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左:高原綾子さん 右:ごまのはえさん

今回で3度目の福岡公演となる、ニットキャップシアター。第2回福岡演劇フェスティバルの参加作品でもある「愛のテール」は、第11回OMS戯曲賞を受賞した作品の再演となる。この名作の再演にあたって、新たに感じた作品の面白さや、ごまのはえワールドについて、ニットキャップシアター主宰であり、作・演出を手がけ、役者としても出演されているごまのはえさん、役者の高原綾子さん、そして大阪公演を既に観てきたという福岡市文化芸術振興財団(主催)の高橋さんにお話を伺いました。


■福岡は3回目で、今回の作品は第11回OMS戯曲賞を受賞された作品ということですが、この作品再演に選ばれたきっかけは何だったんですか?

ごま/
以前から、再演しようという話はあったんですよ。それを今、再演しようと思ったのは、2003年にこれを上演した後に、劇団で人の入れ替わりとかが大幅にあって、すぐには再演できない状態がずっと続いてたんです。このお芝居は、ダンスをしたり、歌を歌ったりとかやらなくちゃならないことが色々とあって、今やっとそういう、歌える、踊れるという体制が整いだしてきたので、再演しようってことになったんです。

■今回のあらすじを少し聞かせてもらえますか?

ごま/
同棲しているカップルの女の子が交通事故にあって、顔にキズを負ってしまうんです。その女の子の事故を機に、男の子の方がその時はフリーターだったんですけど、社員になろうとしたりとか、女の子のお父さんに会いに行こうとしたり、責任を感じて結婚という方向に向かって色々と動きだすんです。その女の子は、周りの様子についていけず置いてけぼりにされた感じを残したまま、周りだけが二人を結婚の方にどんどん進めていくっていう話なんですね。それで、周りが勝手に話を進めてしまって、女の子は話についていけず取り残されていくと感じるんですよ。そんな中、誰とも話す相手がいない女の子は、ふと、若い頃の自分の母親と話してみたいと思うんですね。まあ、このへんからもむちゃくちゃになっていくんですけど(笑)ある時、彼女の母親は若い頃によく、ちあきなおみさんの「喝采」を歌っていたことを知るんです。女の子は最初、歌詞の意味がよく分からないんですよ。なんだかドラマチックであることは確かだけど、何がなんやらよくわからん、みたいなところがあって、その歌を解明していきながら空想の世界を広げていくんです。そこでその若い頃の母親っていうのを女の子が作り出してしまうっていう話なんです。

■「喝采」という曲にごまさん自身の思い入れがあるんですか?

ごま/
実はあんまり思い入れは無かったんですよ(笑)でも、すごく好きな歌だったんです。それに、ちあきなおみという歌手が想像力を掻き立てられる存在の人なんですよ。“いつもの様に幕が開き〜”っていうなんだかドラマチックな感じがすごい好きで。それと、この歌の影の部分も僕は大好きなんですね。あと、清水哲男さんという現代詩の方がいらっしゃるんですけど、その方が、「喝采」という詩を書いていらっしゃって、それもすごく感銘を受けた詩なんですが、その2つが今回の芝居のテーマなんですけどね。

■前回の福岡で公演されていたお芝居もそうでしたが、女性の気持ちというか、心をテーマにしたものですよね。そういうものが作品としては多いんですか?しかもテーマがいつも哲学的というか・・・。

ごま/
そうですね、何ででしょうね〜。

高原/
その対局に“どん亀”っていうシリーズがあるんですけど、それはもろ男の話で、めちゃ暗いんですよ。基本はドタバタコメディーなんですけど、ちょっと笑えないところもあって(笑)

■チラシにもありますが、ニットキャップシアター流のエンターテイメントとはどんなものなんですか?

ごま/
やっぱり設定自体が、顔にキズが出来て、というヘビーな感覚がテーマなので、そのことを会話だけでやると、暗くなりすぎると思ったんですよ、しかも、そのことをあんまり会話でやろうとは思わなかったんです。だからなるべくバカバカしいことをやりたくて。で、芝居の中に、引きこもっちゃってる人の部屋の中に幻想の世界というのあるんですけど、それは、高橋留美子のような感じにしたかったんですよ。高橋留美子の感じが欲しかったんですよ(笑)で、その引きこもってる人の部屋に落ちている高橋留美子の漫画の本を、開いているというか、そういう感じのが結果的にはエンターテイメントになったという感じですね。

■う〜ん、その解釈は難しいですが・・・高橋留美子がエンターテイメントを牽引していたとは意外です(笑)

ごま/
そうなんですよ、そこです。

■他の地方で、再演をされてみて、前回と比べて変わったこととかありますか?

