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左/高原綾子・右/ごまのはえ

今回で5回目となるニットキャップシアターの福岡公演がいよいよ迫ってきました!普遍的なテーマをシニカルな笑いに変えるごまのはえ氏にインタビュー。今回は、昨年京都・東京での公演で好評を博した「クレームにスマイル」を再演。
プラットホームで繰り広げられる事故によって、にょきにょきと現れるクレーマーたち。彼らが向かう先は、現実なのか幻想なのか!?果たしてあなたは、どのタイプのクレーマーなのか?見所がいっぱいのニットキャップシアター「クレームにスマイル」。見逃す手はないぞ!!

■この作品は、初演が2008年で、好評につき今回全国をまわるということですが、好評だった要因ってなんだと思いますか?

「クレームにスマイル」という作品は、前半はシチュエーションコメディーとしてやっているんですけど、後半はそこから脱臼するかのごとく幻想世界に入って行くんです。ですから前半を見ていて、中盤からあんな風に展開するとは思わなかったっていう方がすごく多かったんですよ。そういう予想を裏切られたという気持ちが面白がっていただけたんじゃないかなと思うんです。

■それはリアリティーの中と繋がっている妄想なんですか?それともファンタジーなんですか?

僕からすると必然的にそうなったんですよ。物語は、とある駅で人身事故が起きて、電車が来なくなった。それで電車が来なくなった事に対して怒る人たちの語なんです。怒りというものって、普段は人が抑えている性格が、ずっと“待たされる”という状況によって、段々露呈してくると思うんです。その人たちがその事故をきっかけにクレーマーに段々なっていって、クレーマカーからさらに獣になるといいますか、もう社会性をなくしていくというか。。。

■それは人間としての社会性がなくなっているってことですか?

クレーマーですから、自分の言っている事を、理路整然と喋るんですよ。そういう意味ではすごくまっとうなんですけど、要するに思い通りにならないと言う怒りが、もう完全に振り切れてしまう。時を同じくして、幻想の世界に漂流して行く、というのが舞台上で起こるんです。人々の怒りというかクレーマーとしての暴走が、現実と幻想の境を破ってしまうんです。そういう必然なんです。

■それは同じ舞台上で行われるんですか?

そうです。

■とすると、その必然として行われる幻想の世界もプラットホームで行われているんですね。

人身事故で電車を待つというのは、しょっちゅうありますしね。それと、まだこの内容を台本にしようと考えていない時に、駅でずっと待たされた経験があって、やっと電車が来たかと思ったら窓が壊れていたんですよ。で、車椅子の方が事故に遭われたって聞いて、さっきまで怒っていたというか、電車が来なくてイライラしていた自分と、人が亡くなったってことで一瞬で気持ちが変わってしまったんです。そういう気持ちになること自体に、惹かれていったんです。

■不思議ですよね。同じ人間なのに一瞬にして真逆の感覚を持ってしまうって。

そうですね。そういう事って、題材として取り上げるのが、いやらしいとは思うんですけど・・・。

■それどうしてですか?いやらしい?

なんでしょうね。誰もが抱えているちょっと気にしているけど、突っ込んでふれて欲しくはない事じゃないですか。ですから過剰に反省しすぎず、人が一人亡くなったという現実を受け止める。自分とそんなに関わりのない人の死に遭遇した事故だとしても、それを普通に受け止めて行かないと生きていけませんから、普通に受け止めて行けるようなお芝居にしたいなと思ったんです。

■そのちょっとヘビーな内容を、ごまさんが書くからにはコメディーになるんですよね。それをコメディに出来るものなんですか?

コメディーって目線のあり方だと思うんですよ。ですから目線のあり方次第でコメディーにもなりますし、悲劇にもなるんです。

■そういうナーバスな題材をコメディーにする時っていうか、それに限らず、ごまさんってコメディーの世界とはちょっとかけ離れていそうな題材をコメディーにされるじゃないですか。それって何きっかけなんですか?どこで「あ、これ面白いかも?」ってスイッチが切り替わるんですか?

