原作は吉川英治文学新人賞、日本推理作家協会賞などに輝く薬丸岳のベストセラー小説「友罪」(集英社文庫刊)。犯罪の被害者と加害者に果敢に斬り込む衝撃作から、事件が二転三転するエンターテイメントまで、様々なミステリーを世に出し、高い評価と熱い支持を得ている作家が、「発表する時、喜びよりも先に恐れを抱いた」と告白する問題作を、瀬々敬久監督が映画化。

なぜ殺したのか? 益田が犯した罪とは? 鈴木に関わる人々の想いの行方は? 物語はふたりに関わる人々をも巻き込み、予想もしない衝撃の結末へとなだれこんでいく。人間存在の謎に満ちた深みへと導く、慟哭のヒューマンサスペンス。心を許した友の真の姿を探りながら、封印していた己の罪とも闘う益田を演じたのは生田斗真。日本映画史上最も困難な役と断言できる、元少年犯の役に瑛太。史上最難関とも言える役に渾身の演技で挑んだふたり。

5/25(金)公開前に、瀬々敬久監督にインタビュー

◆生田斗真さんと瑛太さんの繊細な演技が印象に残っています。お二人について印象は?

瀬々敬久監督:二人は、対照的な人物です。生田さんは、普段からすごく気さくで普通の人。でもカメラの前に立つと、すごくオーラを発してくるというタイプの俳優さんでした。普段から日常を生きている感じを持っていらっしゃる。そういう意味では益田という人物は、どこか普通の感じを持っていないといけないので、役柄とは合っているなと思いました。方や瑛太さんは、普段からちょっと変わっているようなところがあって(笑)、話し方も独特だし、独自のペースを持っている俳優さんです。撮影ではテストから毎回違う演技をしてみて、最終的にどれがいいかという話をして本番に臨む。だからテストの段階から全力投球するタイプ。生田さんは、テストから本番に向かって徐々に芝居を作り上げて行く構築型。だからお芝居の性質もどこか違うというか。そういう二人が演じることで、独特の空気感のようなものは出てきたなと思います。

二人はこの撮影に入る前から友人関係だったようですが、撮影での待ち時間は、近い場所にいるんですけど、僕が見ていた範囲では一言も話をしていませんでした。あえて互いが互いの目線が合わないようにしているというか。それだけ本番テイクに全ての照準を合わせて芝居を作り上げようとしていたんだと思います。
クランクアップの時も、普通のクランクアップだと、どこか開放感があるんですけど、こういう映画なので今回は淡々と終わっていったという感じでした(笑)。ただ、最終日、生田さんの方が2時間ほど瑛太さんよりも先に終わったんですけど、生田さんは瑛太さんが終わるまでずっと待っていて、終わった後に二人で握手していたので、そこに友情のようなものが見えて印象的なシーンでした。

◆お芝居に対する演出はされたのですか?

瀬々敬久監督:瑛太さんは演出というより、話し合った中で印象的だったのは「どこかお客さんに理解されない部分があってもいいと思って演じたい」と言っていました。突然笑ったり、行動が奇異であったり、そういう不可解な部分を残していきたいと。一方、生田さんは、特に序盤は毎日毎日追い込まれてやっていた感じでした。全部、受け身の芝居なので、瑛太さんと演じる時は、瑛太さんの投げてくるものを受けないといけないし、最も印象的だったのは、死んだ友達の母親役の坂井真紀さんとのシーンを撮影する時に、すごく辛そうだったので「しんどい?」と聞いたら「もう、しんどいっすわ~」って言ってました(笑)。それくらい精神的にしんどかったんだと思います。受け身の芝居なので、相手の芝居によって自分がどう反応するかが決まってくる。特に前半はそういうシーンが多かったので辛そうでしたが、全てのシーンに全力で向かっている姿はとても印象的でした。

◆この作品をやってみようと思ったのは、原作に惹かれた部分があったのでしょうか?

