ヨーロッパ企画 永野宗典の対談野郎 vol.3ゲスト:松居大悟
シアタービューフクオカのコラムで誌上最長連載を誇るヨーロッパ企画・永野宗典氏。
ゲストを迎えての対談形式コラム。
webでもダブル掲載スタート!本誌と併せてお楽しみください!
限られた字数制限の中、所狭しとお送りするショートショート対談。今回のお相手は、劇団ぐるみで親交の深いお付き合いの松居大悟さんと!

©Nobuhiko Hikiji
今回のゲスト:松居大悟
’85年生まれ、福岡県出身。劇団ゴジゲン主宰。自身が監督した映画「男子高校生の日常」「自分の事ばかりで情けなくなるよ」公開中。
永野(以下永) 演劇の出発点はなんなの?
松居(以下松) そりゃあなた言わせますか?ヨーロッパ企画ですよ。でもそれまでも演劇サークルで俳優やったりしてましたけども。
永 へー。俳優・松居大悟としての、評判はどんな感じだった?
松 俳優としては、…ひどかったですね。いつも力んでるとか、肩に力はいってるとか言われて演技が堅いとか。それでもうどうしていいかわからなくて、とりあえず柔軟体操しまくって。
永 堅さを取り除きたい一心で(笑)。
松 股割りまでできるようになったけど、演技はまだ堅いって言われて発狂しました。でも本番中は気持ち良かった。そのときの演出家さんに、本番で一番成長したって言われて嬉しかった。…でも今思えば、洗脳されてただけな気もする。
永 素直に喜べ(笑)。
松 なんか今考えるとなんであんな稽古してたんだって思うことばかりです。感情開放とかいって。
永 はいはい。
松 目の前の人をひたすら傷つく言葉で罵るとか。
永 え~、僕らのサークルでは無かったなあ。当時の東京特有のやつかなあ?
松 感情をマックス以上で表情に出すとか。
永 「発散」っていう似たメニューはあったけどね。
松 ああ!あった!
永 「やったー」発散、「たすけてー」発散、「ばかやろー」発散、などなど。
松 うわうわうわ、そんなのただの叫びでしかないのに(笑)。
永 稽古場の壁壊した奴とかいたよ。
松 僕も壊しました(笑)。窓も割ってしまいました。
永 力んでるなあ~(笑)。でも、今はさあ、俳優よりも演出とか映画監督やったりが多いよね?
松 最近は、撮影部とか演出部とかで作品を超えてだんだんと強いチームができた気がしてきてすごく楽しいし、生産的で最高です。
永 劇団ではどう?
松 いや、なんかね、映画とかやるまで、自分から作品のことを相談したりしてなかったんですよね。人を信じるとか頼ることによって作品が豊かになるってことに気付かなかったんですよね。自分が突き詰めて苦しんだ分だけ作品が面白くなると思ってた。そこに人は介入させたらダメだと思ってた。
永 ああ、現場の規模によっては、ギリギリ一人のパワーで押し切れることがあるかもだけど、映画とかって各専門の人の知恵を頼んないとなかなか成立しにくかったりはあるかもね。で、俳優業には、今、特に興味ないんだっけ?
松 あるわ!めちゃくちゃ!やりたいんですよ。でも、演出家兼俳優って嫌ですよね、「こういう演技、欲しいんやろ?」って感じでやっちゃって。
永 いやいや、演出の視点で、かなり作品にプラスに貢献できてるんじゃないの?
松 でもそれ以上にめんどくさいんでしょ? 僕、逆の立場だったら僕そう思いますもん。
永 …ややこい俳優やな。
松 ややこいんですよ、俳優としても人間としても。
永 まず人間として、ちょっとこじれてるもんなあ。
松 え(笑)。
永 傷つくのを恐れていろいろ警戒し過ぎやし、
松 うるさいわ。
永 臆病風を身に纏って、
松 ちょ、
永 心を殴られることを恐れて、
松 先輩、
永 自分のことばかりで情けなくなるよ。
松 まとまった!僕が監督してる映画『自分の事ばかりで情けなくなるよ』、福岡では11月2日から公開してます。
永 イジりのつもりだったのに、告知の流れを作ってしまった(笑)。
松 イジリにしようとしてる空気、敏感に察して利用してやりました(笑)。
永 まあ、悩み多き孤高の表現者であることはわかったわ。こじれ俳優。
松 いやいや(笑)。
●永野宗典(ながの むねのり)/’78年生まれ、宮崎県出身。’98年、上田誠らと共にヨーロッパ企画の旗揚げに参加。以降、全作品に出演。
information 京都ニューシネマ vol.3(11/30・12/1)で、新作監督作品映画を上映。