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左から山下晶氏、岩崎正裕氏、椎木樹人氏

大阪の人気、実力とも高い評価を受けている劇団太陽族が、今回、西鉄ホールの「grow up企画」として力を貸してくれることになりました。その太陽族に福岡から送り込まれる俳優は、グレコローマンスタイルの山下晶さん、万能グローブガラパゴスダイナモスの椎木樹人さん。福岡で頑張っている二人の役者が、岩崎作品にどう挑むのか、また、太陽族主宰の岩崎正裕さんは二人の役者をどんな風に迎え入れ、生かしてくれるのか、三人にお話を伺いました。

■まず岩崎さんに、今回の物語の着想を聞かせてください。

岩崎
今回舞台となるのは、神戸の新開地というところなんです。神戸の新開地というのは、近くに海があって、川崎重工という造船所が昔あった場所なんですよ。大正から昭和の初期にかけての時代、劇場とか映画館とかそういったものが立ち並んでいる新開地という地区があったんですね。今はものすごく寂れちゃってて、昭和の町並みがそのまま残っている部分と、震災でだいぶ壊れちゃってたのでm新しい建物が建ったりもしているんですけど、その新開地を舞台にしようとしているんですよ。時代設定は、1994年終わりから1995年の1月17日まで。阪神大震災が起こったのが、1月17日の朝なんですね。なので、その震災までの時間を描くということにしようと思ったんです。

■それはどういったことからですか?

岩崎
去年やった舞台「越境する蝸牛」が戦争状態になっている20年後の日本というのを描いたんですけど、今の時代、小泉政権から安倍政権に変わり、その流れで日本の社会がどんどん締め付けを帯びてきている様な感もあったわけです。それを割と直接的にメッセージ性も込めて、異議申し立て的なことをやったんですけど、ちょっと今、大阪の現状というのが、もう文化行政ズタズタなんですね。だからというわけではないですけど、お芝居で直接的に今の世の中にメッセージを発するというのを僕自身が、一度やめてみようと考えたんですよ。堂々巡りというか、埒が明かないというか、そんな感覚に陥ってしまったんですね。それでもやっぱり、人の営みをきちんと描きたいと思った時に、こんな世の中になっていった転換点もしくは分岐点となった時代ってどこだろう?と考えたら、バブル景気が1992〜3年で終って、震災以降オウムの事件なんかが起こって、どんどん今の世の中みたいな読み解き難い状況になってきたんだと思ったんですよ。その時期、人々はこれからどうなるんだろうってそれぞれに思っていたんじゃないかと。世紀末でそれぞれに不安もあって、自分たちの先行きも不安だけどバブルも弾けちゃってどうしたらいいんだ、という時に、もう一回、人間の本質的な信頼関係のようなものをあの時代に取り戻せていたら、今みたいな世の中にならなかったんじゃないかって僕は思った。だから、時代を1995年に定めて、明日震災が起こるかもしれないんだけど、懸命に生きる人々というの描きたいと思ったのが今回の物語の着想ですね。

今回、西鉄ホールのグローアップ企画で、山下さんと椎木さんに参加していただくことになったから、舞台を神戸に置いたんです。それは、僕自身の福岡のイメージは海で他と交流しているというのがあったので、神戸と福岡が海でつながっている様なイメージで物語をかけないかと考えたんです。なので、バブルが崩壊して福岡から仕事もなくなって身を寄せてきた人たちと、関西の人間との血縁も含めての繋がりみたいなものを、1995年の一夜を最後の場面にして、書こうかなというのが、今回の物語の中心になってきます。

