加賀恭一郎はなぜ「新参者」になったのか—
2010年4月に連続ドラマとしてスタートした東野圭吾原作の「新参者」シリーズ。阿部寛演じる日本橋署に異動してきた刑事・加賀恭一郎が、謎に包まれた殺人事件の真犯人を探すというミステリー要素と、事件の裏に隠された人の心の謎を解くというヒューマンドラマ要素がこれまでにない“泣けるミステリー”として大きな話題に。
しかし、これまで加賀の類稀なる推理力で様々な事件が解決されているものの、未だ明かされていない謎がある———彼が日本橋に留まる理由。父との確執、そして母の失踪———加賀自身における“最大の謎”が、映画『祈りの幕が下りる時』で明らかになり、ついに「新参者」シリーズが感動のフィナーレを迎える。

本作で、女性演出家・浅居博美を演じた松嶋菜々子に、作品への思いや撮影秘話などを聞いた。

◆オファーを受けた時の感想は?

松嶋菜々子:テレビシリーズからのファンだったので、とても光栄に思いました。台本を読ませていただくと、この新参者シリーズの良さがたくさん詰まっていて、まさしく完結編にふさわしい内容になっているなと感じました。また福澤監督が撮られることで、新たな良さがプラスされる期待もありますし、緊張というよりは、ワクワクして撮影に入りました。

◆浅居博美を演じるにあたって、監督から何か演出を受けたことはありますか?

松嶋菜々子:福澤監督とは何作もご一緒させて頂いていますが、あまり細かい打ち合わせをされないんです。私も演じる前に打ち合わせをするタイプではなくて、テストで何かあったら教えてくださいという感じなので、今回もそこまで細かく指示を頂いたわけではないですが、クライマックスのシーンの感情をどこまで表現するのかというところでは、監督が「どんとやっちゃってください!」と仰ったので、思い切りやらせて頂きました。

◆ロケのシーンも多かったと思いますが、撮影で大変だったことはありましたか?

松嶋菜々子:日本橋の「橋洗い」のシーンがあるのですが、実際に「橋洗い」の当日に撮影をさせていただきました。劇中で引きの画がありますが、そこは前年の「橋洗い」当日に撮りに行かれているんです。あのシーンはひとつをとっても入念な計算の積み重ねで撮られているので、そういう話をお聞きすると、下準備がされていてスタッフの方々にとっても大変なシーンだったと思います。

◆浅居博美を演じるにあたって、考えていたことやイメージしていたものはありますか?

松嶋菜々子:どの役もそうですが、いつも考えているのは、その役をどれだけ理解し味方になってあげるかということ。そういう気持ちでこの役と向き合うと、普通ではとても想像し得ない過去もあり簡単ではないのですが、彼女が元々持っている信念や家族愛、家族だからこそこじれてしまうこと、血の繫がりがあるからこそ起きる問題などとても複雑でしたが、だからこそ、複雑に考えず感じたままにストレートに演じさせて頂きました。

◆脚本上で想像していた子供時代のイメージと出来上がった映像をご覧になられて、相違はありましたか?

松嶋菜々子:想像力は活字を超えるのですが、それを画にするのはとても難しいことなんですよね。台本を読みながら涙し、想像して涙し、さらに出来上がりを観て、想像を超える哀しさが映像として表現されていると感じました。人の想像を超える演出をするのは、とても大変なこと。それがこの作品ではきちんと描かれていますが、それは福澤監督のお力だと思います。作り手目線として少し引いた目で観ているはずなのに、最後は涙を流していました(笑)。

◆印象に残っているシーンは?

松嶋菜々子:浅居博美の部屋に加賀さんが訪ねて来て対峙するシーンは、お互いが色々な感情を持ってやりとりをしたシーンだったので、演じていて楽しかったですね。

◆キムラ緑子さんとのシーンも印象的でした。どのような感じで撮影されたのですか?

松嶋菜々子:事前にお話はしていなくて、本当に台詞のやり取りだけでした。「よろしくお願いします」とご挨拶して、すぐにあのやり取りだったので(笑)。けど、あのシーンはテストを繰り返しましたね。私も何かがしっくり来てないなと感じていたのですが、監督もそうだったようでアドバイスをいただきながら、何回かやりとりをしました。5〜6回目くらいに「あ、これだ!」と私が思った時、監督から「じゃあ本番いきましょう!」というお声がかかったので、あの時は監督と何か繋がった感じがしたシーンでした。

◆阿部さん演じる加賀恭一郎はいかがでした?

松嶋菜々子:「新参者」シリーズをファンとして観ていたので、私としては撮影現場で「加賀恭一郎がいる!やっと会えた!」というところから始まりました(笑)。本当に視聴者目線で楽しんでいました。
阿部さんとご一緒するシーンは結構大事なシーンが多かったので、世間話とかはできなかったですね。
ただ「新参者」シリーズに出てくる加賀のキュートなところ、お店に並んでいても直前で売り切れに遭ってしまう、ああいう可愛らしいお茶目なところというか、“持っているようで持っていない男”、みたいな魅力ってどこから来るのかな?と思った時に、もちろん台本にも書いてあるかもしれませんが、それがとても自然だったので、絶対、阿部さんご自身が持っているコミカルな部分だろうし、演技じゃない何かを持っていらっしゃるんだろうなと思っていました。こうして映画のキャンペーンでご一緒して会話をする内に、やっぱり、元々、阿部さんが持っていらっしゃる魅力が存分に引き出されている作品でもあるんだなと思いました。新参者は加賀恭一郎の魅力と阿部さんご自身が持っていらっしゃる魅力が、ぎゅっと詰まった作品なんですよね。だからファンがいて8年間も続いてきたのだと阿部さんにお会いしてすごく実感しています。

◆実際に出来上がった作品をご覧になられて印象はいかがでしたか?

松嶋菜々子:符号的に使っている部分を折り込みながらも、福澤監督が加わることで、新しい目線や新しい演出で物語が描かれていく。そこに8年間の成長や阿部さんの思いみたいなものを感じました。これまでの色んな要素が詰まっていながらも「新参者」シリーズを初めてご覧になる方も楽しめる、とても完成度の高い作品になっています。

『祈りの幕が下りる時』1/27(土)TOHOシネマズ天神、ほかにて全国ロードショー

【監督】福澤克雄
【原作】東野圭吾「祈りの幕が下りる時」(講談社文庫)
【出演】阿部寛、松嶋菜々子
溝端淳平、田中麗奈 /キムラ緑子、烏丸せつこ
春風亭昇太、音尾琢真、飯豊まりえ、上杉祥三、中島ひろ子、桜田ひより/及川光博
伊藤蘭、小日向文世、山﨑努

http://inorinomaku-movie.jp/

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