瀬々敬久監督:モチーフにされているであろう神戸連続児童殺傷事件というのは、90年代をすごく象徴していた事件だと思うんです。80年代のバブルが終わって日本が景気が悪くなって、人々が精神的なものを追い求めていった時代だと。自分自身も、すごくショックを受けた事件でした。でもこの原作は、当時というよりはその後を描いているんです。僕たちもあれからその後の時代を生きている。そういうことにおいて、事件そのものではなくて、事件から何年も経ったその後の時代と時間が描かれている原作小説だと思ったので、そこに惹かれた部分はありました。

◆映画としてこの作品のどの部分を強く描きたいと思われましたか?

瀬々敬久監督:僕が焦点を当てたかったのは、益田と鈴木の関係です。鈴木はものすごく大きな罪を犯している。一方、益田はかつて少年時代にいじめに加担して友達が自殺してしまった。極端かもしれませんが、これに近いことというのは、よくあることでもあると思うんです。知らず知らずのうちに人を傷つけてしまうというのは誰にでもあり得る。この作品が興味深いのは、益田は、自分の罪と鈴木が起こした罪を同じような罪の重さだと考えている節がある。じゃあ罪の大小というのはどこで判断するのだというところも、益田自身が触れようとしているようにみえる。

僕たち一般人にとっても近くにある罪ということで言うなら、益田みたいなことは、僕たち普通の人にも敷衍できるというか、近い問題として捉えることができるのではないかと。そういう設定を一番重要視して、罪ということを考えていきたいと思ったところがありました。自分たち自身も、ひょっとしたら加害者に近いものが日常生活で起こっているんじゃないかというのが、出発点でした。被害者、加害者という部分は、あえて今回は作品に入れなかった。
ただ最終的に、鈴木自身が、自分が殺してしまった被害者に向かう、被害者のことを考えるということは、しなければいけないと思っていたので、最後に自分が犯罪を犯した場所に立ち返って、被害者のことを思う、というシーンは絶対に入れたいと思いました。

◆主人公の二人以外のキャストにも、“罪”を背負う人たちが描かれていますよね?

瀬々敬久監督:主人公の二人を含めて、止まった時間というか、事件によって止まってしまった時間を、もう一度動かしてあげるということを、それぞれに迎えさせてあげたかったというのはあります。
出来上がってしばらくして自分で気づいたことですが、この映画がいいなと思うところは、例えば最初のカラオケのシーンや、途中で二人が公園で缶ビールを飲みに行くシーンです。益田(生田)が「天気がいいから公園で飲もう」と誘うと鈴木(瑛太)が「コンビニでつまみでも買って」とちょっとうれしそうな顔で答える。益田もそれに笑顔で返す。誰にでもそういう人生においてかけがえのない時間みたいなものがあると思うんです。日常の行為なんだけど、かけがえのない時間、宝物のような大切な時間というのがあって。そういうものが、罪を背負った人を救ってあげることが出来るんじゃないかと。それがこのタイトルの「友罪」に繋がっていくんだと思います。
そのかけがえのない時間が人生において大切であるのならば、加害者は、そういう時間を被害者から奪ってしまったということを逆に気づいていく。そういうかけがえのない時間に気づくことが、一番大切なんじゃないかというのは、この映画を作ってみて自分で発見したことではあります。

◆この映画を観る若い世代の方に、どういう想いをくみ取って欲しいと思われていますか?

瀬々敬久監督:この映画は「友達」というものがキーワードになっています。「友達」という言葉は、大人になるとその言葉自体に気恥ずかしさを感じたりします。もちろん今の年齢で出会っても友達だなと思ったりするんですけど、
友達というのは、やはり中学生、高校生の時に出会った友人関係だと思うんです。友達というのは十代の頃に持っていた純粋性みたいなものと、すごく近い。
僕は罪が救えるものというのは、そういう純粋性なんじゃないかという気がしています。この映画は、中高生の方には、少しハードルが高い作品かもしれませんが、そういう人たちに観ていただくことで、新しい展開になっていったりするとうれしいなと思います。

『友罪』
5/25(金)TOHOシネマズ天神  ほかにて全国ロードショー

【監督】瀬々敬久
【原作】薬丸 岳『友罪』(集英社文庫)
【出演】生田斗真、瑛太、佐藤浩市、夏帆、山本美月、富田靖子

©薬丸 岳/集英社 ©2018映画「友罪」製作委員会

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