■では岩崎作品に初参加のお二人ですが、それぞれに岩崎さんの作品の印象を聞かせてください。

山下
もともと僕は、いわゆる演劇畑というのではなく芝居をやっていたんですよ。高校も大学も演劇をやっていなかったですし、だからというわけではないですが、アングラでもないし、小劇場ブームというのにも乗ってませんし、芝居というものに対してあまり先入観がなかったんですね。でも、演劇というものってすごいテーマ性を持っていたり、ちょっと暗い部分があったりするものなのかなと思っていて、でもそれとは違うものをやっていこうと思って、僕自身は芝居をやっていたんですけど、岩崎さんの作品に出会って、こういう風に人々を通して考えが表現できるという事が、自分がやりたかったことでもあったので、すごく羨ましくもあったんです。それに、あ、やられたなっていう感じを初めて受けた作家さんだったんですね。社会派というのではなく、人間ドラマであって、その中で生きている人の滑稽さとか、一生懸命な姿とかがストレートに伝わるというのは素敵だなと思いました。

椎木
僕もそうですね。社会派と言うものではないと思っていたんですね。僕らが自分の劇団でやっている芝居というのは、あんまり世の中がどうだとかいうのとは少し違った、笑いだったり、人間の滑稽さだったりというものをやっているので、社会を描いているものに対しては、正直にいうとなんとなく難しいのかなっていう気持ちがあったんですけど、岩崎さんの作品を拝見させていただいて、別にそんな難しいことをやっているのではなく、その原点にあるのは人間ドラマであって、人間同士のつながりやぶつかり合いであって、そういう部分は僕らが作っているものと一緒なんだなと感じましたね。テーマが何だ、というのではなく、流れている芝居の面白みみたいなものに、とても共感できました。

■今回、グローアップ企画で太陽族に参加することが決まったときの感想は?

山下
まず、肉体練習はあるのかな?って(笑)リリパットアーミーⅡに参加させていただいた時には結構鍛えられたんで(笑)大阪ってそういう風潮なのかと。

岩崎
ま、そういうものが必要な劇団は、やればいいんですけど、うちは会話を積み上げてく方法なので肉体練習はあまり必要じゃないですからね(笑)だからやりません!柔軟はやりますけどね。

椎木
最初は、正直なところ、なんで僕なんだろう?って思いました。とても光栄なことだとは思っていたんですけど、僕に声がかかるってなんなのかな?って。その後にプロデューサーの中村さんから色々とお話を聞いて、あ、じゃあ僕がやりたいな、と思ったし、僕自身も役者として刺激を受けたいなと思っているから、きっと何か受け取るものが大きいんじゃないかという期待感でいっぱいですね。

■岩崎さんは二人の演技を観た印象はいかがでしたか?

岩崎
山下さんは、実はお若いんだけど、結構幅のある人間像が作れそうな立ち姿なんですよね。だから本当にこれから楽しみなんですよ。二枚目も出来るし、三の線のおじさんも出来るしっていうところかな。だから年齢が高い組で参加していただくとして、おそらく今回の舞台では、仕事がうまくいかなくて福岡から神戸に流れてくるという役どころにたぶんなると思いますね(笑)で、福岡で関わりがあった若者が椎木くんの役柄になるんじゃないかな。椎木くんは、舞台で観ていてすごく華のある役者さんだなって思ったんです。あと若いのに、若い人が舞台で出している独特の自意識とか未熟さみたいなものが無いんですよ。足がしっかり地について表現をしているぞ、という、いわゆる大物になる予感みたいなものを纏っている人だなって思ったんです。これは、うちの劇団の若い連中とやることによって、椎木さんに影響を受けてうちの劇団の若い連中もグローアップできるんじゃないかみたいな期待感も持てる存在感が彼にはありますね。

■では、その岩崎さんの期待感も含めて、太陽族自体も少し変わってくると思われますか?

岩崎
作品の雰囲気は変わるでしょうね。太陽族としては、ここは変わらないよねっていうところと、二人が参加したことで、へ〜こんな風に変わるんだっていうことが、いいバランスで出るんじゃないかと思っているんです。やっぱりずっと同じメンバーでやっているとマンネリ化しちゃうところがあるんですよね。しかも関西弁で僕が書いてるし(笑)そうすると何か新しいものが入ることによって、次の面白い展開が出てくるんじゃないかと、お二人に期待大ってところですね。でも作業を始めたら色々ありそうですけどね(笑)おいおい、こんなに勝手が違うものかっていうようなことも起こるかもしれないけど(笑)それも含めて演劇ですから。

■大阪でお稽古をして作品を作り上げていくことに対しては、今、どんな風に思っていますか?