多分、体質的にコメディーになりやすいんだと思うんです(笑)

■全ての事が?(笑)

よく、カラスのフンが落ちてきやすい人とかいるじゃないですか(笑)それといっしょだと思うんですよ。そういう体質なんです(笑)マジメになるほど、からかうようにカラスのフンが落ちてくる(笑)だからあんまり悲劇に真っ直ぐ向き合えないですね。すぐに茶化してしまう目線が体質的に備わってる(笑)

■視点が違うんでしょうね。

なんでしょうね。酔えないっていうのはありますね。

■では、この作品の面白さというか見所ってどんなところでしょう?

クレーマーがいっぱい出てくるんです。駅で電車を待たされるお客さんもクレーマーですし、事故の状況が全くわかっていない駅員も、会社のシステムの中にポンと放り出されたような人だったり。他にも色々と幻想の世界に突っ込んで行くんですが、そこは銀河鉄道の夜の駅のような、死後の世界の駅と繋がってしまうんですよ。そこの駅員とか、その駅のお客さんとかも出てきたりして、みんながみんなシステムの中で、自分の工夫とか責任とか裁量とか、そういうものをあんまり発揮しないというか(笑)右から来たものを左に送るだけの、いや、それ私に言われても・・・っていうような人ばっかりで。だからそういうストレスを・・・まあそれは本人が悪いと言えば悪いんですけど、そういう中で駅員はお客さんにクレームを言われて、「俺に言われても困るよ!!」っていう重たい気持ちを、また別の人にクレームを言って、みたいな(笑)クレームの数珠つなぎみたいな感じです。そういうクレームなるものの構造と言うか、クレーマーたちの生態とかが出てくるんです。でも、誰一人、性格が異常な人は出て来ないんですよ。普通の人が、理不尽に待たされる事によって本来の性格があらわになっていくんです。

■窮地に陥って、その人それぞれの本質が出てきてしまうんですね?

そうです。そういうところが面白いと思います。

■そういえば、今回劇団員の方が増えてますよね?

前回福岡で「愛のテール」をやった時よりは増えていますね。そのときは3人くらい客演の方にお願いしていたんですけど、今回は全員劇団員でやってますね。

■でも前作が2008年で、再演が今年ですよね。再演をするにはサイクルが早いなと思ったんですけど・・・。

ちょっと前に、劇団員だけでお芝居をやって行こうと決めて、今、コント公演も含めると、これまでに4回、劇団員のみの公演をしているんですよ。本公演2回、コント公演2回。前作の「クレスマ」が一番最初に、劇団員だけでやった公演だったんです。それを京都公演と東京公演と二カ所でやって、東京公演が後だったんですけど、後に行くほど作品自体が良くなっていったんですよ。そういうこともあって、どんどん新作を作って行くよりも、半年強くらい前のことを確認するような気持ちで、もう一度この作品をやってみようと思ったんですよ。

■今回コント公演もありますよね。これはコント講座を公演の一ヶ月前に、福岡でやられてましたが、これは何きっかけなんですか?

高橋
ごまさんには、もう何度かワークショップをやっていただいていて、前回のワークショップが受講希望者が多かったんですよ。その時にワークショップとしては人数が多すぎんですね。それで、もう少し作品を作り上げて行くような場に立ち会いたいという参加者がたくさんいらっしゃったので、それも踏まえて、作品を作り上げて行く形のワークショップをこちらからお願いしたんです。

■参加されたのは一般の方ですか?

ほとんど福岡の劇団員の方でしたね。

■やってみられていかがでしたか?

なんというか、合いましたね。今回の受講生の方の名前を見て、知っている方も何人かおられたんです。前もって、短いコント台本を20篇くらい用意して行ったんですよ。それで初日に参加者の顔をみて、この配役でとキャスティングしたものが、全て一発ですんまりはまったんです。関西弁で書いている戯曲なので、そういう言葉の壁もあったと思うんですけど、すっきりハマりましたね。

■その公演もツアー中にやられるんですよね。お稽古とかはどうするんですか?

ワークショップの期間中と、あとは参加者同士で台詞合わせをやっていてもらって、ニットキャップシアターの公演前に僕が福岡に入ってまたお稽古をして自分の公演中にも稽古するんですよ、実は(笑)でもニットキャップのコントは京都では定期的にやっているんですけど、それを福岡でしかも地元の方々とやれるというのはすごく楽しみですね。

■もう毎年、福岡にも来られていて、キャストの方々もごまさんも福岡には慣れたんじゃないですか?

