“北の三部作”最終章を飾る、一大巨編。激動の時代を、懸命に生き抜いた親子の物語。

『北の零年』(05)、『北のカナリアたち』(12)に続く“北の三部作”最終章である今作。多くの名作が生まれた北海道の雄大な風景の中で、今回描かれるのは大戦末期から高度経済成長期という激動の時代を生き抜いたある親子の物語。

厳しくも温かく息子を守る母・江蓮(えづれ)てつを演じるのは本作が120本目の映画出演作となる吉永小百合。苦難を乗り越えて成功し、老いた母と再び時を過ごすことを決める息子・修二郎を堺 雅人が演じる。さらに、修二郎の妻・真理役に篠原涼子。親子を見守る山岡役に岸部一徳。てつの夫・徳次郎役の阿部 寛、てつたち親子を助ける菅原を佐藤浩市が演じ、豪華キャストが顔を揃えた。監督は滝田洋二郎、物語を象徴的に彩る演劇的シーンの舞台演出として、ケラリーノ・サンドロヴィッチが手掛けた。
本作でてつを演じた吉永小百合、修二郎役の堺雅人、滝田洋二郎監督にインタビュー

◆今回吉永さんと初めてのタッグを組んだ感想は?

滝田洋二郎監督:僕自身もこれまで映画にこだわって、映画ばかりをやってきましたが、吉永さんは大先輩でこれまで119本(『北の桜守』を除く)もの映画に出演されていらっしゃいます。撮影現場では本当に映画の人なんだと感じました。例えば吉永さんは演じられる時に、ご自身の頭の中にスクリーンがあって、そこでどう生きていくかを、常に考えていらっしゃいました。そしてご自身のことだけでなく、映画の世界観をより深く理解し、考えてくださるので、とても刺激になった映画漬けの毎日でした。

◆吉永さんは初めて滝田監督とご一緒されていかがでしたか?

吉永小百合:滝田監督が撮られた「僕らはみんな生きている」という作品が大好きでした。困難な状況の中で、大変な目に遭うのですが、映画を見終わった後に、不思議と爽やかな気持ちになる。同時に監督が描く、厳しい環境の中でも一所懸命に生きていく人の姿を、明るく描かれる。そういう作風が大好きです。今回ご一緒させていただきましたが、現場では俳優の演技をしっかり見てくださりつつも、現場には笑い声が絶えない。これまでにない経験をさせていただきました。ですから、新しい気持ちで現場に臨めました。

◆堺雅人さんは、吉永さんとの初共演はいかがでしたか?

堺雅人:吉永さんは映っているだけで映画になるというか、一緒にいるだけで映画の世界に連れて行ってくれるような、そういう先輩です。お花見をしていて桜の花びらを見ていると、向こうの違う世界に連れて行ってくれるような感覚になりますが、そういう魅力が桜にはあるような気がします。吉永さんの目を見ているだけで、見も知らぬ映画の世界、見も知らぬ夢の世界へ誘ってくれる、そういう方だと思います。

◆今作では、舞台シーンが登場しますが、映画作品の中に演劇を入れようと思われた理由と、それをケラリーノ・サンドロヴィッチさんに委ねた理由は?

滝田洋二郎監督:この映画の中で、演劇を使って描いているのは、戦争を回想したりするシーンです。実際にそこを撮影しても悲惨なことにばかり目がいったりする気がして。そうすると、観ている方はてつの心の中に、入りづらいのではないかと思いました。そんな時に舞台のシーンを入れるというアイディアがでました。舞台にすると戦時中、戦後のてつの心象風景を描けるかなと。そこを抽象化することでお客様もすんなり入りやすくなるのではないかと思いました。
ケラリーノさんは、若くてとてもチャレンジ精神があって、サービス精神もありますし、勢いのある演出家です。僕自身も何本か舞台を見せて頂いていたのですが、ワンセットで物語を紡いでいく様子がとても不思議で引き込まれていきました。シーンをどんどんカットを変えてモンタージュしていくことが、映画作りの方法なんですけど、彼はひとつの舞台で、こんなに盛り上げることができるんだと感心していました。風貌も面白い方ですからね(笑)とても楽しく乗って頂いて、吉永さんともすごく気が合って、いいシーンになったと思います。

◆吉永さんは初舞台だったそうですが、いかがでしたか?