椎木
僕はどちらかというと作品のストーリーももちろん関係ありますが、その土地(大阪)に入っていくというのは、太陽族の役者さんと一緒にその世界観を作っていくっていうことが、僕にとってはいちばん大事だなと思っているんで、そのストーリーやバックボーンに関しても色々と考えていきたいなと思うんですけど、それよりも役者として、そこにいる役者さんたちとどんな関わり合いができて、どんな繋がりが出来ていくのかっていうのが、すごく楽しみですね。

山下
僕もすごく楽しみですね。

■では、プロデューサーの中村さんにお聞きしますが、今回のグローアップ企画で、このお二人に声をかけた理由を聞かせてください。

中村
前回の太陽族の「だけど、ほらごらん」というお芝居を山下さんに観に来ていただいて、終演後にロビーで話を聞いたら「すごく面白かったです。来てよかった」って一言感想を言われたんです。その言葉が、それまでに私が抱いていた山下さんのイメージとはちょっと離れていたんですよ。山下さんというと、いつもはコメディータッチの作品を自分の劇団では作られているし、私は少し違う感覚で山下さんを見ていたんですが、こういう作品に心が震えたりするんだなって思った感じが、ずっと忘れられなかったんですよ。それから山下さんは太陽族を観に来てくれるようになったんですね。この企画を考える時に、次のグローアップ企画では男優さんにお願いしようと思っていたんです。その時にすぐ山下さんが頭の中に出てきて、その後すぐに岩崎さんの顔が頭に浮かんだんです。岩崎さんの作品の持つ少し切ない感じのお芝居の中に、観客としてきていただいていた山下さんに今度は出ていただきたいと。今度は、出演して震えてもらいたいと思ったんです。椎木さんは、イメージではこういう切ない感じではなかったんですけど、プロデューサーとしては作品の中に“意外性”みたいなものを狙いたいので、全くタイプの違う、そして今、福岡で若手のトップを走る椎木さんに太陽族の中に入ってもらいたい。元気でしっかりとした演技ができて安定感のある役者さんというのは福岡でもあまりいないので、そういう役者も福岡にいるんだっていうことを私自身が、大阪はもちろんですが、福岡じゃない人たちに気づいて欲しいと思っていたので。太陽族のお芝居にある“せつなさ”みたいなものが全くないお二人なので(笑)きっと福岡のお客さんもびっくりすると思うんですよ。この二人が切ない感じの芝居をしてくれると(笑)博多の小劇場にも色んな影響を与えて欲しいという思いもありますね。

■ちょっと、ここで個人的にというか、私が少し気になっていることを岩崎さんにお聞きしたいんですが。最近、取材をさせていただく作家さんや映画監督さんからよく聞く内容があって、それはバブル以降、世の中の変貌についてなんですね。そしてそれを大なり小なり題材にされているような気がするんです。今回の岩崎さんの作品にもそういう要素が入っている様なことを話されていましたが、それを題材に持ち込みたいと触発される何かがその時代にあったりするんですか?

