コラム・池谷のぶえ めずらしく体調のいい日に vol.26

舞台をはじめTVドラマ等でも活躍中の女優・池谷のぶえさんのコラム。本誌と併せてお楽しみください!

vol.26

今年最初で最後の舞台、ねずみの三銃士「獣道一直線!!!」は、PARCO劇場での東京公演を無事閉幕し、ツアーに出発。11/27(金)~29(日)には、久留米シティプラザ ザ・グランドホールでの公演も無事に幕を閉じることができました。ご来場いただいたみなさま、お気にかけていただいたみなさま、ありがとうございました。
全60回の公演も、いよいよゴールが見えてまいりました。12月上旬に執筆しているこのコラムが掲載される頃には、無事完走の喜びを噛み締められていられることを願います。

さて、久しぶりの九州での公演でした。それも個人的には初めて訪れる地、久留米。そして何より私の年代で久留米といえば、松田聖子ちゃん、チェッカーズ生誕の地。来世アイドルになれると信じている私にとっては、聖地であります。久留米駅では永遠と、聖子ちゃんとチェッカーズの歌が流れていました。なんだか中学生時代に引き戻される感じです。そういえば演劇を始めたのも中学生の時でした。まさか、いまその演劇でご飯を食べさせてもらってるなんて…聖子ちゃんもチェッカーズも思いもよらなかったでしょう。私だって思いもよらないのですから。しかし、あの頃の通信手段といえば電話と手紙くらいなわけですから、久留米から東京に若くして出て来るというのは、並大抵な決意ではないですよね。もし自分が…とちょっと想像してみましたが、とっても不安で寂しかったです。ほら、来世の練習しておかないと。

久留米公演では、福岡出身の池田成志さんが「ヤー!」という掛け声で整列すると、ドッカンドッカンウケていました。掛け声にも福岡あるあるがあるのですね。このご時世、あまり出歩くこともできませんでしたが、久留米では大砲ラーメンを食べることができました。あと、一口餃子や焼きそばもテイクアウトで。とても美味しかったですが、こんなご時世でなければ、もっともっといろんな久留米を知りたかったなぁ。これから演劇界に入って来る若者たちは、こんな地方公演が当たり前になってしまうのでしょうか。地方公演で急速に仲良くなったり、お酒にまつわる逸話や大失敗や…そんな面白いエピソードが生まれなくなってしまうのは、寂しいですね。

2020年の演劇界はコロナの奴めに振り回されっぱなしでした。独り身の私がいまの世の中で舞台をやるということは、その期間、肉親にも知り合いにもがっつり会えないということなんだな…と実感しました。
舞台と日常、どちらをとるか天秤にかけなきゃいけない。こうなったらその期間、宇宙に行ってるくらいの気持ちになったら諦めもつくのかもしれないです。なんならもう、宇宙でお稽古やりましょうよ。広いし、どんな大きな声だしても大丈夫だし、コロナもいないし。酸素もないですけど。

 

いけたにのぶえ/1971年生まれ、茨城県出身。俳優。幻の劇団「猫ニャー」出身。舞台のみならず映像作品へも活躍の場を広げている。
【出演情報】 《舞台》シス・カンパニー公演「ほんとうのハウンド警部」(作:トム・ストッパード、翻訳:徐賀世子、演出:小川絵梨子)2021年3月5日(金)~31日(水) Bunkamuraシアターコクーン
《TV》Eテレ アニメ「ふしぎ駄菓子屋 銭天堂」毎週火曜 18:45~18:55 声:銭天堂の店主・紅子役/NHK「LIFE!〜人生に捧げるコント〜」準レギュラー/テレビ東京 ドラマ24「バイプレイヤーズ~名脇役の森の100日間~」 2021年1月〜

◎シアタービューフクオカvol.88掲載(2020.12発行)

ピックアップ記事

関連記事一覧