人は誰もが泣いて生まれてくる。笑うことを覚え、ヨチヨチ歩いては、転んで泣いて、また起きて。恋をして愛を知り、成功と挫折、哀しみを乗りこえて、それでも人は歩き続ける。
──人間は死ぬまで「あかんぼう」なんだと思いませんか?──
1人の男の、0才から99才までをつづった一大叙事詩。年齢、性別、人種、宗教を超え、百年のいのちの輝きを辻仁成が描く感動の名作を初舞台化。

本作の原作・脚本・演出を手がける辻仁成にインタビュー

◆原作小説は、普通の小説とは違う書き方をされていましたが、あの書き方はどういったところから考えられたのでしょう?

辻仁成:読者のみなさんはそれぞれ年齢が違います。そこで自分の年齢から読み始めることができる本を作ってみたいという思いがずっとありました。30歳の人が30歳ページから、40歳の人が40歳のページから読み始められる本って、どういう形がいいんだろうと考えた時に、見開きで0歳から1歳。。。と始まって99歳までだったら、99×2が約200Pが、一冊の単行本のサイズなんです。それで99歳にしたんです(笑)。100歳でも良かったんですけど、100のひとつ手前の99という響きの方がいいなと思って。最初はロジカルな面から企画が始まりましたね。

◆舞台ではどの部分をフィーチャーしようと思われたのでしょう?

辻仁成:ほとんど入っていますよ。出演者が「脚本がどうなるか楽しみだった」と言っていましたが、出来上がった脚本を読んでなるほど!と思いましたと言ってくれました。上演時間が1時間45分~50分の間で終わる予定なんですけど、その中で99年間が全部描かれています。
6人のキャストたちが、舞台裏では、めくるめく走り回っていますよ(笑)。「じゃあな」と言ってはけていった俳優が違うところから別の人間になって出てくる。18歳の男の子を演じていた役者が次は70歳のおばあちゃんを演じたりするんですよ。その速度で、走馬燈のように人生が進んで行きます。でも基本はコメディーですから、笑いながらも最後は泣けるという感じですね。

◆この作品は、神様の助言的に物語りが進んでいきますが、どうしてこのような形にしたのでしょう?

辻仁成:僕は本当に波瀾万丈な人生を生きてきて、しかも小説家、ミュージシャン、映画監督、演出家、色んなことをやりながら、その度に賞を頂いたり、批判されたりもありました。人生自体も山あり谷ありの連続でした。で、気がつくと今息子と2人でパリに住んでいて、気がつくとお弁当を毎日作っていて、気がつくと遠くの空を見上げながら、俺の人生なんだったんだろう?って思うんですよ(笑)。
でも誰も自分の将来を見抜ける人はいないんです。予言者はいませんし、まさかこんな人生を送るとは、23歳の僕は思わなかったし、32歳の僕も知らなかったし、10歳の僕も解らなかった。じゃあ今が不幸なのかというと、僕なりにすごく幸せなものがいっぱいあるんです。少なくとも子供がフランス語で100点を取ってくれば、父ちゃんはガッツポーズ!みたいにね。
その喜びは、こういう(山あり谷ありの)人生を生きなければ手に入れられなかった。僕はきっと神様がいると思っている。その神様の気持ちになって舞台を作ってみようと。神様は人間の数だけちゃんと見ていると思うんです。ただ残念なことに神様は力を貸してあげることはできない。どんなに苦しんでいても、どんなにイヤな奴でもどんなにいいヤツでも助けることはできない。だから飢餓が起こるし、戦争で人が死ぬ。それを神様はただ見ている。
僕は宗教は持っていませんが、でも天というのはあると思うんです。天が見ているということを人間は感じているはずなんですよ。だから悪いことをしようとすると、何か見られているような感じがするでしょう。僕みたいに無宗教でも、これは親に申し訳ないとか感じてしまう。そういう天から見られている感じを、天の側から、この作品では解りやすく神様と言っていますけど、神様が見ているドラマにしたらどうかなと思ったんです。そうするとみんなに当てはまるし。この本は一人の人生ですが、読んでいる人自身かもしれないんです。

◆あえて舞台という場所を選んだ理由は?

辻仁成:この物語を舞台上で動かしてみたいと思ったのがきっかけです。演劇は限られた空間の中で行われるライブエンターテイメントなので、演者の息づかいが観客の中に刻まれるし、観る側にインパクトを与えてくれる。この舞台は始まったら99歳まで一気呵成です。ものすごい速度で進みますし、あちこちから役者が飛び出してきて、人生を展開します。しかもコメディーだからどんどん笑ってもらいたいですね。こんな風に人生というのは流れているんだよ、そして観終わった方が外に出たときに、あ、明日頑張ろうと思えるような、そういう作品を若い役者たちで演じてみたいなと思いました。

◆音楽をSUGIZOさんにお願いしたのは?

辻仁成:SUGIZOは、ずっと僕のパートナーというか仲間なので、「TOKYOデシベル」という映画も彼にお願いしましたし、その前の「海峡の光」という作品も彼にお願いしていて、その辺からずっとタッグを組んでいるので、今回も「やる?」って聞いたら、「やらしてください!」って言ってくれたので。今は僕たちはセットなんですよ(笑)

◆音楽的にリクエストされたことはありますか?

辻仁成:彼も僕もロックの人間ですが、この舞台はロックじゃないんです。なので、豊かで人を明るく楽しくさせる作品ですから、それを彷彿させる音楽をリクエストしました。彼にとっては今までやったことがないジャンルなので、大変なんじゃないかな(笑)。でも楽しんでやって欲しいですね。

◆今回、キャスティングどのように考えていらっしゃったんですか?

辻仁成:プロデューサーに、男の子だけでやったらどうか?と提案されたので、それはいいなと思ってキャスティングをお願いしました。僕からリクエストしたのは、次世代を担う若手を集めて欲しいということです。素晴らしいキャストが集まってくれました。

◆最後にこれからご覧になる方へ一言お願いします。

辻仁成:原作は読んで来なくても大丈夫です。なんの予備知識もなく見て頂いて、その後もう一度確認するときに原作を読んでもらってもいいかな。今回のキャストたちは弾ける力がすごくてエネルギーに溢れています。僕が若い頃もそうでしたが、そういうエネルギーは年代を問わず元気にしてくれるんです。フレッシュなキャストが揃って、めくるめく人生を描きます。今生きている人生は、あなたのものだよ、と表現している作品です。彼らのエネルギーとともに、物語が豊かになっています。ぜひ楽しんで欲しいですね。

【福岡市民会館】
■2018年3月20日(火)19:00 ※終演後キャストによるアフタートークあり
20日(火)19:00…村井良大・松田凌・玉城裕規・馬場良馬・松島庄汰・松田賢二
■原作・脚本・演出/辻仁成
■音楽/SUGIZO
■出演/村井良大、松田 凌、玉城裕規、馬場良馬、松島庄汰、松田賢二
■料金/8,000円(全席指定)
■問合せ/M. I. O.  TEL:096−288−6696(平日10:00~18:00)
※未就学児童入場不可