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土田英生(MONO代表/作・演出家)

もう福岡でもお馴染みとなった、MONO。代表の土田英生が描く、コミカルでテンポのよい会話劇は、MONOでやってこそ、のおかしみや人間味が溢れている。今回の「赤い薬」は、12年前の作品の再演。“今”の土田が“現在”のMONOへ新たに改訂した部分も多分にあるという。言ってみれば、12年前の土田英生本人とのコラボ作品。フレッシュな笑いの感覚と経験値がアップし成長したMONOが掛け合わさって出来る、“新作”だ。
色んな意味で「若さを取り戻す」という意気込みの彼に、いつもながらのロングインタビュー!

■まずは今回の意気込みを先に

今回は、若さを取り戻すっていうのが意気込みですね。

■えっ、そうなんですか?

若い劇団に負けないくらいの勢いを見せたいなと思ってます。

■なぜ若さをとり戻そうと思われたんですか(笑)

実感として自分の身体とか体力とかの変わり目だなっていうのがあるんですよ。今、42歳なんですが、「歳とったなって」いう感じではないんですが、所々違和感は持ち始めてるんです。変な時に腰が痛いとか。今までもった徹夜がもたないとかね。

■それはちょっと分かる気がします(笑)

ありますよね。なのに20代から続いてきた生活パターンがまだ変わってないんです。その“変わってない状態”が、どうも今の自分に対応しきれなくなってきてるんですよ。それって僕個人の問題だけじゃなくて、劇団全体も20年やってきて、そういう状況になってきている。別に無理して若づくりしようということではないんです。ただ、このまま黙って枯れていくのではなく、もう一度弾けてみたいなと。

■若さをとりもどすというか、リセットする感じなんですか?

そうですね、今まではただ若いつもりでやってましたけど、今回は意識的にあえて元気にやろうっていう感じですね。

■(笑)。そうですよね、20年ですしね。その劇団のみなさんも、ここ最近色んな活動されていますよね。外部で別に劇団をされたり、MONOではない公演をされたり。それによって劇団員同士の関係性などは変わってきたりするんですか?

今が一番いい感じですね。一時はね、しゃべるのも恥かしかった時期もありました。劇団って、すごく仲の良い時期もあるけど、反対に仲が悪くなる時もある。そういう経過を経て、今はベタベタすることは全くないですがちゃんと話も出来ますし。飲みに行きたいなと思えば行くし、本当に困った時にはまず劇団員に連絡したりしますしね。お互いそれぞれが個人で活動している分、いい感じで関係が作れていると思うんです。

■距離感がちょうどいい感じになってきたんですか。

そうですね。みんな素直でね。僕がちょっと劇団のことで不満があって、それを伝えても「ああそっか、言ってくれてありがとう」、みたいなね(笑)。「ああ、いい奴だなみんな」……っていうそういう感じなんですよ。

■じゃあ、20年を経てみなさんそれぞれにの変遷があったんですね。今回の作品は12年前の作品で。言ってみれば、もう一回りしている。

はい、そうですね。

■ ひと回りしてて。役者さん自身も作品に対する考えや見え方も変わってきてると思うんですけど、そんな話はされましたか?

どうなんでしょうね、それはホント、役者に聞かないと分からない部分もありますけど。ただ逆に今は、何でもやってくれますね。「何が来ても何とかするよ」みたいな。彼らの器が大きくなってる気がしますね。

■お稽古は、始ったばかりですよね。じゃあ、その器の大きさを感じられる、みたいなものはまだなんですね。

これからですね。ただ、余談ですけど、今回の作品、初演では役者がずっと片足で立ってるシーンから始めてたんですけど、それはやめてくれって言ってました(笑)。体力的に無理だって。だったらってことで脚本を書き直して、片足立ちのところを変なポーズに変えて試してみたんですけど、みんな足がぷるぷる震えてきて。稽古終わった時に、これは余計に無理だっていわれました(笑)。

■(笑)。じゃあ、演出方法も体力に応じて変わってきたと。

そうですね、さっきも言ったように、精神的には受け皿も大きくなってるんですけど、体力的に受け皿が小さくなってますから。それが非常に問題っちゃ、問題ですね。

■そうですよね(笑)。土田さん以外の劇団の方は他のカンパニーに客演もされていますが、土田さん自身は客演はされないんですか?

ええ、もう、一切出ないです、はい。

■決めてるんですか?

