シアタービューフクオカで絶賛連載中のハイバイ・岩井秀人氏のコラム「岩井の好きな映画」。本誌と併せてお楽しみください!

ハイバイ・岩井秀人コラム【岩井の好きな映画】vol.21 「エリジウム」

「エリジウム」を観た。くっそ貧乏なマット・デイモンが住んでいるのは、放射能に汚染された未来の地球 。その地球を離れ、宇宙にコロニーを作って暮らしている富裕層達。デイモンは仕事先のトラブルで 、余命3日となる。助かるには富裕層のいるコロニーに行って、なんでも治っちゃうカプセルに入らないといけない。ほんとなんでも治っちゃうんだから。このカプセル。おばさんとかがピカーって若くなったりするの。富裕層のお偉方、結構じじいもいるのにね。浴びなさいよあなた達も。まあそれも自由か。逆にみんなが若返りすぎて「若返る=ミーハー」みたいな感じになったりもするのかもな。
なんか、前もなかった?貧乏と金持ちの二極化された世界で、貧乏が病気になって金持ち倒すやつ。この「ちっちゃいのが大きいのを倒す」的な、一寸法師シリーズ、(シリーズじゃないけど)いつも思うんだけど、金持ちの人が頭悪いんだよな、、前に観た「オブリビオン」でも、主人公のトム・クルーズがクローンだということを絶対知られちゃいけないという設定のはずなのに、自動車で行ける距離にクローンいたしなあ。
この「エリジウム」でも、ジョディ・フォスター演じる「地球から来ようとする、汚い貧乏人達を排除するわよ」なコロニーの番人が、結局地球から適当に飛んで来た、たった2機の宇宙船も、なんの対策もしてないから、あとで怒られちゃう様な手段でギリッギリ阻止するし、 「コロニーの全ての法律がリセットできちゃう」プログラム、つまりこれをリセットされると、地球にいる人たちがコロニーに住めるようになっちゃって、それはコロニーの富裕層にとっては絶対にあっちゃいけないことなんだけど、そのカギを握る大事なプログラムが、たった一人のおじさんの脳みそから取り出されたデータさえあればいじれちゃうようにしてあったり。何人かの採択がないとダメなようにしようよ。あと、まずはコロニーに屋根作ろうよ。基本的にどっからでも突入できるようにしちゃうからダメなんだよ。そういえば治っちゃうカプセルもフタが無かったな。この映画の未来感は、ぬるぬるした形の車とか、ロボットの下僕とか、他のSFとだいたいの世界観は似てるんだけど、突出して「色んなものにフタが無い」というところを押し出してるのかもな。
ただほんと面白かったのは、そのジョディが雇っている殺し屋。懲役何百年って食らってる悪いやつで、ほんとなら死刑も免れないんだけど、脱走しようとした地球人をぶっ殺すことで、富裕層のダーティーな仕事を一手に引き受けている。体も改造されまくってて、頭とか背中とかに一杯コンピュータっぽいのが埋め込まれてる。デイモンを執拗に追いかけて結局ぶっ殺されるんだけど、意外とピュアで、女の人を見るとすぐ結婚したくなっちゃう可愛い化け物です。久々に「これ、ほんとに俳優か?」って思う様な面白い人です。
それにしても俳優さん達はホントに凄いわ。いつものことながらアメリカ映画。俳優万歳だわ。終わってから人に聞くまで、マット・デイモンだって分かんなかったし。

いわい ひでと/1974年生まれ。劇作家・演出家・俳優、ハイバイのリーダー。「ある女」で第57回岸田國士戯曲賞を受賞。ハイバイ10周年記念全国ツアー「て」が無事に終了。9月にハイバイ「月光のつつしみ」を控えている。6月28日公開「ゴッドタン キス我慢選手権 THE MOVIE」に出演。http://hi-bye.net/