劇団太陽族「異郷の涙」岩崎正裕インタビュー

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劇団太陽族が、約4年振りに福岡での公演が決定!
北九州芸術劇場にて2 月 4 日(土) 5 日(日)に新作「異郷の涙」を上演。

この作品は、昭和の高度経済成長期の日本を舞台とし韓国から渡り、昭和を生きた男の人生を描きます。また本作は日本演出者協会主催の日韓演劇フェスティバル参加作品として、地元大阪はもちろん、東京、福岡の三都市をまわります。昨今、韓国のエンターテイメントは、日本を席巻するほどの勢いですが、演劇においても日本で話題になることもしばしば。今回の新作について、劇団太陽族主宰の岩崎正裕さんにインタビュー。

 

■今作では、日本での高度成長期に時代背景をおいたのはどうしてですか?

今の日本にあるある種の「ゆがみ」は当時に端を発していると思います。そのひとつが今回の舞台になる「大阪コリアンタウン」。
3.11で「起こるはずがない」と言われていたことが今実際に起こっている。諸問題を処理をせずに、蓋をしたまま経済偏重でここまでやってきたことのツケがきているようです。また大阪では今まさに文化や教育問題において、弱者や少数者を切り捨てるような政治が進められています。原点であるその時代から「現在」を照射したいと思いました。

■その時代の日本を韓国からという視点をおいて描きたいと思われた理由は?

韓国側から書こうということはありません。今までの日韓の歴史のなかで、「在日コリアン」という問題があります。劇団員にも在日コリアンがいるし、これまでもその問題を取り上げる作品を作ってきています。今回、日韓演劇フェスティバルへの参加ということからも、これに触れざるを得ないと思いました。韓国からの俳優との共作によって、内外双方から描きたいと考えています。

■岩崎さんからみた、当時の日韓の関係性と、韓流ブームとなり、韓国のエンターテイメントが大きく日本を侵蝕している現在の日韓の関係性に、どのような違いがあると思われますか?

韓国エンターテインメントが日本を「浸蝕」しているとは思っていません。絶えず文化は流動的であるべきだと思うし、互いが知り合うきっかけとなっていることは非常に好ましいことです。が、韓流ブームによって回復された関係性はまだまだ表層的なものであるとみています。
当時、格差は今以上にありましたが、資本家と搾取される側という対立構造がはっきりした、いわばわかりやすい格差であったと思います。在日の人びとが生きるためにやくざ社会に流れ、またやくざ側も仁義を尊び互いにつながりをもつなど、体温のある関係が保たれていたように思うのです。
が、現在ある格差は、隠蔽されてより危険な方向へ進んでいる気がします。雇用が不安定になり派遣社員が増加するなど、人と人とのかかわりが薄れ、人を思いやる心が無くなりつつあるのではと危惧しています。


■海外との交流にも積極的に関わられてきた岩崎さんは、韓国と日本の文化(芸術やエンターテイメントを含)の違いをどう捉えられていますか?

残念ながら違いを認識してはいません。今回の作品づくりを通して「違うこと」「同じこと」を見極めたい。今、私たちに大切なのは「異」なるものを受け入れる寛容、「知りたい」という気持ちではなのではと感じています。


■ズバリ、本作で岩崎さんが描きたいこととは、どんなことでしょう?

私は昭和38年生まれ。それ以前の日本社会に興味がわいたのは最近になってのことです。「今、私がここにある」のは何故なのか。50代に差し掛かろうとしている自分がどこから来たのか。それを感じ、考えたい。そしてこれからどう生きていくのかを見据える作品にしたいです。


■今回、劇団太陽族の俳優の他に、韓国からの俳優も参加されるそうですが、言語を使い分けるような演出を考えられていますか?

大阪には日本最大のコリアンタウンがあり、日本語・韓国語をちゃんぽんで話している人びとが身近にいます。その大阪に息づく生活=文化をそのまま舞台へあげたいと思っています。


■北九州芸術劇場での公演ですが、太陽族が活動の拠点とする大阪や他の公演地である東京よりも、“福岡”という土地はそのいずれの地域よりも韓国が近距離にあります(福岡から東京へ行くよりも韓国に行く方が実は近いのです)。何か意識されるようなことはありますか?

今回の芝居の軸になる人物が「大木金太郎」こと「キム・イル」。彼が昭和の時代に韓国から密航して日本に着いたのが下関。日本に来て初めて見たのは玄界灘の風景であったと思われます。韓国も近く、北九州には外部へ開かれた感覚があると感じています。この作品を北九州でも上演できることに感慨があります。

■今回は劇団としては初めて北九州芸術劇場での上演だそうですが、新作への意気込みを是非ともお聞かせください。

北九州芸術劇場は、「冒険王」の演出で滞在制作をしたり、いろんなアウトリーチ事業でお世話になっていて、たいへん馴染みの深い場所です。今回、劇団として初めて新作をもっていけることに喜びを感じています。

やっと小倉のみなさんに自分の劇団で行きます!

 

【北九州芸術劇場 小劇場】
■ 2012年2月4日(土)18:30、5日(日)14:00
■ 作・演出/岩崎正裕
■ 出演/森本研典、南勝、岸部孝子、篠原裕紀子、前田有香子、佐々木淳子、中西由宇佳、韓寿恵、米田嶺、キリル、キム・ジュンテ、チョン・ウォンテ
■ 料金/日時指定・全席自由・整理番号付
一般 3,000円
学生 2,000円(要学生証提示)
ペア割引 5,000円(劇団・前売のみ取扱)
※ 当日300円増
北九州芸術劇樹プレイガイド(10:00~19:00)、オンラインチケット(3:00~4:00除く)
〈チケットぴあ Pコード〉410-756 〈ローソンチケット Lコード〉86760
劇団太陽族 06-4801-4724

 

 

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