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倉持裕氏(主宰/作・演出)

今回、初の福岡公演を迎えるペンギンプルペイルパイルズ。主宰の倉持裕氏の作品は、これまで何度も福岡で上演されてきたが、自身の劇団での来福は初めて。ペンギンプルペイルパイルズという劇団について、新作「審判員は来なかった」の作品について、そして福岡での初公演について、また自身の演劇観についてなど、主宰の倉持裕氏にた〜っぷりインタビュー。

■倉持さんの作品は何度も福岡で上演されていますが、ペンギンプルペイルパイルズとしては始めての福岡公演ですよね。劇団として福岡でやってみようと思われたきっかけはありますか?

前から福岡ではやってみたいと思っていたんですよ。3年前にクリオネプロデュースの「パリアッチ」という公演は福岡で幕を開けたんですよ。その時、お客さんの反応がすごく温かくて、それもミーハー的な反応ではなく、純粋に自分達が楽しめる場所を見つけて楽しんでいるというような感じでとてもいい雰囲気だなと思ったんです。当時、僕自身も旅公演をやるのが、初めてだったので、“あ、東京以外の土地の反応ってこういう感じなんだ”と。その後神戸に行ったら、また全然違う反応だったんですね。その時に、土地によってお客さんの反応って全然違うんだなって感じたんです。それまでは、まず東京で認められなきゃっていう思いでやっていたんです。それで、少しずつ東京で認知されるに従って、その他の地方でもやってみたいと思う様になって、その中にいつも福岡は入っていたんですよ。一昨年と去年と大阪公演やって、今年、晴れて福岡でも公演をやれる様になったので、すごく楽しみですね。ホントはもっと前からやりたかったんですけど。西鉄ホールはその3年前の「パリアッチ」の時もお世話になっている劇場なので、劇団としては初めてだけれど、この劇場でやれてよかったですね。

■福岡初登場なので、ペンギンプルペイルパイルズという劇団について教えていただけますか?旗上げの経緯など。

ペンギンプルペイルパイルズは2000年に旗揚げなんですけど、僕自身はその前に96年プリセタという劇団を旗上げしたんです。それは僕が主宰ではなく座付き作家という形で参加していたんです。主宰はもと東京乾電池にいた役者が二人でやっていたんですけど、この二人が役者業が忙しかったので、96年に旗揚げしたのに、次の公演が99年だったんですよ。実は旗上げして3年間公演を打たなかったんですね。その時に、僕とその二人の主宰との予定を合わせながら公演を決めるとなると、なかなか公演が打てない。その時にこのままだと僕自身が、寡作といわれる作家になってしまうと思ったんです。もちろん、実力のある作家さんだったら、それでもいいんですけど、僕みたいな駆け出しの作家がそんなに長い期間、作品を発表しないんじゃ、なかなか日の目を見ないなと思って。とにかく公演を数打たなきゃって思ったんです。じゃあ自分で旗上げした方がいいやと思って、ペンギンプルペイルパイルズを旗上げしたんですよ。旗上げしようと決めたのはいいんですが、なんの実績もないのに、劇団員になってくれって役者さんに声をかける勇気もなかったんですね。だから最初は、こういうユニットを作ったんだけど、今回出てもらえないかっていうことで、公演の度に役者を集めたんですよ。
現在、ペンギンプルペイルパイルズの劇団員である小林高鹿は、大学時代、学生演劇をやっている時の後輩だったんです。彼は当時ナイロン100℃に入団していたんですけど、2000年にやめちゃったんですよね。ぼくもとさきこも同じ頃、遊園地再生事業団によく出てて、彼女も小劇場で人気が出だした頃に、遊園地再生事業団が活動休止になっちゃったんです。その時にちょうど僕がペンギンプルペイルパイルズを旗上げしようと考えていた時期だったので、いいタイミングだったんですよね。二人ともちょうど何もない時期だったし、もちろん素晴らしい役者だったから一緒にやりたくてお願いして、出てもらったんですよ。それがペンギンプルペイルパイルズを旗上げした経緯ですね。
一回目の旗上げ公演は阿佐ヶ谷スパイダースの中山祐一朗さんに出ていただいて、彼ら二人もいましたから、僕以外は当時小劇場界で人気の役者さんだったんですよ。だからすごく恵まれたスタートだったと思っていますね。それで2回目、3回目と小林くんにもぼくもとさんにも出ていただいていたんです。そうしているうちに、二人との共通言語がだんだん多くなってきて、芝居も作りやすくなってきていたし。普通は初めて関わる役者さんの場合、その共通認識というか、お互いの演劇感みたいなものをすり合わせるのに時間がかかるんですけど、この二人とだったら、稽古初日からそれが出来上がっている状態から始められるので先に進むのがすごく速いんですよ。作品を作っていく上で、その心地よいスピード感を感じた時に、やっぱり劇団員というのはいたほうがいいなと思って、4回目の公演の時に小林とぼくもとに劇団員になってくれないかという話をしたんですよ。

