ヨーロッパ企画 永野宗典の対談野郎 vol.4ゲスト:山口雅俊
シアタービューフクオカのコラムで誌上最長連載を誇るヨーロッパ企画・永野宗典氏。
ゲストを迎えての対談形式コラム。
webでもダブル掲載!本誌と併せてお楽しみください!
限られた字数制限の中、所狭しとお送りするショートショート対談。今回は、ドラマ「闇金ウシジマくん」プロデューサー兼監督の山口雅俊さんと!
今回のゲスト:山口雅俊
「闇金ウシジマくん」企画・プロデュース・脚本(共同)・監督。他、ドラマ「ナニワ金融道」「ランチの女王」、映画「カイジ」等、様々な作品を手掛けている。
永野(以下永) 「闇金ウシジマくん」って過激な内容で表現の規制とかも厳しそうで、視聴者が観てて結構ヒヤヒヤする内容ですよね?
山口 (以下、山) そう。「闇金ウシジマくん」は、主人公が犯罪者ですよね。それを正義として扱ってもいけないし、債務者の悲喜劇も描かなきゃいけない。闇金の犯罪とは何か? 今、法令とか判例はどうなっているのか? とか、闇金のことをちゃんと知ってないとできない。特にテレビではなかなか難しい内容ですよね。
永 でも、ハードル高いけど、やろうと思ったのは?
山 「ナニワ金融道」とかやってた流れもあるし、お金が出てくる話って面白い。あと、お金がモロに出てくる映像作品って、意外となかなか無いんですよね。
永 はあ~。あの、役者として聞きたいことがあって。オーディションの時の、監督の眼差しが忘れられないんですよね。30cmくらいすごい至近距離でじ~っと僕の演技を見られてて。記録用のカメラよりも前に出てましたからね(笑)。
山 ああ、近かったよね(笑)。
永 キャスティングで気をつけてることとかってありますか?博打みたいな怖さがありますよね。
山 それは本当にそうで、誰かの言ってることとか鵜呑みにしちゃダメで、やっぱり自分で実際演技を見ないといけないです。有名な役者でもとにかく会ってみないと。だからオーディションは大事ですね。
永 今回やらせてもらった「宇津井」役の、ひきこもりで身勝手で子供っぽいイメージが僕の中に見えたんですかね、アタフタバタバタ動く感じとか?
山 そうそう。「宇津井」の昆虫のような動きとか、面白いですよね。人間の持ってる変な動きみたいなものって、ゴールデンタイムのドラマのような所謂様式美の世界では難しいけど、ウシジマくんだったらできるなと。
永 動きとか仕草とか、現場で色々と引き出してもらった気がしました。
山 ソーセージパンをわざわざ分離して食べたりとか(笑)。
永 あれは原作に無い要素でしたよね。監督のイメージした食べ物に関するディテールが面白くて。
山 映像って食べ物がとても大事で。登場人物が何を食べてるか見えない映画やドラマは面白くないんですよ。
永 役者からすると食べるのって難しいというか、「役」から外れてしまうような怖さがある気がするんですけど、でも何回も撮りましたよね。監督の大事にしてる部分なんですね。
山 そう。食べ物とかお金って、結構大事。例えば、ふと小銭が出てきた時に、小銭をしまうのか小銭をどうするかで、その人間性がわかる。
永 監督とご一緒できて印象的だったのは、すごい純粋に好きなもの作ってるんだなと。何か僕らが劇団で作品作ってる感覚と通じるものがあるのかもって思えたことです。難しいことだと思うんです、好きなことを、しかも、この規模でやり続けるって。
山 好きなものを作って世に出すってことはなかなか厳しい状況で…。まずビジネスとして成り立たせなきゃいけないですよね、ずっと続けていくために。
永 業界を憂いてるんですか…?
山 いや憂いてはないですよ(笑)。
永 ああ(笑)。勝手に重いテーマに導こうとしてしまいました…。
山 まあ、よりよいものをよりたくさんの人にみてもらうってのはつくづく難しいものですよね…っていうかこういう話って、福岡のOLさんとかが、パッとこのフリーペーパー取って楽しんでもらえない内容になってくるよね?(笑)
永 いやいや(笑)。今や、視聴者はドラマを一面的に見てないですから! エンドロールの隅まで見てますし。監督の人物像が見えたらドラマの見方もちょっと深まるかなという意図もありまして…(と、アタフタしたまま、さらに字数制限にも焦り、挙動不審のまま対談は終了してしまうのだった)。
●永野宗典(ながの むねのり)/’78年生まれ、宮崎県出身。’98年、上田誠らと共にヨーロッパ企画の旗揚げに参加。以降、全作品に出演。
information 2014年1/16(木)から毎週木曜日24:58~(TBSほか)ドラマ「闇金ウシジマくんSeason2」レギュラー出演(宇津井役)。