はい。(即答)

■(笑)。なぜされないんですか? それずっと気になってたんですよ、前から。

そんなに話も頂かないですし。時々、知り合いから「出る?」って言われるんですけど、ここ2、3年はスケジュール的にもちょっと無理だったんです。だってやるとなったら1ヶ月とか稽古があるでしょ。今1ヶ月あるなら休みたいし(笑)。

■では、オファーがあれば考えるよっていう感じなんですか。

いや…、断わりますね。

■(笑)。

まあ、色んなタイミングが合えば……。去年はリーディングやりましたよ。

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■今回の公演についてですが、客演として迎えられる山本さんはどういった役者さんですか?またなぜオファーをされたんですか。

僕はね、ずっと前から彼女のファンだったんです。本人に会うと全然色気が無いんですけど、舞台上でだけ色気があるっていう不思議な女優さんなんですよ。それで二年前ですかね、九州には来てない作品なんですけど「なるべく派手な服を着る」っていう舞台があって、それに出てもらったんです。

■私それ拝見したんですけど土田さんとすごく息があっていらっしゃる感じは受けました。

そうなんですよ。それで、彼女にはまた出てほしいなって思ってたんで。それと……劇団に関してはあんまり客寄せ的なタレントさん呼んできてっていうのは無いんですよ。それだったらプロデュース公演やればいい。やっぱり劇団に出てもらうのであれば、限りなく劇団員と同じことを求められる役者さんがいい。もちろんタレントさんであっても、そういう人であれば問題はないんですけね。でも京都にはね、面白い役者っていっぱいいるんですよ。せっかく京都の劇団ですから、そういう京都の役者さんたちとやりたいなっていうのもあるんです。まあ、そんなことを全て含めて、今回も山本さんに声かけようと。

■劇団の方とも息もぴったり合ってるんですね。

もう全然違和感はないです。ただ、こないだ意気込みをって聞いたら「『MONO』に馴染みたいと思います」って言ってましたけど。冗談のつもりなんでしょうかね。

■今度は作品の話を少し。えっと、治験薬モニターのお話で、治験薬モニターの経験はあるんですか?

無いです無いです。今回出てくる治験薬は、人をコントロールするための薬なんです。なので身寄りもない人達をピックアップして、っていうような、ブラックな話にしようと思ってですね。極端にいってしまえば人体実験の話なんです。

■20代から90代まで笑える作品にしたいと言われてましたが、何か具体的な策があれば聞かせてください。

そうは言ったものの、まあねえ、90代まではカバー出来ないですね(笑)

■(笑)。

僕は不条理なものも好きなんですけど、どうしても自分が作る芝居は具象だったんですよね。具象の設定の中では不条理な会話っていうのは出来ない。何回か、不条理劇っぽいことも挑戦はしてるんですけどもやっぱり日常ベースの設定が好きなんですね。今回、仕掛けとして面白いのは、日常の設定でありながら、「薬のせいでおかしくなっている」という、不条理な会話シーンを作れることですね。
初演の時から気に入ってる、全員の話が全くかみ合ってないシーンがあるんですよ。前回でもすごく笑えた部分なんですけど、ほんとに意味不明な芝居なんです。しかし薬を飲んだ副作用という、ひとつの仕掛けが入っているので、自然にかなり不条理まで持って行ける。普通の会話のズレとか、行き違いとか、そういった普段の笑いに加えて、そういう異質な笑いも作れるんですね。登場人物が意味不明なこと言いながらただただ行進するシーンがあるんですが、ああいうのはただ役者を見てて面白いと思いますね。

■さっき話されてた、テクニックに頼らないというか、手練手管にならない笑いっていうのはそういうことですか。

そうですね。年とってくると、やっぱり手は増えてきちゃう。自分では若手のつもりですけど、僕より若い子もいっぱい出てきちゃってるんでね。若い人に比べると、テクニックだけはついて来てると思いますけど、それだけをやってたら、自分の先は無いなと思いますし。だからあえて新鮮にやらないといけないですね。

■昔の笑いっていうのは、今の自分で純粋に理解できたりするんですか。

出来ますよ。ただ、今は考え付かないだけで。面白いなとは思えるんですよ。

■今回手を入れようと思われてるところ、変えようと思っている部分ってありますか。

手を入れようと思ってるところは技術的な構成だけなんです。ただ改めて脚本を読んでみて反省したのは、当時は今よりも苦しんで書いてましたね。いや、今でも同じ態度で臨むべきなんですけど、段々と苦しめなくなっちゃうんですよ。

■苦しめなくなるっていうのは、どういうことですか?

例えば、レンコンという材料が目の前にあって、どうしようかなって迷った時に、今はこういう出汁と醤油で煮りゃあいいって分っちゃってるんです。筑前煮にするか、とか。最初から経験あるレシピで作っちゃう。そうすると、それなりの料理が出来るでしょ。でも、多分若いときは筑前煮というメニューを知らないわけですよ。レンコンにマヨネーズ付けてみたり、レンコンをかじってみたり色んなものを試してみたと思うんですよ。だからすごく失敗もしてるんです。レシピを作るまでに苦しむんですけど、時々美味しいのが突然出来たりする。「うわっ、美味しいこれ!!」って自分で感じたものを書いてたんです。でも長くやっているとレシピが増えちゃって、自分のなかでパターン化されて、失敗したレシピは捨てられていく。だから苦しめないんですよ。すぐに無難な答えが出てきちゃう。これはね、もう、戻らないです。無理ですよ、知ってしまったものを忘れるなんてありえない。だからほんとに戻れるものなら、もう一度、23歳ぐらいに戻りたいし。かといって、筑前煮だけ作っときゃいいやってなるんだったら、すっぱり芝居は引退したいし。だから、ほんとにまあ、ちょうど僕のなかでは中年の危機というかね(笑)。今、もう一度、筑前煮の鍋をひっくり返してレンコンに直接向かってやるみたいな気持ちにはなってるんですよ。

