シアタービューフクオカで絶賛連載中のハイバイ・岩井秀人氏(祝・岸田戯曲賞受賞!)のコラム「岩井の好きな映画」。
webでもダブル掲載!本誌と併せてお楽しみください!

ハイバイ・岩井秀人コラム【岩井の好きな映画】vol.17 「レ・ミゼラブル」

こんちわおめでとう!岸田戯曲賞、いただきました~!あんがとあんがと!
今回は『レ・ミゼラブル』です。そう今まさに話題のあの映画です。もう観た方も多いと思われます。もう観たから、特に僕なんかの意見を聞きたい人も、そんなにいないと思われます。
が、僕の感想はひと味違います。誰にも書けない感想を書ける自負があります。
なぜかって?岸田賞、向田賞(超手前味噌!)を取ったからだって?ノンノン!
その理由は、まだ観てないからです!行くぜ!

僕にとっての「レミゼ」は、大学時代に遡ります。遡りまして、ハイバイの元劇団員、金子岳憲が、大学の文化祭で、『裸・ミゼラブル』というものをやっていて、男子達7~8人のグループで、「裸」ってぐらいですから、みんなふんどし一丁なんですけど、工場での労働者が偉い人達に怒る、みたいなへたくそなコントみたいなのが続いて、いつも金子がみんなにボコボコにされます。
そして倒れた金子にピンスポットが当たり、金子が歌い出します。「た~たか~うも~のの~」って。続いて、さっきまで金子を殴ってた工場の仲間とか工場長とかが現れて、群唱になるわけです。金子は歌だけは上手かったので、その金子の選んだ歌だけは上手い連中の群唱は、かなり圧巻でした。
全編通してグダグダなコントとも茶番とも取れないシロモノを、最後の群唱だけで持って言ってしまう。「歌の力」をあれほどまでにまざまざと見せつけられた時はありませんでした。
そしてその後、大学を卒業し、自分は歌はおろか、音楽さえ使わない演劇をやっていたわけですが、またもや「歌の力」を見せつけられる機会に巡り会います。青年団の『上野動物園再再々襲撃』という作品。これはおじちゃんやおばちゃんたちのホントに暗い話が続き、最後にやっぱり全員でいきなり歌い始める、というもので、細かく書けませんが、見事に歌の力を使った大作となって、僕は号泣でした。あと「はえぎわ」という劇団のうわさ話です。当時僕の付き合って娘が、「はえぎわ観てきた!超すごかった!」と言うので、どう凄かったのかを聞いたところ、「なんか、前半全然意味分かんないのがずーっと続いて、いきなりドーンって歌い始めるの!すごい超感動した!」という話を聞いて、なぜかやたらと衝撃を受けました。それと松尾スズキさんの「洞海湾」も、殺されるカップルが最後にカラオケを歌います。これもすごい。

んで、何が言いたいかと言いますと、ここは男岩井、「パクっても、元がばれない(上手くパクれない)才能」で有名な男です。早速パクリました。それが僕の家族の話で、最後は賛美歌で終わる『て』と、彼氏が死に神に連れて行かれるのを、カラオケで「喝采」を泣きながら歌う彼女のシーンで終わる『投げられやすい石』なのです。みんな観てみて!

きっとレミゼも面白いです!

いわい ひでと/1974年生まれ。劇作家・演出家・俳優、ハイバイのリーダー。 「ある女」で第57回岸田國士戯曲賞を受賞。2013年5月~6月にハイバイ10周年記念ツアー「て」で全国6都市を巡る。北九州芸術劇場小劇場にいきます!TBS「終電バイバイ」に脚本提供中。http://hi-bye.net/