃないかなって思っちゃいますけど。。。

G2 例えば、全く同じメンバーで再演すると如実に出るんですけど、物作りの現場に必要な、ある種の緊張感がなくなっちゃうから、それはそれで良くないんですね。ただ今回は、この先10年間を見渡せるかどうかを確かめたいから、新しい人は全部若い人がいいと思って。だから東京でも結構若い人に出ていただいてるんです。あともう一つは、今回の公演は三都市(東京、大阪、福岡)で、しかも小さいホールに限り、なので大阪から福田転球を呼ぶことにしたので、大阪で一人、九州で一人役者さんに出ていただこうと思って。小劇場だし、地域から出てる役者がそこに参加しているっていうプロジェクトもおもしろいなって考えたんですよ。そういうことを総合的に考えて決めたんです。で、書き上がった次の日に権藤さんに正式にお願いをしたんですよ。

■そういう意味では、本当に縁があったんですね。

G2 まあ、こればっかりはやってみないとわからないからね。お互いに二度とやるか!なんて思っちゃうかもしれないし(笑)

■権藤さんはG2さんの作品にどんな印象をもっていますか?

権藤 今回は違うかもしれないですけど、僕がみせていただいたG2さんの作品は、すごいエンターテイメント性が高くて、見終わった後にホントに楽しかった!と素直に芝居を楽しんで帰れるという印象がありました。観ている時に「こんな舞台に一緒に立てるともっと面白いんだろうな」と思っていたんで、今回こんな機会を与えてもらえたので、すごく楽しみです。それに今回は今までとは違う方向で2010年を見据えてという作品で、そういう思いのこもった作品に参加させていただけるのは、本当にうれしいことだと思っています。楽しみだし、頑張るしかないなという感じですね。

■権藤さんはシノプシスを読まれた感想は?

権藤 そうですね。最初読んだ時は、ホントによく意味がわかんなくて(笑)読み進めると「あれ?これどういうことだっけな?」と思ってまた戻って読み返したりして。で、最終的に最後まで読んだのに、ちょっと良くわかんなかったんですよ(笑)改めて二回、三回と読んでいくと、ですね。。。単純に面白かったんですよ。たぶん、G2さんの中にあるものとはまったく違うことを僕は感じてるんだろうけど、僕なりに、あーこれはこういうことだからか、とか、つなぎが合っていったってことはあったんですよ。だからといって、話の内容を理解したのかって聞かれると、解ってないような感じもするんですよ。
〈※シノプシス=脚本のあらすじ〉

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■お二人それぞれ、お互いの印象を聞かせてもらえますか?

G2 こんなに長く話すのは初めてだよね?飲み会で、ほんの1分もしゃべってないですよね。
権藤 この前G2さんの芝居を東京で観た後に挨拶させてもらって。ホントこんなに長くいっしょにいるのは今日が初めてですね。・・・・。(G2さんを見つめてしばし沈黙)
G2 ・・・言いづらそうだから席外そうか?(笑)ちょっと暫く居なくなってようかな(笑)
権藤 最初のイメージは見た目的にコワい感じがあったんです。でも稽古でどういう感じなのかわからないんですけど、いまは自分が最初にG2さんに対して持ったイメージは取っ払った方がいいのかな、って思ってます。
G2 僕はね、役者は稽古場で芝居をしないと何とも言えないですから、他の舞台に出ているものを何回観ても、やっぱり一緒にやってみないとわからないんで、こういう風な普通の会話では、判断しないようにしているから。あくまでも稽古場で声を出した瞬間や、こちらが何か投げかけをした時にどう対応してくれるのかっていうことでしか考えないようにして居るんで、お友達が少ないんですよ(笑)

■さっきも言われてましたが、やはり小劇場が好きですか?

G2 はい。小さいところが好きですね。小劇場は役者が生でやっているっているのが観ている側にもちゃんと伝わるでしょ。お客さんとの距離感もいいし。役者の波動をお客さんがちゃんと受け取れるから。大きい劇場になるとそうはいかないし、少し遠い感じもある。だから今回はすごく楽しみです。

■今回は第一回福岡演劇フェスティバルで小劇場をもっと盛り上げようと!という取り組みですので、福岡のみなさんに意気込みなどをお願いします。

権藤 福岡の後輩や以前一緒に芝居をやったことのある人たちが、今回のチラシを見て連絡してきてくれたんですよ。チラシ見たよ!出るんだね、頑張って!って言ってくれるんですよ。それがすごく嬉しくて。ホントに注目してくれているので頑張らなきゃなって思うんです。しかも第一回の福岡演劇フェスティバルに参加させてもらえるっていうのも嬉しくて。だから、より多くの人に観て欲しいって思っているので、頑張ります!!

G2 実は今回は、見に来てくださいとか面白いですよとか一切言いたくないんですよ。でも、言いたくないほど真剣勝負をするので、立ち会っていただけるなら嬉しいですね。おもしろいものを作れば、お客さんは見に来てくれるって信じて今回は挑みます。面白いものを作ろうと思って精一杯やりますけど、結果はわかりません。だから、僕は見に来て欲しいというよりは、自分に嘘をつかないで、今の僕の感じていること、思っていることを芝居にしますから見届けて欲しいなと思っています。現代という「森」に迷った僕が本当にその森から出て来れるのかどうか見届けてもらえれば嬉しいです。

 

 

【西鉄ホール】
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第1回福岡演劇フェスティバル参加作品
G2produce&三鷹市芸術文化センターpresents
ツグノフの森

■公演日/5月11日(金)19:00
       12日(土)13:00・18:00
       13日(日)14:00
■作・演出/G2
■出演/片桐仁(ラーメンズ)、坂田聡、福田転球、杉浦理史、権藤昌弘、水野顕子/岩橋道子、久ヶ沢徹
■料金/4,500円(全席指定)※当日券は500円増
〈電子チケットぴあ Pコード〉374-819 〈ローソンチケット Lコード〉82973
西鉄ホール/092-734-1370

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