ヨーロッパ企画 永野宗典の対談野郎 vol.38 ゲスト:祷キララ

シアタービューフクオカのコラムで誌上最長連載を誇るヨーロッパ企画・永野宗典氏。
ゲストを迎えての対談形式コラム。
webでもダブル掲載!本誌と併せてお楽しみください!


限られた字数制限の中、所狭しとお送りするショートショート対談。今回のお相手は、舞台「ギョエー!旧校舎の77不思議」で共演している祷キララさんと!


今回のゲスト: 祷キララ(いのり きらら)
2000年大阪府出身。9歳で女優としてのキャリアをスタート。様々な映画で主演を務め、CMやMV、舞台などにも出演し活動の幅を広げる。映画「左様なら」主演、『アイネクライネナハトムジーク 』、『楽園』に出演。

永野(以下 ) 大学二年生? 京都で稽古して、毎週1日だけ東京で大学に通って、大変じゃなかった?
 テストもあったし稽古場も必死だったし、結構、頭の中ぐちゃぐちゃの状態だったかもしれないです(笑)。
以前に、祷さんが出てる映画やPV観てて、当時10歳くらいだよね? 千里眼で世の中を見てるような、すべて見透かしてるような眼差しが強烈に印象に残ってて。で、今回ヨーロッパ企画のコメディに参加すると聞いて、まさにギョエー!の1つだったのよ。でも実際会ったら、ゲラで(笑)。イメージが覆りました。
 よく言われるんですよ(笑)。舞台挨拶とかで喋ると、よくお客さんやプロデューサーから「祷さんって笑うんですね」って。
 「祷キララ」って本名なんでしょ? ルーツってわかる?
 祷一族は、父方の祖母が鹿児島県徳之島出身で、起源を辿ると琉球王国とかの時代の祈祷師をされてる方が先祖にいたというのは聞いたことありますね。
ほえ~! 小さい頃はどういう子だったの?
 小学生の頃は、外で遊ぶのがむっちゃ好きで、キックベースしたり、公園で遊んだり。
そんな普通の小学生が、なぜ映画「堀川中立売」(2010年公開)の中で、あんな独特な佇まいを表現できてたんだろう?
 良くも悪くも意図して出た表現じゃなかったと思うんです。自分自身も映画を観て、普段の私とは全く別モノのように見えてました。
そもそも映画に出るきっかけは?
 7才の時に両親に連れて行ってもらった柴田監督の「青空ポンチ」(2008年公開)を観てですね。観てる間ずっと胸が弾んで終わってからもワクワクしてて、映画って面白いって思えたことが嬉しかったんです。で、「いいなあ映画、キララも出たい」みたいなことを柴田監督に言ってたらしいんですよ(笑)。
もともとは将来何になりたかったの?
 3才くらいの頃「キララ、将来きびだんごになりたい」って言ってたそうです。
アンパンマン的な存在になりたかったのかな?(笑)。10才の時点で、ずっと女優でやって行こうって思ってた?
 いや、そうでもなくって。一番のきっかけが、高校2年の時に、ローテーションで5役くらいを十数人で順繰りに回してシーンを演じていくグループオーディションというのを受けて。自分が考えてきた役を他の人がやるのを見て、ちょっとしたことで役の印象がガラって変わるのを目の当たりにして、瞬きのはやさ、声の高さ低さ、間の取り方、一人一人違って、こんなに人によって役って変わるし、シーンの雰囲気も変わる。それがすごく面白いなって思って。
演技の魅力に気付かされたオーディションだったんだ。
 演技の面白さには気づいたけど、すごい人数受けてたし、グループの中で自分が引っかかるような演技ができたかどうかは自信がなくて、帰りの新幹線の中でずっと悔しくて。で後日、マネージャーさんから「キララ、あのオーディション合格したよ!」って電話がきて。そのあとの授業、体育だったんですけど、むちゃくちゃ嬉しくって、もう体育どころじゃないと思って(笑)。でも、撮影日時がズレて期末テストと被るってことがわかって…。この仕事始めた時から、学校優先でやるというのが両親との約束だったんです。出れなくなって悔しくて悔しくて、絶対に上京してやる!って思って。色んな出会いを自分の手で摑んでいきたいし、私はそういう場所にいきたい!って強く思ったんです。
でも大学進学を選んだんだよね? それは自分の意思なの?
 涙ながら、河川敷で父親と話し、夜に母と話し、揉めて揉めてどっちにも反対されて。じゃあ、東京で大学に行くなら上京していいよって、言ってくれて。
色々と乗り越えて今があるんやね~。女優業に対する熱い想いが、すごく伝わった。話せば話すほど、祷キララ像が裏切られていく。監督・演出家が起用する理由がわかった気がする。色んな役に染めたくなる、キャンバス女優ですよ。キャンバス自体が、ホットプレートみたいに熱い、ね(笑)。

●永野宗典(ながの むねのり)/’78年生まれ、宮崎県出身。’98年、上田誠らと共にヨーロッパ企画の旗揚げに参加。以降、全作品に出演。

◎シアタービューフクオカ vol.80掲載(2019.8発行)

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