コラム・池谷のぶえ めずらしく体調のいい日に vol.5

舞台をはじめTVドラマ等でも活躍中の女優・池谷のぶえさんのコラム。本誌と併せてお楽しみください!

vol.5

春になりましたね。このコラムをしたためているいま、関東はちょうど桜が満開です。花たちが一斉に咲き乱れる季節がやってきました。花といえば、「テラスハウス」。散々「大好き!」とSNS等でのたまっていたら、ついにテラスハウスさんから楽屋にお花が届くという、サプライズ!なんだろう…ひそかに想い続けていた人が、実は両想いだった的な…大好きな人には、大好きって言っていこう、きっと伝わるよっ!的な…少女漫画の世界のような、芳醇な潤いと興奮をいただいた年度末。こうして、気合を入れていた昨年度の池谷の恋愛活動も、テラスハウスさんからお花が届くという華々しい結果で幕を閉じ、結局現実的には何もはじまっちゃいねぇ!という清々しい思いでいっぱいな今年度のはじまりです。

新しく社会に出た方もたくさんいらっしゃるでしょうね。私も、女優になろうなどとはさらさら思っていなかったので、大学卒業後は一般会社へ就職しました。ぺーぺーな新人で何もできないのでしばらくは、お茶くみ、コピー取り、電話対応などがメインのお仕事です。この電話対応が、社会人一年生的にはそれはそれは恐ろしかった…電話をかけてくるのは大概、知識豊富な大人たちじゃないですか。どう答えたらいいのかわからなかったんですもの。そのストレスで1年間で12キロほど痩せました。電話って痩せるんだ…社会に出てみなければわからないことは、たくさんありますね。

奇遇ですがちょうど現在も、1年間で12キロほど痩せたところです。もはや電話じゃ痩せられなくなりましたけど。「確認します」「検討します」「かけなおします」このどれかを言っておけば、電話なんてどうにかなりますものね。老いです。老いによる勝利です。
その会社に勤めたのは3年ほどでしたが、いまでも自分の基盤になっていることがたくさんあったりします。電話対応の仕方、挨拶の仕方、お酒の席での居方、世の中には美味しいものがたくさんある…ほぼほぼ飲み食いのことばかりですが。
特に、お酒の席での居方などは、かつて叩き込まれた新人癖がいまだ抜けないのが困りものでもあります。先輩のお酒がなくなりそうになってるのに誰も作ろうとしないとソワソワしてしまったり、会計の計算を誰もしようとしないとつい率先してやろうとしてしまったり。45歳にもなってまだこんなことを…と遥か遠くを見つめることもしばしば。

しかし先日やっと、酔っぱらってタクシーで自宅に強制送還されるという、あこがれの体験ができました。とにかく率先して酔っぱらっちまえば、先輩のお酒づくりや会計にソワソワしなくなる日も間近かもしれません。
老いです。老いによる勝利です。

いけたにのぶえ/1971年生まれ、茨城県出身。俳優。幻の劇団「猫ニャー」出身。舞台を中心に活動中。

◎シアタービューフクオカvol.66掲載(2017.4発行)

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