ごま/
前回の時は、脚本を書いてすぐに演出をしたので、作と演出は全く一緒で、この作品のことを全部知っているという気持ちで、演出してたんですけど、今回は本を書いてから随分時間がたっていますので、改めてこの脚本はどういった作品なんだろうという気持ちでやりましたね。

■自身の作品を客観的にみることができたということですか?

ごま/
そうですね。今の自分に合わせようとするという再演の仕方もあると思うんですけど、そういう気にもならなくて。その既製の台本のいいところを生かしてやるという感じでやりましたね。

■改めてやってみてどうでしたか?5年前に書いた本を改めて読み返してみて。

ごま/
いやー、書くことがあったんだなと(笑)思いましたね。

■再演をやってみて改めて感じたこの物語の面白さとはありますか?当時とは面白いと思う部分とか何か感じる部分が少しは違っているのでは?と思うんですけど。

ごま/
これは劇団員の人を相手に書いてた本だったんだな、とは思いました。初演が2003年ですから、この後くらいから東京ではポツドールやチェルフィッチュがやってるみたいなドキュメンタリー風な舞台が出てきて、僕の身近にも演出で斬新なことをやられる方も増えてきて、そういう人たちから色々な刺激を受けて、自分自身が今のような台本を書くように変わってきたんだって感じましたね。この頃はまだ、劇団員の人に読んでもらうことが前提でかいているなとすごく感じましたね。でも、僕の信頼している周りの人たちはこの頃(2003年初演当時)の方がよかったって(笑)色々と小難しくひねくれてないからって(笑)反対に、この頃の方がよかったんちゃう?っていう人も多いですね(笑)

■財団の高橋さんは初演も再演も観られていますが、作品の印象は変わってました?

高橋/
作品の印象は変わってましたね。初演の方は少し雑多な感じもしたんですけど、今回は初演をやってから、ごまさん自身が身につけられたものが色々あるんだろうなって感じましたね。それくらい作品が豊かになっていましたよ。でも物語が痛くって耐えられなかったですよ(笑)いや、めちゃくちゃ笑ったけど、帰りちょっとへこみましたね(笑)結婚とかの話も出てくるんで、痛かったですね。特に独身の女性には(笑)

ごま/
あ、そうですか・・。

■ごまさんは、この物語を書かれた時はそういうことを意識して書かれたんですか?

ごま/
どうでしょうね〜。そこまで考えていないというか・・・。人物を作っていくっていうことをやっっていったんだと思いますけどね。あんまり、これを観てもらったらお客さんがどう思うか、ということじゃなくて。本を書いている時は、その人物像を作っていっていたので、女性という枠自体もなかった気がします。それに人って、一人一人違うじゃないですか。もちろん、男女での違いもありますけど、女性の中でも一人一人違うので、人物像を僕が本の中で完璧に作ってしまうというよりは、今回はこの役を演じる阪本麻紀さんが最終的に、その女性像を創ったものじゃないかと思っていますね。だから、僕の作り上げる人物像ではあるけれど、役者さんが累計的ではない人物像を創れてさえいれば、そんなに男女って関係ないのかなと、僕は思いますね。いや、ホントのとこはわかんないですけど。だって僕がそんなに女の人の心理なんて到底わかるとは思えませんしね(笑)

■そうですか〜?無意識にそれを書いているとしたら、女性としてはちょっと怖い感じもしますね(笑)前回の福岡公演を拝見させていただきましたけど、女の人が自分では分かっているけれど、表には出したくない部分みたいなものをテーマにされていたんで、ちょっとドキッとしましたよ。何がこの人にこんな本を書かせるんだろうって思っちゃいました(笑)

ごま/
いや、たぶん全然意識してないですよ。

高原/
大阪公演のアンケートで、男の人の感想だったんですけど、自分が嫌だと思っていることが描かれていて、それに背けたくなる部分もあったけど、でもそんな気持ちを分かってくれた様な気がしてすごく心が楽になりました。っていう方もいらっしゃいましたね。

ごま/
へ〜〜〜。

高原/
あ、これでもいいんだ。分かってくれる人もちゃんといるんだって思いましたね。

■気持ちを分かってくれたとお客さんは感じたんでしょうね?

高橋/
迷ったら、ごまさんに相談しようかな、とチラッと思っちゃいましたよ(笑)人生的なこととかね、分かってくれるんじゃないかって(笑)

ごま/
いやいやいや、とんでもないです。相談なんかされたら、なんて答えるかわかりませんよ(笑)

高橋/
でも、スゴいな〜と思って観てました。ず〜っと笑わせてくれるんだけど、終わった後、ず〜んと(笑)観てるときは楽しかったのに!って、ちょっと憎たらしくなりました(笑)

ごま/
いやいやいや。そうですか(笑)

高橋/
女性にはぜひ観てもらいたいです、どう感じるのかな?福岡は適齢期の女性の人口割合が圧倒的に多いし(笑)私は、普段自分の中で引っかかってることは、ちゃんと考えないと前に進めないんだって気づかされました(笑)

■それは観る方にとっては、楽しみでもあり怖くもあり・・・でもやっぱり女性の方には観て欲しいですか?