岩崎
僕の場合は、もっとおおらかに人と関わりたいんですよ。それが、例えばタバコの自販機がタスポになったりするのもそうなんですけど、なんか世の中全体がおおらかじゃないような気がするんですよね。そういう小さな縛りみたいなものが、一時が万事、僕たちの生活を規制してきている様な気がするんですよ。そしたら、今度はそれを守らなきゃ、っていう人たちが増えてくるでしょう?そういうのが、なんか怖いなって思うんですよ。もっと人それぞれに自由度みたいなものがあって、相手に介入しながらも、お互い個人としては別だよね、みたいな事が、少なくとも僕が大学生の頃はあったような気がするんです。周りはバブルで浮かれてましたけど、僕は演劇をやっていたので、バブルの恩恵を受けずに来たんですけど、逆に、みんな浮かれてるなっていうのはよく見えていたし。その時にバブルの恩恵を受けずにスピリチュアルな方向に行った人たちがオウムの事件なんかを起こしているじゃないですか。なんかその時に、経済というものと人の心とか信頼とかを大事にする人たちが離れていきましたよね。あの時に二分しちゃって、あそこが分岐点だったんだなって、今、40代になって振り返ってみるとそういうことを思うんですよね。

■そう思うというのは、今世の中で起きている事件や政治情勢などをみながら感じられているんですか?

岩崎
そうですね。そう思いますね。たとえば、この間秋葉原で起こった事件も、あの犯人の人の話を誰かがちゃんと聞いてあげていれば、あんな事件は起きなかったよなって。地域のコミュニティーとかも含めて、劇団もそうですし、人と対面で何かものを作る事をやっていれば、人は閉じこもるという事はないわけですよ。僕は演劇万能主義を掲げていて、演劇をやっていれば、人はもっと人に優しくなれると思っているんです。その本質的な人との関わり合いみたなところにもう一度立ち戻らないといけないと思うんです。それは教育制度の問題とかじゃないと思うんですよ。もっとおおらかに世の中が進んでいかないかなと。人と接するという人間として当たり前の事ってすごく大事なんですよ。
でも、多くのアーティストの方々がそういうことを口にしているのだとすれば、それが時代の空気なんでしょうね。人とのつながりや人と社会のつながりに不安を感じている人が多いから、昭和ブームとかがあったりするんでしょう。

■ありがとうございます。
それでは最後になりますが、この作品に対しての意気込みをぜひ。

椎木
僕は、なんで芝居をやっているんだろうって考える時に、人との繋がりというか、舞台上でぶつかり合うことができるという、その部分にしかドラマは生まれないと思っているんです。それが出来ることが役者としてすごく面白いことだと。だから違う環境に行けば、行った数だけ人との出会いがあるわけで、そういう意味ではこれから大阪に行って、そこで暮らしながら、大阪の人たちと芝居を作るということは、僕にとっては面白い事だし刺激的だし。作品としてのドラマが生まれるということは、役者同士のドラマがそこに生まれているということだと思っているので、そういう出会いを刺激にして、それを作品に反映できたらいいなと思います。

山下
僕自身は社会や人とのコミュニケーションが苦手だったんですけど、こんな違う関わり方もあるんだって感じさせてもらえたのが太陽族の「だけど、ほらごらん」だったんです。そういう風に思えた作品を書かれた方と一緒にできるというのが、これほど幸せな事はないなと思っています。

岩崎
お二人に太陽族に入っていただく事で、お互いに化学反応を起こして欲しいんですよ。今まで一緒に芝居を作った事がないので、いろんな探り合いが起こると思うんですけど、みんなが、それがいい方に転がるんだと信じようとしていますから、そこから始まる芝居はきっとすごくいいものになる、ということを僕が信じていたいと思っています。それに尽きるかな。この二人とうちのメンバーで太陽族の最高傑作を作るんだってくらいのことは出来るよねって、ふわ〜っと世界新記録を出すくらいの感じで、自然体で力強くいきたいなと思っています。

 

 

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劇団太陽族「往くも還るも」

■公演日/8月16日(土)15:00・19:00、17日(日)15:00
■作・演出/岩崎 正裕
■出演/森本研典、南勝、岸部孝子、篠原裕紀子、前田有香子、田矢雅美、佐々木淳子、中西由宇佳、韓寿恵、小窪潔絵、米田嶺、左比束舎箱 /山下晶(グレコローマンスタイル)/椎木樹人(万能グローブガラパゴスダイナモス)
■料金/3,500円 ※当日300円増(日時指定・整理番号付・全席自由)
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