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博多座での公演が一ヶ月後に迫った「ブラッド・ブラザーズ」。イギリスでは今でもロングラン公演が行われているというミュージカル。昨年、東京公演では口コミで評判を呼び、連日人気を博した作品。この作品でナレーターを演じる下村尊則さんに、作品の魅力や見どころなどをインタビュー。

■「ブラッド・ブラザーズ」は1987年が初演でこれまで27年間続いている作品ですが、昨年東京公演で演じられてみて、どういったところにロングランされる魅力があると感じられますか?

共感じゃないでしょうか。イギリス人の持っている社会に対するクラス感ということや貧富の差だったりが、ずっと今でも有り続けている。それは日本やアメリカではわかり得ない根付いたものなんですよ。僕らの想像を遙かに超えるようなね。例えばプールなんかでも階級によっては入れない人もいるらしいんですよ。そういう歴然とした格差社会の中のことと、リヴァプールのビートルズのサウンドとミックスされてロンドンの人の心を離さないんだと思いますね。

■日本には階級社会というものはハッキリとしたものは無いと思いますが、日本で受け入れられている部分とはどういう所だと感じられていますか?

今の日本には、格差社会というものはありませんけど、この不況が必然的に格差を生み出しているのかもしれないなとは感じるんです。そういう意味では、日本の観客も外国の話だとは捉えずに、観られる作品なので昨年の東京公演ではたくさんの方々に支持をしていただけたのだと思う部分もあります。
たとえば、これをバブルの時代に上演していたら、もしかしたらあまりヒットしなかったのかもしれませんね。今の日本の現状とこの作品の根底に流れるものがリンクしたのが「ブラッド・ブラザーズ」にはあったんだと思います。本当に今の日本にジャストな作品だと感じますね。
この物語は、ただ外国の話ということではなく日本でも充分に考えられることだし、本当に身近に感じられるミュージカルだと思います。ファンタジーではない、ヒューマンなドラマなので。

■ビートルズサウンドも用いられていて、音楽もとても素敵だと思いますが、下村さんの一番好きなシーンはどこですか?

長い長い日曜日というミッキーが歌う歌があるんですけど、エディと血が繋がっているのを知らないのに惹かれていて、彼が引っ越しをしたことでとても孤独を感じながら舞台をとぼとぼと歩くシーンがあるんですけど、そこにすごくドラマを感じるんです。その歩くテンポとスピード感はミッキー役の武田真治さんが自然にやられているのか計算して演じているのかはわからないんですけど、ものすごく彼の後ろにある色んな感情みたいなものが見えてくるんですよ。そのシーンは僕の中でとても印象に残っていますね。
あとやっぱり最後にみんながこの出来事はマリリン・モンローのような話だよねって、悲しいんだけれど高らかに歌いながら、それでも自分たちは前進しようっていうスピリッツを客席に届けるシーンがあるんですけど、この物語は悲劇なんだけれど希望に満ちた世界が広がっているように感じられるラストシーンがとても素敵ですね。

■最後はハッピーな方向に向かうんですか?

幸せというよりは、人間はどんなに苦しくてもやっぱり前に進まなきゃねって気持ちになるんですよ。
実はこの作品は、普段ミュージカルを観ない方が、これを観てミュージカルが大好きになったというほどの作品なんですよ。それくらい人を惹きつける魅力があるんですよ。

■その魅力ってどこにあると思われますか?

なんでしょうね。作品として受ける印象はストレートプレイなんですよね。音楽も劇場を出たらつい口ずさんでしまうような名曲ばかりなんです。でも一番はやっぱりドラマでしょうね。それが作品の大きな軸となっていて、歴史的な社会背景と今の日本の現状がシンクロしていたりもするので、リアルさも持ち合わせている。そういった色んな要素が隙間なく詰まった作品になっているんだと思います。

■下村さん演じるナレーターというのはどういった役どころですか?

まず最初に出てきてストーリーを言っちゃうんですよ。いわゆる狂言回しなんです。この物語の要所要所で、色んな格好に扮しながら。参加型のストーリーテーラーですね(笑)時には大道具小道具などもやりつつ、不思議な存在のストーリーテーラーですよ(笑)

■7役も演じられるそうですが。大変ではないですか?

そうなんですよ。結構大変なこともありますね。例えば、エドワードが通う品行方正な学校の先生から一転して、公立のあまり風紀の良くない学校のやる気のない先生にパッと舞台上で早変わりしなくてはならない所とかは切り替えが大変ですね。それからまた瞬時に不吉な予言をするナレーター役に戻ったりしなくちゃならないんですよ。演じていて面白いんですけど、ちょっと大変ではありましたね(笑)とにかく色んな意味で忙しいんですよ。今まで色んな役をやってきましたが、これだけめんどくさい役は(笑)あまりないなって思いましたね。

■その7役の中で一番フィットする役どころは何でしょう?

人それぞれにどの役がよかったか言われたりもするんですけど、僕自身は産婦人科医の役が好きですね。個人的に医者の役を以前にやっていたので、なんとなく白衣を着る感じが好きだなと(笑)

■イギリスの迷信がいくつか引用されているそうですが、日本ではないけれど共感できるようなものがありますか?