ごま/
いや、僕はいろんな人に観ていただきたいですよ(笑)この物語の中にお父さんが出てくるんですけど、そのお父さんに、一番僕は共感していて、娘と喋ろうとするんだけど、喋れないというか、なんかその、父親と母親の違いみたいなところは、面白く感じているんですよ。

■この人物像というのはごまさん自身が作り上げていくといわれてましたけど、そのストイックな人間形成のソースはどんなところにあるんですか?

ごま/
今回のは、清水哲男さんの「喝采」っていう詩の中に「けれど、あなたの思い出はない。私の中に花もない」っていう一説があるんですよ。で、それと、僕らが高校生の頃に電気グルーブの「NO」っていう歌が流行りまして、学校ないし、家庭もないしって歌詞が続くんです。その歌詞がすごくいい歌詞なんです。そういうところからですかね。

■清水哲男さんの詩を知ったきっかけはなんなんですか?

ごま/
大学の一般教養の勉強の中で、教材ではないですけど、現代詩の有名な人として紹介されていて、それで読んだことがきっかけですね。

■そんな話を聞くと清水哲男さんの詩も読んでみたくなりますね。

ごま/
それはすごくいい詩なんですよ。なので、ぜひ。

■客演の方について聞かせていただけますか?

ごま/
この舞台は、物語や人物像は僕が作っていますけど、芝居の世界観を完成させるには、やっぱり俳優さんの力が必要なんです。それなくしてはできないですよ、やっぱり。今回、阪本麻紀さんにお願いしたのも、この女性役はステレオタイプな役作りをしない人が何よりも大事だと思っていたからなんです。女の人の部屋の汚れ方というのを、部屋着を着ているだけで、その雰囲気というか空気感をしっかり出せる人だと感じたからなんですよ。たとえば、今回は舞台上で下着姿になってもらうんですけど、それは必要以上におしゃれに見えてもいけないし、とがって見えてもいけない、もちろんセクシーにみえてもいけないんです。そこには下着、という必要なものだけがあるっていう感じにしたかったんです。そのリアリティーを出せるっていうのは、やっぱり俳優さんの力なんで。

■チラシのコピーに「愛とはなにか?」と書かれていますけど、ごまさんにとって愛とはなんですか?

ごま/
いや〜、まったくわかんないですよ(笑)なんなんでしょうね(笑)ただ、愛って不完全なものなんだって気がしますね。言葉も不完全だし、身の回りにあるものも不完全だし、不完全なものを不完全な言葉で言おうとして、意思の力が及ばない世界というのがあって、ただ星が運行していくだけなんですよ。きっと。それをあーだこーだ言ってもきっと、しょうがないんだなって思ってます(笑)そういう不完全なものが愛なのかな・・・いや、わかんないです(笑)

■すごいな〜。ホントは女の人なんじゃないかって思っちゃいますよ(笑)
では、最後に今回の福岡公演に向けてファンの方へメッセージをお願いします。

ごま/
色々この芝居については、思い出したくないことがたくさんあるんですけど(笑)僕、本名が多賀浩治っていうんですけど、多賀浩治の身の上にあったことをいろいろとデフォルメしてごまのはえが書いている物語なんですね。そのごまのはえも、もう痛いって言い出して(笑)多重人格になっていくような感じなんですよ、今(笑)なんの助けにもなりませんが、愛に迷ったら観に来てくださいと(笑)思いっきり笑わせます(笑)よろしくお願いします!!

高原/
優しい作品だと思うので、ぜひ観て欲しいですね。

 

 

【ぽんプラザホール】
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第2回福岡演劇フェスティバル参加作品
ニットキャップシアター第23回公演
愛のテール

■公演日/5月9日(金)19:30、10日(土)14:00・19:00、11日(日)13:00・17:00
■作・演出/ごまのはえ
■出演/大木湖南、ごまのはえ、安田一平、筒井彰浩、門脇俊輔、高原綾子、澤村喜一郎、市川愛里、阪本麻紀(烏丸ストロークロック)、田嶋杏子(デス電所)、日詰千栄
■料金/2,800円 当日3,000円、大学生2,500円(前売り当日共、要学生証)、中学生以下1,200円(前売り当日共、要学生証)(全席自由)
※学生券は劇団のみで取扱い
※9日の前売りのみ 2,500円

チケット取扱い
・ニットキャップシアター/090-7118-3396、http://knitcap.jp、E-mail:ticket23@knitcap.jp
・電子チケットぴあ
・福岡市文化芸術振興財団/092-263-6266、http://www.ffac.or.jp/