■そういう共通認識や言語がある自身の劇団で公演をやられる時と、プロデュース公演などの外部で作・演をやられる時と作品への向き合い方は違いますか?

まず、劇団の場合は当て書きができるという部分で、やりやすさはありますよね。それも、一歩進んだ当て書きができるんですよね。劇団員の事は知り尽くしているというか、散々観てきているので、何が得意で何が不得意か分かっているし、そうすると、これが得意だろうなっていうのはもちろん書けるんですが、この部分は不得意だけど、劇団員としてはそこも得意になって欲しいと思うと、あえて役者の不得意な部分を書いてみたりするんです。でも、ただ役者にだけ苦労させるんじゃなくて、不得意だと分かっていて書いたものでも絶対に良く見せなくちゃならないから、演出で自分自身も一緒に苦労できるんですよ。
それと自分の劇団だと観に来てくれるお客さんというのは、やっぱりペンギンファンが多くを占めていて、するとペンギンが、どういう芝居をやっているのかを分かった上で観に来られるんですよ。東京に関して言えば、ですけど。そうすると、これまでとは違ったものをやってやろうと思ったり、求められているものがあるのなら、それをやるというのもあるし、それは劇団員との関係性とも似ていて、劇団でやる芝居だと観客との共通認識というかコンセンサスがとれた上でやれるっていう良さもありますね。これはまあ、ともすると危険なんですけどね。でもそういうやりやすさ、作りやすさ、みたいなものは劇団にはありますね。
反対に外部公演となると、やはりこういう風にやって欲しいっていう何かしらのリクエストがありますしね。好きにやって欲しいっていうのはなかなかないですよね。何をやっても自由っていうのも逆に不自由になるんだったら、今回はコメディーをやろうよとかリクエストがありますから。また別の意味でのやりやすさもありますね。

■外部に書く事で、劇団に書く作品に影響はありますか?

やっぱり、ありますね。ペンギンっていうのはあくまでも劇団で僕が主催者なので、もちろん興行的な事も考えるんですよ。成功させなくちゃならないとか。外部公演というのは、そういう興行的な部分に関してすごくプロですからね。例えば台本打ち合わせで、もっとわかりやすくして欲しいというリクエストがあった時も、そこまで分かりやすくしなくてもいいんじゃないかって僕自身は思ったりもするですけど、プロデューサーのリクエストに応えて台本を直して上演してみると、やっぱりお客さんの反応がすごく良かったりするんですよ。あ〜そうなんだな〜って改めて思ったりするところも多いですね。僕がやらせてもらっているプロデュース公演って割とポップなものが多いんですよね。そういうポップさとか大衆性というものを外部で学んでる気がしますね。だから、そういう部分を劇団の作品にも少し反映させたりはします。あまり極端に大衆性に寄りすぎた事はやらないんですけど、芝居ってやっぱりみせるものですからお客さんを楽しませなくちゃならないと思っているし。そこさえ押さえておけば、少しマニアックなことを間に入れても、その5分後にはちゃんと楽しませられる部分を作れるんですよ。

■では、今回の物語の着想は?