でも京都でお芝居しているときも福岡でお芝居しているときも、お客さんの違いも当然ありますけど自分の中の意識の変化はあまりないですね。ごくごく自然な状態でやらせていただいてますね。

■福岡のお客さんはどうですか?反応とか。

ニットキャップの明るい部分というか、乗れる部分っていうのをすごく引き出してくれるなって思いますね。たぶん京都だけで公演をしていたら、うちはもしかしたら、前衛劇団になっていたかもしれないですね(笑)

■今では京都、大阪の地元を始め、東京や名古屋、福岡と、少しずつ公演する場所も増えて行っていますが、ツアーをする事によって劇団の性質とかは変わってきますか?

変わってきますね。京都でやると劇団員の知り合いが来てくれるとか、一公演にそういう方が10人くらいはいるんですよ。初めて福岡でやらせてもらった時は、客席に全く知り合いがいないっていう状況が、すごく新鮮でしたね。よく考えると、そういうことって、初めてのことだったんです。学生の頃から、今日は先輩が観に来るとか、よく笑う先輩とか良く笑うお母さんとか、そういう人がいるかいないかで、公演の空気感が変わってしまうんですよ。「今日はウケたな〜」とか言うと、「◯◯先輩が来てたからや」とか言われると、作っている側としてはちょっとガッカリするじゃないですか(笑)

■知らないお客さんだと、笑いの予測がつかないですよね。

だから初めて福岡で公演をした時に、今日は客席に誰も知り合いがいないんだな〜っていうのは不思議な感覚でした。緊張もすごくしましたけど、時間に迫られるというか後押しされて行く中で、何かすがるものが欲しいけどすがりすぎても逆にダメなのかな、とか思いながら待つだけでしたね。そういう中で、回を重ねるごとにだんだん福岡にも知り合いが増えてきて、別の土地でもそういうことがあって、だから来るごとに楽しいですね。

■そういう経験というのは、本を書く上でプラスになったりするんですか?それともごまさんの世界観はそれとして別のものだったりしますか?

これは年齢も関係しているのかもしれませんけど、上演してもらえるような台本を書きたいと思う気持ちは強くなってきましたね。

■今までは自分が表現したいものだったんですか?

そうですね、演出とくっついているような台本でしたけどね。

■それって大きな変化ですよね。

そうですね。前作の京都でやった作品を観てくれた劇作家仲間の友達とかは、すごく変わったって言ってくれましたね。上演してもらえる台本だね、みたいなことを言ってくれましたね。

■理由は聞かなかったんですか?

それは実は自分でもわかってたんです。登場人物一人一人に多面性があるというか、人が行き交うみたいな台本になっていたんです。それまでは、一人の人間を掘り下げる事の方が強かったんです。そういう変化はありました。それはやっぱり、いろんな場所でいろんなお客さんに観ていただけたから、そういう風になっていったのかなと感じてますね。

■では、そんな日々変化し進化しているごまさんからの、福岡公演への意気込みをお願いします。公演数も毎回増えて行ってますね。

次、6回目の公演ができるように頑張ります(笑)でもまだまだたくさんの方に観ていただきたいので、ぜひ劇場にお越し下さい!
コント公演もまた別の面白い作品になっていますので。ぜひ!

 

 

【ぽんプラザホール】
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写真/ニットキャップシアター 第24回公演 「クレームにスマイル」 2008年秋
   撮影:竹崎博人

ニットキャップシアター 第26回公演
「クレームにスマイル 2009」

■公演日/10月1日(木)19:30◎、2日(金)19:30、3日(土)14:00、4日(日)13:00・17:00
■作・演出/ごまのはえ
■出演/大木湖南、ごまのはえ、安田一平、市川愛里、高原綾子、門脇俊輔、澤村喜一郎、織田圭祐、藤田かもめ、森下実季
■料金/2,800円(全席指定)*当日200円増
 学生:2,500円 (前売・当日共、当日要学生証)
 高校生以下:1,000円 (前売・当日共、当日要学生証)
 ファーストスマイル:2,500円
 ◎10月1日19時半のステージ限定で、一般料金が前売・当日とも2,500円になります。
 ・ニットキャップシアターホームページ 特設サイトチケット予約
 http://knitcap.jp
 メガチケットアートリエ(店頭販売のみ)092-281-0103