大塚ムネトの「かぶりモノ大図鑑」No.008

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No.008 中洲の玉屋さん/杉山英美

博多のごりょんさん的キャラ
 博多で最初に百貨店の名乗りを上げた中洲の玉屋さん。大正14年に開店し「博多の名所」として大人気となった。年輩の方に話を聞くと、恋人と玉屋さんに出かけるのが一番オシャレなデートだったそうで、屋上から見渡す博多の眺めは最高だったとか。ギンギラには「博多のごりょんさん」として登場する。ごりょんさんというのは、男達が山笠に熱中している間留守がちな店を支え、家を守り、大きな心で祭りを支える、博多のおかみさんのこと。頼りになる「ごりょんさん」があっての博多なのだ。
 
 戦後、子ども達のためにゾウを海外から手に入れて屋上に動物園をつくり、大人のためには店内に映画館を作り娯楽を提供した。商売の枠を超え、博多を支えた玉屋さん。人々に惜しまれつつ玉屋さんが閉店したのは平成11年7月15日。この日は山笠のクライマックス「追い山」の日で、男達は玉屋さんの前に祭り姿で駆けつけ、博多祝い歌と博多手一本を披露する。 そして、玉屋さんは、祭りを見届けたあとに閉店。最後にシャッターが閉まる時、多くの人が涙を流していたのは、きっと玉屋さんに励まされてきたからだと思う。
 かぶりモノは、去年4月に上演した流通スペシャルの時に製作した2代目。長年博多を支え、天神で活躍する女ビル達の良きライバルだった玉屋さんは、4月公演でも重要な役どころでお客様に大人気だった。思えば「笑って泣けるエンターテインメント」というギンギラのスタイルは、この玉屋さんとマダム大丸を主役にした「女ビルの一生」という作品で確立された。現実の玉屋さんは無くなったけれど、ギンギラの作品世界で今後も玉屋さんは活躍を続ける。

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