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2/24(土)公開『さよならの朝に約束の花束をかざろう』岡田麿里監督、堀川憲司プロデューサーにインタビュー

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『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』『心が叫びたがってるんだ。』脚本の岡田麿里が、「作りたい作品がある」とついに初監督に挑んだ新作『さよならの朝に約束の花をかざろう』は、あらゆる世代の人生を映し出す、出会いと別れを描いた珠玉の物語。

今回初監督を務めた岡田麿里、本作の堀川憲司プロデューサーにインタビュー

◆これまではどちらかというとリアリティーのある日常の設定が多かったように思いますが、今回、ファンタジー的な舞台設定を置いたのはどうしてでしょう?

岡田麿里監督:アニメーションに関わっている身としては、やはりオリジナルアニメというのは聖域というか憧れの場所なんです。今回劇場作品に監督としてチャレンジさせて頂けるということであれば、自分が子供の頃にドキドキしたような劇場アニメを見てみたいなと思っていました。それは物語もそうですが、映像の快感というか見ていて心が持って行かれる。その作品の世界に行けるようなものにしたいと思いました。ファンタジー作品をやってみたいという気持ちもありましたし。

もう一つ、理由としては、今までリアル路線というか、思春期の少年少女を描く機会が多かったんですけど、そこにはどうしても踏み込めない感情や人間関係があって、そこを書いてしまうと少し生々しくなってしまうんです。アニメに合う感情と合わない感情があって、今回は親子関係にその生々しさや泥臭さのような、少し淀んだところも書こうと思っていました。それを現実世界で書いてしまうと、ちょっと食べ合わせが悪いというか(笑)。今回は少し重たい関係性を描きたかったので、ファンタジーの世界の方が描きやすかったというのもあります。マキアとエリアルの関係性って現実世界でやるとちょっと難しいと思うんです。現実と地続き感の気持ちだけれども、そこに入りやすくするために、ファンタジーとして描く。それが新しいものになるのではないかというのがありました。

◆構想はいつから持たれていたのでしょう?

岡田麿里監督:最後の構想までではないんですけれども、時間について掘り下げていく話が好きだったんです。時間って一番暴力的というか、とても厳しいところがあって。けれど、時間が気づかせてくれたり許してくれるものもある。そこに人間関係の話を絡ませたいというのはずっと考えていたことです。

◆この作品は監督ご自身が「作りたかった作品」だということですが、作りたかった理由というのがありますか?

岡田麿里監督:脚本って本当に一人での作業なんです。トップバッターなので、一番最初にやらなければいけないことはたくさんあるんですが、イチ抜けなんです。あとは監督の判断にお任せするんですが、やはりそこには捉え方の違いがあったり、そうすることで私が伏線と意図していたことがそうならなかったりする場合もある。もちろんそれは共同作業の宿命なのですが、逆にその良さもあって「ああ私の狙い通りやってたら、ちょっとこれクドすぎたな」とかもあるんです。
ただ今回、監督としてやらせて頂けるのであれば、現場のスタッフと一緒にもの作りをしたいという気持ちがとても強かったんです。キャラクターデザインにしても、表情一つでも全く意味合いが変わってしまうものを一緒に相談しながら作りたかったですし、今回は感情と空の色を合わせてみたり、それに光を加えたり。例えば、私が書いていた脚本で、説明的な台詞があったとしても、現場でキャラクターの表情や声質を変えることで、極端な話、その台詞がいらなくなったりもするんです。それは脚本だけ書いている時には、感じられないことでした。なので今回はかなり、感情を不親切に書いている部分が多いと思います。でもそれを表情や景色の色、音など全体を見るとなんとなく伝わる。そういうように仕上げています。だからもしかしたらアニメっぽくないのかも知れません。でもこれはアニメじゃないと出来ないことだとも思うんです。そういうことに挑戦したかったですね。

◆初監督されてみて、改めて感じたアニメーションの魅力とや、難しさはありましたか?

岡田麿里監督:本当に作品の全てに人の手が入っているので、思っていたより良くなったということは、たくさんあるんですけど、偶然というのは存在しないというか(笑)。人の努力の分、人の熱量の分だけちゃんと表に出る。今回はスタッフのみなさんが本当に真摯にやってくれて、その思いがこもった作品になったと思います。最終的に納得できる作品というか、素直にすごいなと思える作品になったので、本当にスタッフには感謝しています。

◆堀川プロデューサーは、岡田監督と脚本家の時代からのお付き合いで、全てをさらけ出した作品を見てみたいと思われたそうですが、そう思われたのはどういったところからでしょう?

堀川憲司プロデューサー:(これまで岡田さんが書かれた脚本を読むと、)内面にはアニメーションという枠には収まらないもっと荒ぶるものを持ってるんだけども、それをアニメーションでセーブしてるようなところも感じていて。そのタガをはずしたらどんなものが出てくるんだろうというのがありました(笑)。アニメーションだからといって、アニメーションのファンに向けてだけではなくて、もっとその枠を飛び越えたものを作ってほしい、今まで抑えていたものを解放してほしいなと、そういう物語を見てみたいなと思ったのが一番です。

◆監督をされているのを間近でご覧になられていて、岡田監督らしさを感じられることはありましたか?

堀川憲司プロデューサー:こういう取材を何度が受けていると、監督が自身の過去を語っているのを聞くんです。監督の興味は子供の頃から「この人何を考えているんだろう」ということなんですね。普通の思春期の子供というのは自分のことでいっぱいだと思うんですけど、人が何を考えているかということを物語として想像していたというんです。そういうことが自然にできて、それが脚本家としての訓練みたいなことになっていたのかなと。今回、監督をされている時でもスタッフやクリエイターの実務よりも内面のフォローをしている姿を見ることが多かったんです。そういうところが、ずっと人を書いてきた監督らしいい姿だなと思いました。

◆今回の物語で、監督が一番軸に置いた点、物語の核にしようと思われたのはどこですか?

岡田麿里監督:今回は、母と息子の関係性です。ここには正しい母と子供の関係というのは、一組もいないんです。実は私は親子ものを描いたという意識はそこまで持たないで書いていました。人間関係って恋人でも夫婦でも解消しようと思えばできますが、親子だけはどうしても解消できない。だからこそマキアはエリアルを息子だと思おうとしているんです。エリアルを拾った時に、親子だったらずっと一緒にいられる、一人ぼっちにならなくていいと思うんです。それが息子として育てていくうちに、愛が生まれる。でもそれは本当に息子への愛なのか、一人が怖いからなのか。おそらく、本心は息子への美しい気持ちと恐怖がないまぜだと思うんですよ。
何かが欠けている人達が、欲しかったものを手に入れたことへの安堵と恐怖に戦いながら、そこに存在する何かを大切にしていくというところかな。たぶん、私は完璧な人って書けないんです。理想的な部分と欠損した部分を持ち合わせていて、そういうものが渾然一体となっているのが当然だろう、というのを書いてみたかったですね。

◆監督の作品をプロデューサーという立場から見て、どのような作品ができ上がったと思ってらっしゃいますか?

堀川憲司プロデューサー:アニメーションという枠組みを超えた、今まで以上に岡田麿里らしさというか、人間が元々持っている感情で、かなり深層の部分にあって、なかなか表現しづらいものをちゃんと表現できた映画になっていると思います。

 

 

『さよならの朝に約束の花束をかざろう』2/24(土)全国ロードショー

【監督・脚本】岡田麿里
【声の出演】石見舞菜香、入野自由、茅野愛衣、梶裕貴、沢城みゆき 他
【アニメーション制作】P.A.WORKS

http://sayoasa.jp/

 

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