シアタービューフクオカで絶賛連載中のハイバイ・岩井秀人氏(祝・岸田戯曲賞受賞!)のコラム「岩井の好きな映画」。
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ハイバイ・岩井秀人コラム【岩井の好きな映画】vol.18 「続 レ・ミゼラブル」

前回はまだ観ていない「レ・ミゼラブル」について書いた。なので今回は当然、観た後の「レ・ミゼラブル」について書きたい。 ジャベール!なぜ死んだ!いや、全体としては面白かったよ?凄かった。あんな最初から船とか引っ張ってさ、スケールでかいし、歌凄いしね、ア・ンハサウェイも。あ、アン・ハサウェイ。舞台版も見たことなかったから、あんな可哀想な話だとは思わなかった。 前回も書いた、元劇団員金子の作った「裸・ミゼラブル」は、もっと工場でいじめられて、工場で戦って、でも結局工場でボコボコにされる話だと思ったら、ジャンバルジャンは工場、あんまり関係ないじゃん。混ぜてたんだな、金子。色々と混ぜてたんだな。
で、話はジャベールに戻る。あいつはどうも、死んだタイミングでは、「今まで俺は完全な正義があると思ってた。だけどこの犯罪者、ジャンを見ているとどうもそうではないらしい。しかもこの犯罪者に自分は救ってもらいまでしてもーた。死んでくる。」って感じだったんだけど、でもラッセル・クロウって、この人の良いところって、いつでも「俺、悩んでるし。」っていう空気だと思うんです。グラディエーターとかでも、「バカみたいに強くて偉い」のに「でも悩んでる!」ってのがキュンてするわけだしさ。だからレミゼでも、冒頭から悩んでるようにしか見えない。ちょっと悲しみながら。「ごめんね、囚人達。俺、いばっちゃって。」って、大葛藤しながらもムチ振ってるように見える。
それに、あの自殺しちゃう場面のずっと前の場面でも、崖っぷちみたいな所を歩くシーンがあるでしょう?あの画って「だれか、悩んでいる俺が生きてても良いか教えてくれ。こうやって崖っぷちをわざと歩くから、俺の存在がNGだったら落っことして裁いてくれい!」っていうのの象徴でしょう?まあでも、やり方なのかしら。崖っぷちなんだけど、そこを全く揺るぎなく堂々と歩くとかしてくれれば、「俺は正しすぎるから落ちないし。」って感じられるけど、そうでもないから。だからジャベール、前半からず~と揺らいでて、もともと揺らいでて、多少、ジャンバルジャンの影響もあって、結局揺らぎが大きくなって落ちちゃった。って見えたなー。なんかあれ、違うよなー。
そうだなあ、だからきっと、端から見たら崖っぷちを歩いているんだけど、本人の目からは、大きな道のど真ん中を歩いている、みたいなのが良いと思う。で、民衆に「大丈夫ですか!危ないっすよ!」とか言われるんだけどジャベール、ゆっくりと民衆に振り向き、「は?どこが?」とか言っちゃうようなシーンにすればいいんだと思う。次からはそうしてください。 あと、落ちた先でまた、とんがってるところに落ちたの、可哀想だったよな。あれもなんか罰当たっちゃったみたいに見えて、可哀想すぎ! 「ミゼラブル」って、きっと「可哀想」って意味だな。調べもせずに言うけども。で、多分「レ」って言うのは、「超」って意味だ。 以上、邦題「超・可哀想」の感想でした。
あー楽しい。次もまた観てない映画の感想書こう。もしこれを読んでいる物好きがいたら、ぜひリクエストください。待ってるよ!

いわい ひでと/1974年生まれ。劇作家・演出家・俳優、ハイバイのリーダー。 「ある女」で第57回岸田國士戯曲賞を受賞。2013年5月~6月にハイバイ10周年記念ツアー「て」で全国6都市を巡る。北九州芸術劇場小劇場にいきます!「ゴッドタン・キス我慢THE MOVIE」 に出演しています、6月28日公開。http://hi-bye.net/