■でも、ベースはもうちゃんとある。

そうなんですよね。だけどね、その塩梅がね、難しいです、本当に。もうこれ全然取材じゃなくて個人のつぶやきですけど、ほんとにそこですよ。若い自分が悩んで書いた作品を、今の尺度だけを使って簡単に書き換えてしまっていいものかって。

■今でもきちんと悩んで書いてるんですね。今度は別の悩みになって。

自分で本当の意味で現役だと思えなくなったら、芝居はすぱっとやめようと思ってます。なんか、嫌なんですよ、昔あの人頑張ってたよねっていわれる人。そういう風になりたくないです。過去に良い作品があったっていわれてる人になりたくない。そうなったら、すぱっとやめて、画家になるとかね(笑)。そしたら一から出来るじゃないですか。もう一回新人になりたい、なりたいです。

■自分が新人になるのが好きなんですか。

新人はいいですよ。怖いものもないし。特にね、みんなに少しだけ知ってもらい出した時期って、あんなに気持ちの良いことってないんですよ。「えっ、土田さんって、あの、『MONO』でしょ? 聞いたことありますよ」とか言われて舞い上がって。「あ、そう。え? 知ってるんですか『MONO』を?」みたいな。……あの快感たらないです。
周りの状況っていうのは、もちろん自分では変えられないですけど、自分の気持ちだけは常に新人に近い状態において、戦わないとダメだなあと思うんですよね。

■昨年もたくさん本を書かれて。プロデュース公演も今年ありますけど。やっぱり劇団公演が一番ですか?

もちろんそうですね。その時々で、自分自身を確認する場所ですし。やっぱり僕、劇団の芝居が一番面白いと思うんですよ。それは何故かというと、自分が一番好きにやってる場所だから。劇団を見て判断して欲しい気持ちは常にありますね。

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■土田さんが本を書いて上演するまでの間で、一番大事にしてるというか、これだけは変えない自分の中の決めごとってありますか。例えば作品ごとにあるのか、劇団の公演としてあるのか。どっちでも良いんですけども、何かひとつだけ。そういえばこれは自分のなかで決めてたなとか。

役者に一番言いにくいことをきちんと言い続ける。それさえ言えれば、実は役者はちゃんと聞いてくれるし、芝居はそこから始まるんです。それを避けてやろうと思ったら続かない。そこを怖がって避ける人が多すぎるんですよね。
僕は演出能力はあまり高くないと思ってるんですけど、もし自分に人よりも少し、演劇を作る上で良いところがあるとすれば「基本をないがしろにはしないこと」ですね。
例えば、カラオケで歌を歌う。音痴な人に技術的に注意することは誰でも出来ると思うんですよね。でも、音程は合ってるのになんかいやらしい人っているでしょ。自意識過剰に歌ってる人。で、その自意識が邪魔だよっていうのは一番言いにくいことじゃないですか。これ実は演技も全く一緒なんですよ。芝居の上手い下手っていうのは、しゃべり方とか、間とか、そういう技術的なこともあるんですけど、「格好つけずにやる」ことが一番難しく、それを指摘することは、非常にしんどいことなんですよね。いつも悩んでる時は言いにくいことが言えずに悩んでいる時なので、それはどんな時でも必ず言うことにしてるんです。それを言わずに通り過ぎちゃうと、形だけは整いますけど、やっぱりお客さんに響くものにはならないと思っているので。まあこれは劇団だけじゃないですけど、劇団では特に、そんな部分をそのままにしておくのは嫌だなと思って。もちろん役者の力もあってですが、もしかしたらそこをないがしろにしてないことが、20年続いてる秘訣なんじゃないかなとすら思っているので。

■でもそうですよね、そういうところがちゃんとしていないと、表層的になっても

そうなんですよ。だから見かけが上手いことをあまり大事にしない。ということですかね。

■最後に福岡のファンへ一言お願いします。

僕にとってはほんと、福岡も京都もなくて。みんな仲良くね、楽しく良いことやろうよみたいな感じなんですよね。そのためにはやっぱり、自分の芝居がが面白くないと、逆に見捨てられちゃいますから。だから、そこはやっぱり頑張って。若い演劇人にも負けないように。最初の意気込みに戻りますけど。負けずに頑張りたいと。

■楽しみにお待ちしてます。頑張って下さい。

ありがとうございました。

 

 

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MONO 第37回公演
「赤い薬」福岡公演

【ぽんプラザホール】
■公演日/3月20日(土)14:00・19:00、21日(日)14:00
■作・演出/土田英生
■出演/水沼健、奥村泰彦、尾方宣久、金替康博、土田英生
 山本麻貴(WANDERRING PARTY)
■料金/ 3,500円 学生3,000円 *当日300円増(全席指定)
〈電子チケットぴあ Pコード〉400-020 ★Pコードクリックでチケット購入できます
〈ローソンチケット Lコード〉86371
 (財)福岡市文化芸術振興財団 http:// www.ffac.or.jp/
 ※未就学児童のご入場はお断り致します。