コラム・野間口徹 舌の根も乾かぬうちに… eps.8
シアタービューフクオカで絶賛連載中「舌の根も乾かぬうちに…」福岡県出身、TVや映画等で活躍中の俳優・野間口徹さんのコラムweb連動スタート!本誌と併せてお楽しみください。(過去掲載分も随時アップ予定)
eps.8
毎年、春先辺りから「今年こそ身体を鍛えて海でこんがり焼いて健康的な肉体を目指すぞ」と意気込むのですが、今年も青びょうたんのまま夏が終わりました。いつになったら理想の人間に成れるのでしょうか。
幼少期から、そこそこハードな運動はしていました。小・中学校時代は、スイミングクラブの選手クラスで毎日数km泳いでいましたし、高校時代は水泳もやりつつ、ラグビー部も経験しました。ですが筋肉がつかない。お昼には弁当と学食の2食を食べていたのに。とにかく、ずーっとガリガリ。スポーツの経験は?と聞かれて履歴を答えると、ほぼ確実に「いやいや…ツッコミ辛い嘘は止めましょうよ…」と言われるのですから、自他共に認める筋肉量の無さ、及び肩幅の無さなのでしょうね。
そこである時期、タンパク質を多めに摂取して本格的に身体を作る努力もしたのですが、全く実りませんでした。あ、体臭の臭さだけは実りましたよ。ご存知ですか?タンパク質の過剰摂取は、体臭を極悪な方向に変えてしまうのです。自分でも気付く程なのですから、周りはもっと臭かったことでしょう。ごめんなさい。こんなエピソードの途中ですけど叫びますね。「マッチョになりたい!」すみません…大声で。でもなってみたいんです。それもアレ、ボクサー的な?痩せマッチョではなく、ゴリッゴリの。なんかもう見た人が「うわぁ…野間口さん…それ…マジっすか…」ってくらいの。これ完全に偏見ですけども、そういうマッチョの人で性格が暗い人に今までお目にかかったことが無いので、そちらも矯正されることになるのではという淡い期待も入ってるんです。結局、小さい頃から自分の暗さを払拭する何かを欲し続けているのですね。芝居にしてもそうなのですが、少しでも自信に繋がればと思い、数年前にアクションの稽古に行こうとしたこともありましたが、ある方のほんの一言で参加出来ないことになりました。「野間口さんは身体を鍛えたら仕事が無くなるし、健康的になったらもう、それは野間口さんでは無いよね」というね…涙が出そうなお言葉。八方塞がり。断念。
しかし、気持ちだけはマッチョへの思いをキープし続けておるワケです。エアロバイクを安く購入し、少しずつ脂肪を燃焼させ、ラーメンを食べ、夢の中で筋肉よ増えろと念じ、唐揚げを食べ、ストイックなまでにフィジカル系の雑誌を熟読し、酒を飲むのです。完璧なボディはすぐそこのはずなのです。なのにどうして青白いままなのか…
今年頂いた役は今のところ、変質的な犯罪者4割、頼りない公務員3割、気持ち悪い医者2割、その他1割という、圧倒的に筋肉不要な役ばかりですが、来年こそは、エクスペンダブルズのような作品に出られるよう、今から身体を鍛える気持ちだけは高く持っていたいと思っております。
●のまぐちとおる/1973年生まれ、福岡出身。俳優。コントユニット「親族代表」と、劇団「ピチチ5」に所属。7月スタート「幼獣マメシバ 望郷篇 ドラマ版」(BSフジ、TVQ九州放送 他)、公開中映画「ホットロード」に出演。 来年1月には「親族代表」ツアー公演(東京・福岡・広島・大阪)を予定。