『演劇 LOVE』な、新しい再演。

「東京デスロック」という劇団を知ったのは、何年前だっただろう。小さな喫茶店で行われていた3人芝居。1人の人間の人格が次々と入れ替わるそれを追いかけて、頭の中が空っぽになった。次に観たのはギャラリーのような地下空間。紙に書かれた脚本が壁や天井に張り付けられていた。役者はそれを読んでいるのかセットのように使っているのかと色んなことを思いながら観た記憶がある。劇団なのだけれど、実は劇場でこの劇団の芝居を観たことはなかった。
“インスタレーションのような演劇をする集団”、それが「東京デスロック」のイメージ。

その「東京デスロック」が、初めて福岡で劇団公演を行うこととなった。主宰であり作・演出を手掛ける多田淳之介は、埼玉県の「キラリ☆ふじみ」の芸術監督に就任した後、そもそもの東京を活動の拠点としていたのだが、以来、活動の拠点を“日本”に置いたのだ。日本ということは、別にどこで演劇を作ろうとさして問題はないのだ。色んな地域に出向き、地元の人たちといっしょに演劇を作る。まさに『演劇LOVE』な活動を行っている。
そしていよいよ、2月18日(土)・19日(日)に福岡と北九州で『再/生』という作品を上演する。

今、多田淳之介が思う演劇とは、地域との繋がりとは、再演する『再/生』についてなど、ゆる〜い感じで話を聞いてみた。

 

■ まずは、『再/生』という作品について。初演(2006年)では集団自殺をする若者の死を繰り返すという短いスパンの作品を3回繰り返すというものでした。2006年の時代背景でいうとそういうことが頻繁に行われていた時代でもありますよね。それから6年経って、2012年。時代背景も人の感覚も、少しずつ変わって来た今、改めてこの作品を上演しようと決めたのはどうしてですか?

本当に2006年って若者の自殺や集団自殺が結構あった時期でした。ようやくインターネットというものが広がり始めたという頃でしたし。今のような規制も厳しくなかったですからね。そもそものモチーフが今の時代背景と重なっていないということがあるので、作品自体は初演時とはものすごく変わっているんです。
単純に自殺を3回繰り返すというものではなくなっているんです。もう少し色々なものが見えるというか。テーマというか、根底に流れているものは同じなんです。繰り返せないことだったり、繰り返さざるをえないことだったり。様々な要素が入ってきています。
時間はどんどん過ぎていくというテーマは同じなんですけれども。それが、2006年は例えば自殺することだったんですね。
今回の公演を決めたのは、震災の前だったんですけど、震災が起きてから特に、時間に対する考え方が大きく変わったのは事実です。東北の人はもちろんですけど、関東の人の生活もだいぶ変わったんです。
例えば、過去に戻ろう、過去を取り戻そうとすることだったり、取り戻せないことがあったり。進んでいるけど、不安のまま進んでいく状況だったりとか。“時間”に対する意識が相当強くなったんですよ。そういった部分は作品に色濃く出てるとは思いますね。初演の作品から自殺という部分を抜いた、というのはちょっと変なんですけれども、自殺を繰り返すという中から、それでも人生の中で時間が進んでいくんだという部分を、本作ではクローズアップしている感じですね。

■ 初演時の世の中の風潮と重ね合わせて、死を扱った作品だったものが、今の世の中は、特に震災以降、どちらかというと“生きる”ことに能動的なっていますよね。真逆な時代背景だと感じるので、それが作品ではどんな風になっているのかと。

全く、本当にその通りですよね。ですから、作品自体の見た目からして全然違うんです。初演時は照明などもなんとなく暗い感じだったんですが、全く違ったものになっていますよ。みんなで宴会をしていて、踊ったり歌ったりを繰り返す。そうすると、だんだん疲れてくるという。実は今回は、きっちり3回繰り返さないんです。途中で何回か戻ったり、戻って進んだりでするんですけど。構成はだいぶ変わりましたね。言ったらもう別の作品ですね(笑)繰り返される時間ということだけが残ってる感じかな。抽象度もかなり上がってますしね。

■ 大きく変えた1番の要因って何ですか?初演では0から10をリバースするわけじゃないですか。それを今回は途中から行きつ戻りつしながら進む。テーマ自体も変わっているんですけれど、その中の一番変わった部分ってどういったところでしょう?

最初は、同じことを繰り返す方向で作品を見直していたんです。でもやっていくうちに、なんだかしっくり来ない。もしかしたら自分がやりたいのは、これじゃないんじゃないかって思い始めたんですよ。実をいうと2006年辺りまで、うちの劇団は人が死ぬ話ばっかり作っていたんですが、『再生』を公演して以降、考え方が変わったというか。これをやってみて初めて、改めてポジティブに生きていくことの方がいいなと気づいたのかもしれません。僕自身もポジティブな人間になってきましたからね(笑)

■ 「再生」以降はオリジナルを書かずに、改めての再演ですよね。手直しながら新しく書くという事なんですが、なぜ再演にこの作品を選ばれたんですか?

