シアタービューフクオカで絶賛連載中のハイバイ・岩井秀人氏のコラム「岩井の好きな映画」。本誌と併せてお楽しみください!

ハイバイ・岩井秀人コラム【岩井の好きな映画】vol.27 「霊感少女ヒドミ」による映像体験

ずばり言いたい。全然映画を見ていないと!
が、映像にちなんだ体験ならしている。我が劇団ハイバイが現在(10月末日)やっている「霊感少女ヒドミ」は、上演時間の全て、映像が出しっ放しの公演だ。さらにいえば、客電以外の照明はいっさい使っておらず、俳優に当たる照明もプロジェクターによるものなのだ。これを初めてやったのが2006年。当時まだデスクトップのMacのG4が出たばかりで、ウハウハ言いながらそれを買い、半ばノイローゼになりながら映像編集をした。この「ヒドミ」は、プロジェクションマッピングという、いわゆる「部屋の映像を撮影し、その映像を実際の部屋にぴったりと合わさるようにプロジェクターで映し出し、それをまた撮影し、、」というような手法で、ケラさんの舞台とかでよく使われている。例えば部屋におばさんが一人立っている映像を撮影し、部屋からおばさんをどかして、誰もいない部屋にその映像を映し出すと、当然映像のおばさんが投影される。だけど、実際の部屋の壁のガラがおばさんの向こうに透けているので、「存在」というものが「ハーフな存在」になったりするものなのだ。この手法は、以前ここにも書かせてもらった、フランスの映像作家ミシェル・ゴンドリーがPVでよく使っていて、それを見てあまりに興奮して、真似をしてみたのだった。
ただそれだけではない。京都に拠点を置く劇団「地点」のセリフの喋り方も、僕なりに真似をした。いや、地点だけではない。「俺たちひょうきん族」のオープニングナレーション、フジテレビの深夜にやっていた「セリエAダイジェスト」、「お笑いスター誕生」のチャレンジャー紹介のナレーションなどの喋り方も、混ざっている。こういうものを勝手に混ぜて自分なりにやってみたことで何が起こるでしょうか。そう。ルーツがぐちゃぐちゃになることで、全く新たなモノになってしまうのです。おかげで見に来た人の誰にも元ネタをバレることなく、「ヒドミ」は誕生したのでした。
これを書いている今日は、ちょうどヒドミの「3D上演」をする直前でして、東京の五反田にある、五反田団のアトリエ「ヘリコプター」にて、さっきまでみんなで3Dメガネをかけてムーチョ村松の作った3D映像に、俳優の動きを合わせていたところで、1時間後に始まるけど、全体を通した形では誰も見ていない状態での本番となる所存。だれもやったことがない、「3D映像と演劇のコラボ!」いや、これって半分はボケですからね?演劇ってそもそも3Dだし。でもまあ、たまにはそういったことをやってみてもいいのじゃないかしらね。「ヒドミ」再演も二度目だし、物語がある程度伝わることは分かった、という経験があっての「3Dチャレンジ」なのだ。やれるだけのことはやったはずだ。光量の問題もあって、プロジェクターが4台ある。そのうちの一つでも消えたら、芝居はストップ。そして4台あっても、3D映像を出す為には、投射するスクリーン代わりのパネルは、銀色にしてある。銀色ということは、人の皮膚よりも明るい訳で、つまり、壁よりも人の顔の方が暗い。なので、福岡が生んだハイバイスター、平原テツも、顔が明るくなるよう、白塗りがほどこされている。本人は白く塗ってあること忘れて普通にタバコ吸ってたりするんだけど、そういう瞬間がやっぱり面白いよね。

いわい ひでと/1974年生まれ。劇作家・演出家・俳優、ハイバイのリーダー。 「ある女」で第57回岸田國士戯曲賞を受賞。ハイバイ「霊感少女ヒドミ」6都市ツアー10/17〜11/22まで、東京・名古屋・城崎・高松・兵庫・札幌へ。山崎貴監督「寄生獣」(11/29全国公開)に出演しています。
http://hi-bye.net/