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この「錦鯉」は、作・演出の土田英生が自身の劇団のために2000年に書き下ろした作品を北九州芸術劇場のプロデュース公演として再演となった。
「ルール」に縛られた人々が張りつめた状況の中に陥った様子、認識のズレから生じる会話、それぞれの思惑を軽快なテンポで描いたコメディーだ。

芝居は客が入って初めて完成するもの。
私はこの「錦鯉」を、プレビューと初日の公演を観ることができた。


今回初舞台を踏むヒロシ、主役を演じる鈴木一真、土田の芝居を知り尽くした水沼健、名実ともに高い演技力を誇るたかお鷹など、他にも個性溢れる面々が揃い、それぞれが見事にひとつになった舞台となっていた。
初日に完璧な芝居を観られることが一番いいに決まっている。演出家もそれを望んでいるはず。だけど、私は成長していく作品があってもいいと思うのだ。それを目の当たりにする機会などめったにないのだから。
ひとつ言えることがある。大御所の役者が主役を張る大きな舞台にも勝る何かが、この芝居にはあった。
“芝居全体の一体感”だ。
こればかりは、役者のモチベーションが相当に高い位置で一致しないと絶対に無理だ。それを作りだしているのが、作・演出家、土田の言う会話の“間”ではないだろうか。プビュー公演もさることがら、初日の公演は格段に面白くなっている。その違いはなにか。お客さんの存在だ。この芝居は成長していく芝居なのだと感じた。明日はもっと面白い。芝居自体も若き日の土田が求めていた“おもしろさ”とはまた別の“進化したおもしろさ”を持つ今の土田の芝居が、そこにあった。全てに計算し尽くされた芝居なのに、観る側にはそれを微塵にも感じさせない“軽さ”がある。それは役者たちの作品への理解が深い証拠だろう。プレビュー公演後、土田氏に話を聞いてみた。
「芝居としては、まだまだだと思っている。ただ、いい役者さんに恵まれたので、一体感のあるカンパニーになっています。みんなそれぞれが真摯に役に向き合ってくれている。これから面白くなりますよ」と。きっとこの人は自作のどの公演においても100%満足することはないのではないかと思う。まだ何かある、まだ面白くできる、そう思っているに違いない。
プロデュース公演という新たなチャレンジと大きなプレッシャーを受けて、彼が出した答えを見逃すわけにはいかない。
願わくば、ツアー千秋楽は北九州でやってほしいものだ。
今回の公演も5日まで。観てない人は急いで。

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【北九州芸術劇場/中劇場】
「錦鯉(にしきごい)」
■公演日/11月3日(金・祝)13:00、
     4日(土)13:00、18:00*終演後アフタートーク有、
     5日(日)13:00
■作・演出/土田英生
■出演/鈴木一真、田中美里、ヒロシ、笠原浩夫、木南晴夏、水沼健、有門正太郎、たかお鷹
■料金/5,000円(全席指定)※当日500円増
〈電子チケットぴあ Pコード〉368-168
〈ローソンチケット Lコード〉86066