これはかなり個人的な問題なんですけど、『再/生』の初演を作っている時って自分のことを不幸だなって思っていたんですよ。不幸というか、幸せではないと思っていたんですね。お金も無かったですし。なんか鬱屈としていたというか。「俺って不幸だな〜」って思っていたエネルギーで作ったような、感じがあったんです。若い時、特に20代のそういう時期って、みんなそうだと思うんですけど。30代の中盤に差しかかって、芸術監督もやらせていただいて、その中で公演も出来てきて、結構楽しく生活しているんです。結婚もしたんですね。なんか楽しく生活してるんですよ(笑)今幸せかもって思っている俺って大丈夫かな?って。幸せな時って作品をちゃんと作れるのかな?大丈夫かなみたいな(笑)

■(笑)確かにモノをつくる人は飢餓感が不可欠ってよく言われますからね。

そう。ハングリーさみたいなものが無くて大丈夫か?みたいな(笑)僕の作品の中でも『再/生』は最も不幸度が高いんです。すごいギュッと不幸度が詰まってる気がして。今の状態でもう一度この作品を作ったら、どんなものが出来るんだろうなって思って。それは結構大きなきっかけではありますね。

■ 現在の多田さんは日本の色んな地域に行かれて作品作りをされていますよね。それって土地に合わせるというか、その土地の空気感みたいなものを反映されていくんですか?

僕はツアーする時に、劇場によって作りを変えるというか、客席と舞台の距離によって構成を変えたりするんです。同じ作品でも場所が変わると、全然見え方が変わるので、同じことをやっても同じものにはならないんですよ。だからこそ、同じように感じ取れるようにする為に、劇場によって違うことをするという感じですね。
今回も一番考えてるのは、劇場とお客さんとの関係をどう結ぶかっていうことです。この『再/生』で伝えたい事を出来るだけイメージしながら劇場とお客さんに合わせた作り方をしようと思っていますね。
タイトルにスラッシュを入れたのは、時間的に再生できないっていう意味でのスラッシュでもあるんですけど、人と人も分断されているっていうことを感じてもらうことも結構大事なんです。同じ日本に暮らしていても、やっぱり今の東北や関東と西日本では意識が分断していると思うんです。それが悪いということではなく、意識が分断されているという事実をお互いに認めた上で、どういう風に同じ時代を一緒に生きていこうかっていうのを、作品に反映できたらいいなと思いますね。

■ 多田さん自身も、随分状況が変わっているわけですね。現在活動されているように、その土地の人と演劇をやってみて、やっぱり演劇って楽しいみたいな、『演劇LOVE』に立ち返るものって何ですか?

やっぱりお客さんですね。色んなお客さんに出会えるということは、大きいですね。うちの劇団も拠点は“日本”と宣言したので、日本全国で活動してるんですよ。色んな土地で、その地域の人たちと作品を作っていると、日本の演劇に関わっているなっていう感じがすごく強くなってきたんです。僕は今、福岡にいてワークショップをやっていますけど、この後は、それが福岡のアーティストに伝わっていけばいいなと思っているんです。日本で今起きている、演劇で起きていることに参加したいなってすごく思うようになってきましたね。

■そんな『演劇LOVE』な多田さんが作る『再/生』って、どんな風に楽しんだらいいと思いますか?

この作品は、ほとんど会話がないですし、ただ体を動かし続けるんです。作品自体のテーマとしては“時間”であったり“死”であったり“生きること”であったりもするんですが、そういった普遍的な内容だからこそ、難しく考えずに観られるんだってことを上手く伝えられるといいなと思っています。演劇の原点みたいなことをやりたいなとは思っていているので、人がいて、それを人が観るという風に単純に感じてもらえたらいいですね。同じ空間を人として共有するっていうことで言えば、現代美術とかに近い感じだとは思うんです。インスタレーション的な作品ですの、気楽に観て感じて欲しいですね。

 

【ぽんプラザホール】
■2月18日(土)19:00, 19日(日)19:00

■演出/多田淳之介
■ 出演/夏目慎也、佐山和泉、佐藤誠、間野律子(以上東京デスロック)
石橋亜希子(青年団)、坂本絢
■ 料金/
一般前売・予約2,500円 当日3,000円
学生前売・予約2,300円 当日2,800円
50歳以上前売・予約2,000円 当日2,500円
【問合せ】(財)福岡市文化芸術振興財団