舞台をはじめTVドラマ等でも活躍中の女優・池谷のぶえさんのコラム。本誌と併せてお楽しみください!

vol.19

シス・カンパニー公演「恋のヴェネチア狂騒曲」という舞台が閉幕。本番期間が長かったので、弱ったお膝がもってくれるか心配でしたが無事乗り越えられました。膝の病院からは「なるべく階段を使わないように」と言われるのですが、見た目はピンピンしているので、エレベーターに乗る時肩身が狭いです。膝に「ベビーカー」って書けば、快く乗せてもらえたりするのかしら…。いままでエレベーターなんて荷物が多い時くらいしか使っていませんでしたが、頻繁に使う側の立場になってみると、エレベーターの世界も奥深いです。
さて本番が終わり、10日に1日くらいしか仕事をしない、グータラな夏休みに突入しました。久しぶりに結構まとまったお休みがとれる…となったら、旅行に行くしかないじゃないですか。網走監獄とか行ってみたいと思ってたんだよね~? などとウキウキ検索していたある日、3~4年ほどお隣に住んでいる老夫婦の旦那さんと玄関でばったり会う。会えばご挨拶する程度の間柄だったのですが、その日旦那さんは堰を切ったかのように、日当たり、クーラーの効かなさ、児童プールの騒音、家賃、不動産会社への不信…これでもかというくらい抱えていたものを吐き出して「引っ越します」と宣言。静かに住んでらっしゃる穏やかなご夫婦の印象だったのが、こんなにも引っ越しを熱く語るなんて! と同時に、「ほら、数年前あの事件もありましたしね」と、旦那さん。ん…? 事件? 事件!?
詳しくは記載できませんが、私のお隣でいろいろあったとのこと。まったく知らなかった…知らないまま数年、何も感じず生活していた…恐るべき私の鈍感力。そうなると、とたんにこのままここに住み続けていいのだろうか…と気になりだし、網走刑務所に行ってる場合じゃないんじゃないか。いますべきは、引っ越しなのではないか。となるわけです。早速、物件サイトなどを検索しはじめ、その流れでネットショッピングに…となったら、ん…? カード決済ができない。カード会社に問い合わせてみると、不正利用らしきアクセスがあったので、カードを止めましたとのこと。もし網走刑務所に行く場合、航空チケットアプリでカードを使って支払いしようと思っていましたし、結局刑務所には行けない運命だったのですね…まあ、刑務所には行かない方がいいでしょうけれども…。そして家にいたらいたで隣にソワソワする…ということで、とにかく観劇しては飲みに出かける日々です。せっかくの夏休み、いつもとやってることまるで変わりがないじゃないのよ、もう。
このコラムが掲載される頃には、少しは涼しくなっているかしら…そして私はいったいどこに暮らしているのかしら…。

いけたにのぶえ/1971年生まれ、茨城県出身。俳優。幻の劇団「猫ニャー」出身。舞台を中心に活動中。

◎シアタービューフクオカvol.80掲載(2019.8発行)