吉永小百合:初めに舞台のシーンが入ると言われた時に、ちょっと心配して、映画の芝居じゃない演技を要求されたらどうしようと思ったんです。映画の中の人物そのままで演じさせて頂けるのかという不安はありました。でもケラリーノさんからは200人くらいの劇場でお客様が見ていらっしゃるという感覚で声を出してくださいということでした。それ以外のことは仰らなくて、映画と同じような演じ方をさせて頂いたのでホッとしました。舞台のシーンを撮影する前に、1週間くらい稽古をしたんですけど、プロの演技者の方々の見事な動きに、すっかり引き込まれて、1週間があっという間に過ぎて楽しかったです。舞台は、普通は1ヵ月くらい稽古をされますよね。こうやって舞台を作っていくんだ、こういう素晴らしい世界があるんだということを今回、疑似体験しました。

◆堺さんは劇団のご出身ですが、吉永さんの初舞台をご覧になられていかがでしたか?

堺雅人:僕は早稲田の劇研という劇団から始まっていますが、舞台の専門家でも何でもないですが(笑)、本当に素敵でした。何が素敵なのかなと考えたのですが、吉永さんの真っ直ぐさが好きだったんじゃないかと思いました。吉永さんの舞台でのお芝居を観ていると、映画の演技と舞台の演技とは根本の所は変わらないんじゃないかと。ちゃんとそこに立ち続ける、ちゃんと相手に台詞を届ける、その思いさえしっかり持っていれば大丈夫なんだと、そんな気持ちにさせていただくほど、真っ直ぐなお芝居でした。シーンによっては天真爛漫な汚れを知らない子どものようにも見える顔にもなったり。母なんですが、その姿を見ていると、年齢すら解らなくなる。それが今回の映画のおもしろさでもあるし、舞台というメディアの面白さだと感じました。

◆てつとして修二郎として「桜」はどんな存在だったと思いますか?

堺雅人:修二郎という役は、自分の居場所を一所懸命探す人という捉え方をしていました。母の心の中になんとか自分の居場所を作りたい、仕事の上でもアメリカ、また日本に自分の居場所をなんとかして探したい、根付きたいという思いがあったと思うんです。それは「桜」に限らず、植物にはそういう思いがあると思うので、修二郎にとって「桜」は似た存在だったように思います。

吉永小百合:この年齢になると、次の桜を見ることなく亡くなっていってしまう友人も出てきたりして、私自身も来年しっかりと元気で桜を見たいなという思いが年々強くなっています。生きている喜びみたいなものを桜が咲いている時期に感じたりするんですね。てつもきっとそういう気持ちだったと思います。ただお花見をするとかではなく、毎年同じ場所に行って、今年も桜を観ることが出来たという気持ち。きっと今年の桜は今まで以上にそれを感じると思いますし、来年も再来年も見ることができたらと思っています。

◆堺さんと共演されての印象は?

滝田洋二郎監督:堺さんとは10年以上前にご一緒して以来なので、今回ご一緒できるのを楽しみにしていました。というのもこれまでに色んな役をやられているからだと思いますが、役作りがうまいというか、伝えるのがうまい人だと思いました。修二郎の役は、とても難しい役なんです。現代の人がみると、ちょっと強引で傲慢な人だと思いますが、当時はコンビニの先駆けになった時代に、彼のような人はたくさんいたと思うんです。強引で、そして自分のやり方を通しながら、でも内面的にはとても弱い面を持っている。その難しい役を、葛藤や苦悩、屈折をどうやって出して、最後に母を理解し、ラストシーンに持って行くのかというのを何度も話し合いました。でも堺さんに現場に来ていただいて、台詞を喋ってもらうと「そういうことか!」と思うんですよ。その場に立って演じてもらうことによって新しい解釈を説得力をもってみせていただいた感じです。芯が太い太い桜のような方でした。

吉永小百合:実写映画で初めてご一緒しましたが、いつの間にか修二郎さんになっていらしたんです。最初は長い間合わなくて、久しぶりに会った母親に対する冷たい視線を感じましたし、最後のシーンでは、なんて優しいんだろうと思うくらいあたたかい笑顔をみせていただいて、役を演じるのを忘れるくらい感動して見とれていました。

◆吉永さんがこの作品を通して伝えたいことは?

吉永小百合:今回の映画で伝えたいことは、生きていくこと、そして家族、ということ。そういうことを映画を観た後で、何か思ってくださったり、話してくださったりしていただけたらと思っています。

 

 

 

『北の桜守』絶賛上映中!

【監督】滝田洋二郎
【出演】吉永小百合、堺雅人、篠原涼子、岸部一徳、高島礼子、永島敏行、笑福亭鶴瓶、中村雅俊、阿部寛、佐藤浩市

http://www.kitanosakuramori.jp/