まず、描く対象を広くしたいと思ったんですね。今までは家庭の話だったり、街の話だったりしたので、もうちょっと広くしたらどうなるのかな、と。じゃあ、一国の話はどうだろうと。あるアクションが与える影響というものが、今までやっていたものよりも、もっと強烈なものにしたいと思ったんです。絶対的な権力者というものを出すと、それに対して有無を言わせぬアクションをみせるものがいるとかね。そうすると物語の展開も早くなるんじゃないかとか、そういうものを試してみたかったんですよ。そういう展開のものをこれまではやったことがなかったから。自分がやっていなかった事を、次の作品ではやらないといけないなって思っているんですよ。これまでに誰もやってないというようなことを求めるよりも、自分がやっていない事をやる方が、近道のような気がして。もちろん保守的にならずに常に新しい事を求める事も大事だと思うんですよ。かといって、誰もやった事がないからといって、訳の分からない事をやるのもどうかと思うんですね。誰もやったことがないかもしれないけど、本当に自分はそれがやりたいのか?と思うようなものをやってしまったりするとダメだと思うんです。自分も本当にやりたいし、尚かつだれもやっていないことを常に探していかないといけないとはいつも思っていますね。その辺が今回の着想のひとつではあります。まだ自分がやっていないことをやってみたいという。

■今までよりもフィクション性が高そうですね?

そうなると思いますね。すごくファンタジックなものになると思うんですよ。今まではどちらかというとリアルを装ったファンタジーだったのが、今回はファンタジーで始まりますからね。まず、大統領がいるってことがすでにファンタジーですから、確かに僕としてはこれまでにない作り方ですね。

■キャストについて、客演に片桐さんを迎えられた理由はありますか?

片桐さんはポップでマニアックで、その両方をいいバランスで併せもっている方だと思っているんです。ラーメンズ自体がそうなんですよね。ポップなんだけれども、その一言では言い表せない魅力があるじゃないですか。やっていることは結構難解ですからね。僕としては見習いたいと思っている存在ですし。

■そういう部分も含めて、ペンギンプルペイルパイルズの作品を福岡のお客さんがどんな反応をしてくれるのか楽しみですね。

それが、旅公演をやる意味だと思うんですよ。去年、劇団で初めて大阪公演をやった時にも思いましたけど、東京だけでやっていると、盲目になっていくというか、裸の王様のようになっていくっていうのかな、さっき危険だって言ったのにも繋がるんですけど、客席とのコンセンサスが取れ過ぎちゃうと閉じていくんですね。解り合い過ぎてそこだけで完結してしまうのは良くないし、それはとても不健康な状態だと思うんですよ。それを健康な状態に戻してくれるのが、旅公演だと考えていて、初めて僕らに接する人にはこう見えるんだって事を、ちゃんと知っていたいんですよ。知っている上で、演劇というものをやっていきたいんです。コンセンサスが取れている状態というのは、決して悪い状態ではないんですけど、布教活動のようになっていってしまう危険性もあるんです。だから、今回の福岡公演はすごく楽しみなんですよ。やっぱり毒にも薬にもなることをやって行かなくちゃいけないんで、当然、こんなのヤダ!っていう人もいるし、すごく面白いと言ってくれる人もいるでしょうし、そういう全てを自分でちゃんと感じていたいですね。

■最後に初の福岡公演への意気込みをぜひ。

回り舞台を使ったり、役者が何役も演じ分けたりする演技の妙というのもみせていきたいし、演劇ならではの、映画やテレビでは見れないような舞台をやるつもりなので、ぜひご期待ください。

 

 

【西鉄ホール】
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ペンギンプルペイルパイルズ#13「審判員は来なかった」

■公演日/8月2日(土)19:00、3日(日)14:00
■作・演出/倉持 裕
■出演/小林高鹿、ぼくもとさきこ、玉置孝匡、近藤智行、吉川純広、安藤聖/片桐 仁
■料金/4,300円 ※当日200円増(全席指定)
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 ※未就学児童のご入場はお断り致します。