ヨーロッパ企画 永野宗典の対談野郎 vol.41 ゲスト:益田啓一郎
シアタービューフクオカのコラムで誌上最長連載を誇るヨーロッパ企画・永野宗典氏。
ゲストを迎えての対談形式コラム。
webでもダブル掲載!本誌と併せてお楽しみください!
限られた字数制限の中、所狭しとお送りするショートショート対談。今回のお相手は、福岡で出会いかれこれ10年以上のお付き合いの益田啓一郎さんと!
今回のゲスト: 益田啓一郎
1966年大分県生まれ。ゼンリン子会社を経て独立後、社史・地域史の執筆編纂に携わる。近年はNHKブラタモリをはじめ、テレビ番組や舞台の時代考証や企画監修も多し。西鉄110周年史のテーマ史「天神発展史」執筆、古写真アーカイブス等運営。
永野(以下 永) 益田さんは、福岡の地理・歴史学者と言う印象なんですが間違いないですか?
益田(以下 益) 肩書きでいえば「近代史研究家」で通してます。
永 明治以降の福岡の研究ってことですか?
益 明治以前の歴史を研究している方は、学者や一般人含めてたくさんいますけど、私は今生きている方々から色んな話を聞いて調べるのが好きです。
永 いつぐらいから研究するようになったんですか?
益 いつも遊んでいた土手が宇島鉄道の築堤跡で、調べるようになりました。
永 もともと鉄道にご興味があったとかですか?
益 古い電車とかは好きですね、特に路面電車。地図のゼンリンの子会社に1992年に移籍したんですが、その頃はまだ北九州には路面電車が走っていました。
永 は~! 鉄道きっかけで、その成り立ちとか時代背景まで興味が広がっていった感じですか?
益 きっかけはひとつではないですけど、ゼンリンの住宅地図は学生時代に新聞配達していて活用していたので愛着と興味を持ちました。地図作りは街の歴史そのものの記録だと思いました。
永 地図きっかけ?!
益 地図も好きです。鉄道とか街を調べる際は地図見ますよね。あ、ゼンリン入社前は小さな印刷会社のデザイナーでした。テレ東の大江麻理子アナのおじいさんが社長でした。街をぶらり歩きながら歴史を教えてもらうスタイルは、ここに在籍していた頃に始めたので影響がかなりあります。
永 益田さんは、タモリさんがブラタモリする前から、ブラされてたってことですよね(笑)。
益 大江さんの一族は「とにかくやってみなさい」という姿勢でしたので、若い頃に色んなチャレンジをさせてもらい、今の私の基礎ができてます。時間があればカメラを持って街をぶらり歩いてます。古い地図や絵葉書を持って歩くこともあります。資料があると、それきっかけでお店等で色んな面白い話が聞けますので。京都は「まいまい京都」という街歩きの理想形があるので、羨ましいです。九州でも「まいまい」のようなまち歩きをしたいと思ってます。
永 福岡の歴史散歩って、イメージないかもです。
益 福岡は「上書き都市」と言われるほど昔の痕跡がない街ですけど、よく探せばけっこうありますよ。天神とかにも。
永 明治頃の天神とかまったくイメージできない!
益 例えば、ソラリアプラザは明治の終わりまで福岡城のお堀だった場所です。
永 え~!だいぶ上書きされてますね!
益 西日本鉄道さんから依頼いただき西鉄110年史に「天神発展史」を書かせていただきました。天神の歴史を勉強したことで、上書きされたあとの未来イメージも想像してます。シアタービューフクオカは、演劇の話は必要なかったですか?
永 あ、お気遣いありがとうございます!(汗)。え、演劇も語れる口ですか?
益 演劇でも歴史や逸話モチーフは多いですし、脚本や監修を手伝うことも多いですよ。三谷幸喜さんの脚本にチェック入れたこともあります(笑)。
永 えー!幅広い!
益 福岡は川上音二郎など演劇人をたくさん輩出してますし、縁あって今は「福岡演劇史」や「博多にわか史」も調べて執筆始めてます。
永 昔からメディアとのお仕事はされてたんですか?
益 サラリーマン時代、仕事以外でコンサートの企画運営やラジオの選曲、ゲスト手配、LOVE FMの前身の天神FMでも、朝の番組をボランティアでお手伝いしてましたよ。
永 もう何者かわからない!(笑)
益 私、自己紹介が大変なんですよ(笑)。
永 つねに「とにかくやってみなさい」の精神で動かれてるんですね。
益 そうですね。一歩前に進むと、意外と景色って変わるじゃないですか。行動を始めると、いろんな方が応援してくれたりして。
永 好奇心の権化や!最近はラジオ番組のパーソナリティーもやられてるんでしたっけ?
益 「JAL九州歴史ロマン街道」の企画&時々DJやってます。ラジオ版のブラタモリやりたいって、相談いただきました。
永 だいぶ人生楽しまれてますね…(笑)。「とにかくやってみる」精神恐るべし。
●永野宗典(ながの むねのり)/’78年生まれ、宮崎県出身。’98年、上田誠らと共にヨーロッパ企画の旗揚げに参加。以降、全作品に出演。
◎シアタービューフクオカ vol.83掲載(2020.2発行)