シアタービューフクオカで絶賛連載中のハイバイ・岩井秀人氏のコラム「岩井の好きな映画」。本誌と併せてお楽しみください!

ハイバイ・岩井秀人コラム【岩井の好きな映画】vol.24 「ウルフ・オブ・ウォールストリート」

どうやら僕は、マーティン・スコセッシ監督が好きなようだ。
最近ではレオナルド・ディカプリオと一緒に作った「ウルフ・オブ・ウォールストリート」。これも相当面白い。ブラックマンデーとかで、勤めていた証券会社がぶっつぶれて仕事を失った主人公が、ど田舎からインディーズ証券会社を立ち上げ、クッソ成り上がる話だ。「ぶっつぶれる」「クッソ成り上がる」と表記させていただいたのも、このスコセッシ監督が描く「会社がつぶれる」とか「成り上がる」とかが、単にそのことだけに収まらない、神様が何かを「ぶん回した」結果のような、妙な力強さに満ちているからだ。
んでこの「ウルフ」だけど、さらには実話を元にしているとは思えないほどの破天荒な物語だ。成り上がった主人公が麻薬はやるわ、会社で目標達成したお祝いに売春婦をたらふく呼んで、みんなで乱交しちゃったりなど。とにかく濃いエピソードが、次々とやってくる。吟味すればいくらでも味わえそうなシーンも、ズドーンと、余韻を引きずらせながら見せていく。この潔さが凄い好き。自分にはない部分で、ほんとうらやましい。なんか僕はいちいちじっくりやっちゃいがちですから。元々はスコセッシ監督の「ディパーテッド」を見て、大興奮したのが始まりで、「お、そうなんだ『タクシー・ドライバー』も撮ったんだ」と最近になって知ったので、映画ファンには「舐めてるのか岩井」と言われてもおかしくないのだが、仕方ない、ホントに最近知ったから。

多分、映画的には、「カッコイイ撮り方、編集の仕方」と言われる部類なのだと思う。妙に見上げる様なアングルがあったり、カットバックとかのテンポが凄く良い。これが見てる側には中毒性を呼ぶのかしらね。
「ウルフ」での、ディカプリオ扮する社長が物語の終盤、しこたま怪しげな粉を鼻から吸った後、自分の会社の危機の連絡を受け、車を運転し帰宅する。モノローグで「奇跡的に事故ることなく、家にたどり着き」、なんとか会社は助かるのだが、なぜか家に警察が来る。主人公は「なぜ警察が?うまく会社のことは誤摩化したはずなのに!」と応じると警察「ちょっと、外出てもらっていいすか?」と、玄関前へ。さきほどモノローグで「事故ることなく」と言っていた車、ボッコボコになっていて、さらには垣根に突っ込みまくってモジャモジャ。そう、麻薬によって主人公は「無事」な幻覚を見ていただけだったのだ。結局そのことから麻薬がバレて捕まり、会社もおじゃん。この下りのアホさ加減と、それをこれでもかと誠実にやるディカプリオの合わせ技がとてつもなく面白い。ほんとに悲惨な話なんだけど、笑い、興奮してダメな主人公を応援して見て、なんとかなりそうでいて結局は最悪の結末にたどり着くんだけど、見た後に何やらスカーっとしちゃう。いや、この映画に関してはスカーッとなんて終わらない。でもあの終わり方は是非劇場で観て欲しい。
なんか最近このコラムで面白いの見るたびに言ってる気がするんだけど、こういうの作りたい。ホントに。

いわい ひでと/1974年生まれ。劇作家・演出家・俳優、ハイバイのリーダー。 「ある女」で第57回岸田國士戯曲賞を受賞。5/24公開の映画「青天の霹靂」出演中。脚本を担当し好評だったテレビ東京「終電ごはん」DVD化が決定。ハイバイ「おとこたち」は4/26~劇団先行発売開始!
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