竹井亮介の人生ドリル vol.5

舞台をはじめTVやCM等でも活躍中の竹井亮介さんのコラムが連載スタート!本誌と併せてお楽しみください!


vol.5
私は、ぽっちゃりです。時にはデブと呼ばれることも。
若き日の私は、それほど太ってはいませんでした。中学高校と陸上競技部で、高校では800メートルの選手。今よりも、20キロくらい体重が少なかったんです。うっすらですけど、腹筋だって割れてました。

それなのになぜ、今ぽちゃぽちゃしてるのか。簡単に言ってしまえば、ラーメンが好きだからです。20代後半から30代にかけては、おそらく週に2〜3回ラーメンを食べていた時期があったと思います。そうして徐々に体重が増えていきました。自業自得。

身体が大きくなって、何かと遠慮がちになりました。例えば、電車でひとつだけ席が空いていた場合、座りたいけど座らないとか。だって、私が初めから端の席に座っていて、空いてる隣に座ってきた人が、次の駅で向かい側にひとつだけ空いた席に移動することがよくあるんですが、それって、同じひとつの席ならば、隣が太ってない人の方がいいってことでしょう!ほんの少しですけど傷付きますよ、自業自得とはいえ。それに洋服屋さんで気に入った服がサイズ的にアウトなんてこともざら。また、腰痛がひどくなったり、膝や足首に痛みを感じることも増えました。私も40代後半。健康が気になるお年頃なので、このまま太ってていいのだろうかと、不安なのです。

そんな中、昨年、ある演技のワークショップに参加した際、使用するテキストで演じなければならないのが癌患者の役でした。どうあがいてもそんな風には見えっこない。よし!食べないぞ!とはいえ、完全な絶食はさすがに無理なので、なるべく食べないことに。そうすることで、声の力だけでも弱くなればと考えたのです。5日間で3キロほど落とし、多少の成果はありました。
その後、せっかく体重が落ちたのでなんとなくキープしようかと、かつて走っていた頃を思い出して朝走ったり、食べ過ぎに気をつけたりするようになりました。それで1年ほど、多少の増減はありつつも、なんとか体重をキープしていました。走るのも嫌いじゃないし、健康的じゃないかと、調子に乗ってました。

ところがです。よくお世話になってる監督さんから、とある作品へのオファーをいただきました。その監督さんから「竹井さんにしちゃ痩せすぎなので、太ってください」との指示が出たのです。そりゃそうですよ。長いことぽっちゃり俳優でやってきているわけですから、その監督からしたら、何痩せてんだって話なんですよ。結果、約2週間で6キロ増量。痩せる前よりも3キロプラス!オーマイガー!
今は、また、増量する前の体重にほぼほぼ戻っています。でも「太ってた方が需要があるよ」ともよく言われるしなぁ。
揺れるぽっちゃり俳優の心の内。まあ、お腹の脂肪も揺れますけど。
あぁ、人生って難しいですね…。

●たけい りょうすけ/早稲田大学在学中は、劇団「木霊」で活動。卒業後は様々な舞台を経験し、1999年、コントユニット親族代表を結成。ぽっちゃりとした見ためを活かした朗らかなキャラクターを演じると、場を和ませ、画面が一気にあたたか味を帯びる。その安定感は、各方面の監督からも信頼が厚い。ニュースタイルアニメ「ビジネスフィッシュ」TOKYO MX、BS11、Hulu(蛸山八男 役) http://businessfish.jp/

◎シアタービューフクオカvol.80掲載(2019.8発行)

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