鏡が割れるっていうのはありましたね。日本でもそうですけど、自分を映すものが割れたら土に埋めなければいけないとかね。

■下村さんご自身は迷信を信じられる方ですか?役者さんはそれぞれにご自分の迷信みたいなものを持っていらっしゃる方も多いみたいですが。

でもそれはやっぱりありますね。
劇中に出てくる迷信で「カササギを一羽で見ると不幸の前触れ」というのがあるんですけど、カササギっていうのは群れでいるものなんですけど、一羽でいると不幸になるっていうことなんですね。似たようなことで「ロンドン塔のカラスがいなくなったら大変なことが起きる」っていう迷信もあるんそうなんです。

■イギリスの演出家、グレン・ウォルフォードさんの演出を受けられていかがでしたか?

いや〜大変でした(笑)これは僕もびっくりしましたね。稽古は普通本読みから始まることがほとんどですけど、本読みは無くていきなり立ち稽古からだったんです。まずは台本は憶えなくてもいいのでストーリーを体験することから始めましょうと言われて稽古が始まったんです。いわゆるワークショップですね。お芝居とは一見関係なさそうなワークショップを最初の一週間はやりましたね。僕自身はこれまでに台本がなくてエチュードから始める稽古をあまりやったことがなかったので、共演者のみなさんも最初は戸惑っていたようですが、その中でも僕が一番戸惑っていたんじゃないかと思います(笑)

■日本の演出家の方との大きな違いはありましたか?

僕自身は海外の方の演出もいくつか受けていますけど、彼女の場合はこの作品を日本で上演するときに、地方公演も含めてこれまで3回の上演は全て違う演出をされているんですよ。よく演出家の方は、どんな演出を付けたかメモを残していることが多いと思うんですけど、彼女は書き留めたりせずに、自分の中に印象的に残っている部分だけは同じ演出を付けるんですけど、あとはその時々で自由に俳優に演じさせて、いい部分はそのまま採用したりするんです。だから俳優自身がクリエイティブに作品に参加していかないと、形にならないという印象は受けましたね。

■俳優さん達が受け身であっては作品が出来上がらないんですね。

そうなんです。俳優達が自由に感じたままを演じてみて、いいと思ったらそれを取り入れる。だから積極性がないとダメだなとは感じましたね。

■共演者の方についてお聞かせください。

武田真治さんはすごい探求心というか舞台へのこだわりがすごいなと思いましたね。僕もこだわるタイプなんですけど、ちょっと圧倒される感じはありました。鈴木亜美さんは天真爛漫で舞台上を自由に生きていて、すごいなと思ったり、レイザーラモンさんは自己解放の仕方がとても素晴らしくて見習いたいですね。それぞれ共演者の方々はみなさん個性というか長所をたくさん持っていらっしゃるなと思います。とてもいいカンパニーですね。

■この作品は下村さんが劇団四季を退団されてから、初めて舞台に立たれた作品ということですが。

やっぱり今までずっと劇団員という立場でしたけど、独立した“個”の、自分たちの世界をもったそれぞれの歌手だったり役者さんだったり、色んな分野のスペシャリストが集まっている中に入ったわけです。そういうスペシャリストたちの個のぶつかり合い、というものに最初は少し戸惑いましたけど、でもそれがひとつになったときにはすごいパワーを持つんだなと思いました。それはとても素敵なことだと感じましたね。出会いということが、劇団員時代にはあまりなかったので、カンパニーごとに新しい出会いがあるというのはすごく嬉しいですね。

■今回はまた博多座との新しい出会い、がありますがいかがですか?

いつも観に来ていた側だったのでね(笑)うれしいですね。こっそり舞台の上に立たせていただいたんですが、思っていたよりも自分が客席を包み込む感覚があったんです。拝見する前は劇場が大きすぎて舞台上から客席の隅々まで届かないんじゃないかなという想像はしていたんですけど、そんな感じはなかったのでそれは嬉しい誤算でした。

■最後に、この作品のいちばんの見どころはどこでしょう?

ミッキーやエディ、リンダもそうですけど8歳の頃を演じるところから始まるんですよ。みなさんホントにさすがだ、と思うほど子供にしか見えないんですよ。子役以上に子供でしたよ。半ズボンをはいていてね(笑)8歳の子供に見えるんですよ。ここは見どころですね。生きるエネルギー、ファイヤーパワーを感じていただきたいです。

 

 

【博多座】
ミュージカル「ブラッド・ブラザーズ」
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■公演日/4月22日(木)〜28日(水) 
■脚本・音楽・作詞/ウィリー・ラッセル
■演出/グレン・ウォルフォード
■出演/武田真治・藤岡正明(Wキャスト)、岡田浩暉・田代万里生(Wキャスト)、鈴木亜美、金志賢・TSUKASA(Wキャスト)、杜けあき、下村尊則、伊藤明賢、小鈴まさ記 ほか
■料金/A席 12,000円、特B席 10,000円、B席 7,000円、C席 4,000円(全席指定)
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 ※未就学児童のご入場はお断り致します。