シアタービューフクオカで絶賛連載中のハイバイ・岩井秀人氏のコラム「岩井の好きな映画」。
今号よりwebでもダブル掲載スタート!!

ハイバイ・岩井秀人コラム【岩井の好きな映画】vol.14『桐島、部活やめるってよ』

8月11日に全国公開された『桐島、部活やめるってよ』は、「顔が男岩井にそっくり!」と業界で評判の吉田大八監督の最新作っす。これは絶対、今年の邦画で上位にランクインする傑作なのだ。試写会で観て、ブルブル震えさせていただいたのです。手前味噌?そうかもしれません。違うと思うよ!だって、自分がちょっとでも出てる映画は、基本的には自分の駄目さばかりを見てしまって、映画の内容どころではなくなってしまうのが僕の常ですが、この「桐島〜」に関しては、自分のことはそっちのけで、この淡々と、しかしゴツゴツとして日常の機微を引き出し、をまさに過不足なく、あつく伝えきっているわけです!見ろ!

ある高校で“桐島”っていう、部活も勉強もできて、本人も友達も彼女もクラスの人気者グループにいるようなやつが、突然部活を辞めたらしい。当の“桐島”が学校を休んでいるから、同級生には真相が分からず、ドヨドヨする。カメラが5人くらいの同級生の心情を追っていくのだけど、ブルーがかった落ち着いた画はただ「伝える」みたいに淡々としてて、(悪い意味での)ドラマっぽさがない。俳優はただそこに「居る」ように芝居をして、過剰さが排除されてる。みている側がその場所でその時間を共有しているような、すさまじい説得力があって、どこにも嘘くささがないのがすごいと思う。

東京の劇団「ポツドール」を観た時にも同じような感覚を受けたけど、演技の嘘くささみたいのを排除していくことって、脚本がある時点で結局嘘だから、リアルに見せるためには異様に緻密な計算で全体にふりつけをするか、巨大な嘘をお客さんに最初に納得してもらうしかないのだけど、ポツドールでは前者の方法をとっていて、ハイバイではおばさんを男の俳優が演じたりして、後者の方法をとっている気がする。この映画ではただひたすら誠実に場面を重ねることでお客に嘘くささを忘れさせてて、その丁寧さには、執念すら感じるのです。

“桐島”から一番遠いところにいる、ヲタクグループ(神木隆之介、前野朋哉)が、超絶萌え軍団で、かわいい…。そしてその対岸に位置する、人気者イケてる男子女子グループの子達もすんげーよかったし、この年代にはいい俳優がたくさん居るんだな、と感心した。僕も高校の先生役で出ているほかに、ハイバイ「て」で父ちゃんやってもらった猪股俊明さんや、同作品で葬儀屋をやってくれた高橋周平君も出演。この高橋くんが、かなりのスーパープレイだと思います。ホント良い俳優さんだわ〜。

やはりそもそもは「映画作りたい」と、怯える心と体にムチ打って引きこもりから脱出してきた僕としては、これを観て、「お、おれもつくりてー!」と思わずにはいられなかったです。や、やるか!やるのか!?種はあるんだ!「ヒッキー」、「投げられやすい石」、「て」!やってから死なないと!死なないと−!

いわい ひでと/劇作家・演出家・俳優、ハイバイのリーダー。9月に久ヶ沢牛乳Presents『A HALF CENTURY BOY』へ脚本提供。10月にPARCOプロデュース『ヒッキー・ソトニデテミターノ』脚本・演出。そして公開中の映画「桐島、部活やめるってよ」に出演中! http://hi-bye.net/

(シアタービューフクオカvol.38掲載)

「桐島、部活やめるってよ」
8.11(土)T・ジョイ博多他 全国ロードショー
公式HP  http://www.kirishima-movie.com
監督:吉田大八
原作:「桐島、部活やめるってよ」朝井リョウ(集英社文庫刊)
脚本:喜安浩平 吉田大八
出演:神木隆之介 橋本愛 大後寿々花 東出昌大 清水くるみ 山本美月 松岡茉優 落合モトキ 浅香航大 前野朋哉 高橋周平 鈴木伸之 榎本功 藤井武美 岩井秀人 奥村知史 太賀

(C)2012「桐島」映画部 (C)朝井リョウ/集英社